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《神》の古具使い  作者: 桃姫
終焉編
293/385

293話:第三階層・黄金と白銀のコンチェルトSIDE.GOD

 俺たちは、イシュタルを残して階段を上がっていた。ツイニーの件などいろいろあるが、今はいったんおいて、目の前の現実に立ち向かわなくてはならない。次の階で待ち受けているのが何なのか、それを見極めていかなくてはならない。……そう思っていた。だが……、


「いや、見極めるよりも先に上の階に行ってしまった方が楽だ」


 と父さんが言うので、とっとと上の階に上がることになった。別に上がってからでも姉さんがいれば対応できるからいいんだが、事前察知はだいぶ重要だぞ?そう思いながら、次の階にたどり着く。そして、そこにいたのは、一人の青年だった。


「ん……?」


 どこか、見覚えのある顔だちに、三鷹丘学園の制服。そして中に煌めく【黄金の力場】と【蒼き力場】。俺は、なんとなく、その正体が分かったような気がしたのだった。


「お、おお!」


 青年がこちらを見て、……と言うか、ミュラー先輩やアーサーの方を見て、声を上げた。感嘆するような声に、少しミュラー先輩が引く。


「なあ、そこの人達、俺とお茶でもしないか?そう、金髪の!」


 どれだけ金髪が好きなのだろうか、俺も人のことを言えないがな。ここにイシュタルがいないのが悔やまれる。彼女がいれば彼のことがもっと分かったかもしれないが、まあ、いい。おそらく、彼の名前も分かった。しかし、そうか……、う~ん、何とも言えんこの感情はどうすればいいのだろうか。


「なんか、紳司に似てるわね」


 姉さんが呟いた。俺は苦笑いを浮かべるだけ。しかし、父さんの反応は違った。あと、母さんも、眉根を寄せている。そして、父さんの横に、銀髪の女性、【断罪の銀剣(サンダルフォン)】のサルディアさんが現れる。そして、青年に向かって叫ぶ。


「お義姉様……メルティアお義姉様なのですわね」


 その声に、応じるがごとく、青年の横に、金髪金眼の美しい女性が現れた。それは、父さんの中にいるそれと同じく天使。そう、やはり彼は……だとしたら、そう言うことなのだろう。


「【黄金の炎柱(メタトロン)】のメルティア・ゾーラタか……」


 俺の呟きに、メルティアもまた俺の方を見て、そして、驚いたような顔をして、自分の横にいる青年と見比べる。


「おいおい、メルティア。なんで、俺とあっちのやつを見比べるんだよ」


 青年が拗ねた風に言う。しかし、メルティアは、驚きを隠せない表情で、青年に怒鳴りつけた。いや、喚きつけた、か?


「そんなことを言ってる場合じゃないわ。どういうことなの……、彼と貴方、限りなく近い存在よ?」


 近い、まあ、ある意味で言えば、そうなのだろう。だから、俺は、笑ってメルティアにその理由を明かすのだった。


「そりゃあ、まあ、親子だからな。息子が世話になっている。……それにしてもマジでいい金髪だな」


 俺の発言に、俺以外の全員、流石に静巴や刃奈ですら予想がついていなかったのか、本当に全員が驚いている。姉さんですら面を喰らったような顔を一瞬したのだから。


「今の余計な一言で、すっごい親子だと確信しましたよ」


 メルティアが辟易とした顔で言う。聞こえてたのかよ。しかし、青年は、納得が行っていないのか、不満げだ。


「母さんが、父さんは死んだって言ってたんだが?」


 そう言われてしまえば、まあ、どう返せばいいのか。今から未来の時間軸とはいえ、コイツに限っては特殊だからな。


「ああ……そのなんだ、(しょう)剣姫(けんき)がそう言ってたのか?」


 俺の疑問に、青が眉根を寄せた。そう、この場で自分の名前と母親の名前が出ていないのに当てられたことに、不満を感じたのだろう。


「そうだよ。母さんがそう言ってた。まあ、金髪好きや顔立ちは父さん似とは言っていたんだが……」


 それにしても似ている、とでも言いたげな青。まあ、そうだろうな。俺も後でイシュタルに詳しいことを聞いたときは、驚きが止まらなかったものだ。


「まあ、お前に父親がいないってのはある意味事実なんだが、死んだってのとは違うんだよ。そもそも、お前は、うちの家系における最強として、作られたんだ」


 そう、それは言葉通りの意味。剣姫も酷なことをするから……。


「待て、作られたってどういう意味だ?!」


 青の困惑も十分に分かる。だから、俺は、あえて、彼に言う。彼の出生の秘密を語ることにしたのだ。


「不在のNo.10。そして、剣において最強と謳われる剣帝の血。それらを凝縮するために、剣姫は俺を選んだんだ。最も強い蒼である蒼刃蒼天の血を最も継ぎ、多くの剣帝の血も継ぐ俺を。そして、俺の血と自分の血を合わせて作ったのが、お前だ、青。最も、人工授精とは言え、間違いなくお前は剣姫の息子だがな」


 俺の言葉に、一同が言葉を失った。そんなことのために、息子を作った、という事実が受け入れられないのだろう。


「な、なんで母さんはそんなことをしたんだ?」


 普通に、誰かと子を為せばよかったじゃないか、と言いたげな青。だが、そこにも事情があった。


「ああ、もちろん、剣姫は普通に誰かと恋愛をして、結婚をして、子供を産もうと思っていた。しかし、彼女の世界管理委員会最強、不在のNo.10と言う立場がそれを阻んだ。彼女は子供を産むどころか、恋愛すら許されなかった。だから、最強を産む、などと言う話をしない限り、それができなかったんだよ」


