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《神》の古具使い  作者: 桃姫
恋戦編 SIDE.GOD
262/385

262話:秋世のデート……?

連続投稿1話目です

 朝、秋世が迎えに来ることになっているが、大人デートは夜デートっぽいのに、朝から一日ひっぱりまわすようで9時に迎えに来ると言っていた。なので、少し早めに起きて、朝食をとると、母さんがこんなことを聞いてきた。


「紳司君、今日は早いですけど、どこかにでも行くんですか?」


 俺は行先の決定に関与していないので、どこに行くまでは分からないから、母さんにはこう答えた。


「デートみたいなもんだよ。秋世と」


 その言葉に、母さんは、思わず皿を落としそうになるくらいに固まった。まあ、母さんは秋世の年齢についても知っているだろうし、50代の、それも教師が生徒である俺とデートをするなんて常識的に考えて、まずダメなことだろう。


「あの……紳司君?今、なんといいました?天龍寺先生とデートに行く、と言ったように聞こえたのですが」


 わなわなと震える手を押さえながら母さんは、ぎこちない笑みを浮かべて、声を上ずらせながらそんな風に言ったのだ。


「まあ、そうだけど?」


 俺の返しに、母さんは、思わず額を押さえるようにしながら地面に座り込んだ。そんなにショックな出来事だったのか、俺と秋世のデート。


「いいですか、紳司君!あの人は今50歳です。婚期を逃しに逃して焦っているなんてレベルではすまない、婚約の猛獣です。おそらく相手が学生だろうと関係はないのでしょう。既成事実を作って寿退職(ことぶきたいしょく)なんていうことを考えていても不思議ではありません。気を付けてくださいね」


 母さんは秋世を何だと思っているんだ。まあ、かなりダメそうな人間ではあるが、それでも、そこまでは考えていないだろう。


「おっと、そろそろイシュタルさんの起きてくる時間ですね。準備をしないと。いいですか、紳司君、くれぐれも気を付けてくださいね」


 そう言って、母さんはキッチンの方へと言ってしまった。まあ、キッチンはリビングとつながっているから、会話ができないわけではないんだが、それでも、まあ、一区切りつける意味ではいいんだろう。おっと、もうじき9時か。着替えて準備しないとな。



 部屋に戻った俺は、ざっと着替えを見繕い、そこまでヘンでないくらいの服装に着替える。別段変哲のないジーンズに、シャツ、そんなものだろう。変におめかしする必要はない。むしろ逆におめかししすぎて浮くのもなんかあれだし。

 そして、スマートフォンを左ポケットに入れて、財布をケツポケットに挿し、準備は完了。あとは迎えが来るのを待つだけなので、階段を下りていくと、チャイムが響いた。母さんがドアを開けにやってきた。キッチンからだとリビングのパネルで来客者を確認できるのに、母さんは、あまりしないんだよな。


「はい……ああ、天龍寺先生ですか」


 どうやら秋世が来たようだ。心なしか母さんの声のトーンが下がった気がした。俺は階段を下りていくが、どうやら、秋世は家に上がるらしい。なんてずうずうしい奴。


「お邪魔します。それで、紳司君は?」


 母さんたちがリビングの方へと進んでいく。あ、そういえば今、イシュタルが飯食ってるんだよな。秋世にはイシュタルのこと話してないけど、あー、まあ、いっか。俺もリビングに行こう。


「えっと、七峰……じゃない、紫苑さん、そこの女の子は、一体?」


 リビングに入ると、秋世とイシュタルの対面中だった。秋世が母さんの旧姓を呼びそうになっていたが、学生時代には苗字呼びだったのかもしれない。


「彼女はイシュタルさんです」


「どうも、イシュタル・ローゼンクロイツよ。どこのどなたかは存じないけれど、本人の前で耳を寄せて小声で話すのはマナー的によくないわよ?」


 そんな会話をしているとき、俺の後ろからもう1人やってくる。姉さんではない。姉さんに似た雰囲気を放っているものの、姉さんとは別種の美しさを持っている。彼女はじいちゃんが連れてきた姉さんの娘らしい。どうやら、イシュタルの件があった日に迎えに行く約束をしてたんだけど迎えに行けそうになかったから、ちょうど俺と戦った後のじいちゃんに会って、姉さんがじいちゃんに任せた結果、じいちゃんが連れてきたわけだ。

 名前を青葉零桜華(れおか)。旧姓(姉さんの今の苗字に合わせて青葉に変えたため)は、紫雨(むらさめ)と言うらしい。


「朝から来客?ふぁあ、眠。父さんも起きてきてないみたいだし……、まあ、いいわ」


 この「まあ、いいわ」はおそらく遺伝。姉さんもよく言ってるからな。そのままリビングに入っていく零桜華(れおか)


「あら、零桜華さん。今、ご飯にしますから、座って待っていてくださいね」


 母さんは、そう言いながら、台所に行ってしまう。普通なら来客優先の母さんも、相手が秋世だと優先度が大きく変わるらしい。流石秋世だ。


「えっと、貴方は?」


 秋世は、少し引き気味に、教え子の家に訪れたら知らない女の子がいっぱいるけどどういうことだろう、と言う状況に陥ったのだろう。


「んぁ?あたしは、むら……青葉零桜華よ。この家に養子に入ったのよ」


 と、公的な立ち位置を説明する。一応、零桜華は公的には、うちの両親の養子に入っているが、姉さんが成人したらそこに養子に移すそうだ。姉さんと零桜華の年齢も対して変わらないように見えるが、どうとでもなるんだろうな。


「よ、養子?この家は相変わらずね……。それで、紳司君はいたなら声をかけなさいよ」


 秋世の言葉の矛先が俺の方へと変わった。厄介事から目を逸らす主義なんだろう。俺は、やれやれと肩を竦める。

 そんなとき、秋世のスマートフォンが音を鳴らす。画面を見た秋世の顔が嫌なものを見たようなひきつった顔になった。


「も、もしもし……姉様ですか?」


 どうやら、姉から連絡があったようだ。秋世の姉……天龍寺家現当主の天龍寺、天龍寺彼方(かなた)。じいちゃんの知り合いらしいが、どのような人物か、直接の面識はない。


「え、はい、でも……はい。いえ、約束が。え、相手も連れてくればって、でも……うう、了解です」


 秋世は電話が終わると大きなため息を吐いて、俺の方を見た。なんだ、今日のデートは中止ってことか?別にそれでもいいんだが。後日、改めてすればいいだけの話だし。


「紳司君、今日のデート、デートじゃなくなるかもしれない。というか、いろいろと面倒事になるかもしれないわ」


 いや、デートじゃなくなるなら、別に行かなくていいんだが。面倒事だって言ってるのに首を突っ込むほど愚かじゃないし。


「と、言うわけで行くわよ」


「行くってどこに?」


 俺を引っ張っていく秋世に思わず