 それが彼女に定められた運命。子供に運命(さだめ)を押し付けるのならば、そばで守り続けると身を固め、以後、ほとんど表舞台に立たなかった……元々、表舞台に立つ存在ではないが、世界管理委員会の表に出ないという意味である。


「あの母さんにそんな過去が……?」


 青がそう呟いた。そして、姉さんが微妙な顔をしていることに気付いたので、目線で問いかけると……


「まあ、とりあえず、従姉弟の娘に手を出したわけではないのね。よかったとホッとすべきか、つまらないと嘆くべきか……」


 剣姫は、俺の母さんである紫苑の弟……俺にとっての叔父である七峰紫狼(しろう)さんの娘である……つまり俺の従姉弟の七峰深紫(ふかむらさき)ねえの娘に当たる。その息子かどうか、と言う話だ。


「しかし、天使……ですか」


 そのため息は静巴の物だった。意味をなんとなく理解した俺は、柔らかく静巴に微笑みかけて、言う。


「安心しろ、一応、区分的にあまり会うことはないみたいだからな」


 その発言に反応したのは、驚くことに……メルティアだった。天使の区分、などと言う表現がいけなかったのか、一応、天使の代表を務めているらしい彼女が眉根を寄せたのだ。天使の階級、その中でも最上位の熾天使の座、そこに座っているのは彼女を含めて、七界が1つシンフォリアの関係者では8人のみだ。その中で3つの区分のうち超高域と呼ばれる場所、その中の6人の熾天使の中でリーダーをしているのがメルティアだ。


「区分、つまり、それは、超高域以外の……天界、もしくは不可侵神域の七天にお知り合いがいるのかしら」


 シンフォリアは元々3つの区分に分かれていた。それがシンフォリア天使団となった際に、元々別離状態にあった、不可侵神域にいる七天、そして、天界と呼ばれる天使たちとは、別れている。その七天の中の1人こそ、静葉と英二の娘……静に婿に来た蒼刃蒼司、つまり俺と初妃の息子なのだが、その蒼司がいる。蒼司は天使になってしまった。いや、天使として産まれるべくして産まれたともいえるんだが。■の息子は、その■格が1つ落ちて天使になるのはよくある。


「ソウジ・アオバだよ。【蒼き剣嵐(エクシア)】のソウジ・アオバ」


 その言葉に、サルディアさんとメルティアが微妙な顔を、刃奈が微笑みを浮かべていた。それぞれに意味のある名前なのだ。


「それは、どういう関係かしら?」


 メルティアの問いかけに、俺は一瞬、どう答えるべきか迷う。その迷いは、答えを言うか言わないか、ではなく、どう表現するか、と言うものだ。


「義理の親子、と言う言い方もできるし、親子と言う言い方もできる。先祖と言う言い方もできるな」


 静巴と刃奈を視界に認めつつ、そう言った。その言葉に、姉さんが、「なるほど」と声を漏らす。姉さんには分かってしまったのだろう。


「意味の分からない関係性ね。矛盾に矛盾を重ねているもの。まあ、いいわ。それに、今回ばかりは、義妹といい、それにベリオルグと言い、いろいろと厄介なしがらみがあるようだけど、……青、これは貴方の運命だとしたら、戦うのはウチの義妹を連れた男ね」


 ベリオルグ……確か煉巫さんの中にいる龍だったよな。しかし、天使とベリオルグとの接点が見当たらないんだが。そして、戦う相手が父さんであるって断言しているのも、何か確信があるようだ。


「分かっていたけど、やはり、(ケテル)とマルクトは戦うべき運命なのよ。それ以外のいずれもそうだけれど」


 ……なるほど、元ケテルの俺が言うのもなんだが、難儀な運命だな。刃奈も俺の方を見ていた。


「なるほど、メタトロン、だからケテルと言うことですね。我が神……その座は、かつて、創造を司る旦那様の座っていたもの。息子なら納得できるというものでしょう」


 確かにそうではあるんだが、しかし、父さんがマルクトと言うのも分かるし、姉さんも元だが、同じ系列にいた人間だ。そして、その運命が引っ張られてくるというのなら、今回の塔は荒れに荒れることだろう。


「父さん、ここは父さんに任せる。俺たちは先に進ませてもらうよ」


 そう言って、父さんを置いて進む。母さんは、何も言わなかった。心で通じ合っているのだろう。その顔に不安の色は微塵もなかった。


「ああ、そうだ、息子よ。お前は、数多ある可能性の1つだろう。でも、いずれかの未来で、俺は、お前に会いに行くとするさ。――また会おう」


 言ってからなんだが、息子にかける言葉じゃあねぇな。だけど、まあ、またいずれ会えるだろう。それが運命であるならば。そして、この先、幾つこのような運命が待ち受けるのだろうか。もしかしたら、……

 え~、遅くなりました。本当は昨日更新する予定でしたが、これからの塔の順番を明確化して誰とどう戦うかのプロットを練り直していたら、遅くなってしまいました。

 今回は七峰青、イシュタルの話でも登場した名前ですが、彼の登場でした。

 え~、先のプロットの件を考えると負け戦が多くなりそうですが、暖かい目で彼らの戦いを見ていただけるとありがたいです。そんな負けたら死ぬとかそんなことはないので。既に、イシュタル戦が敗北で決着がついているんですが、大半があの程度です。

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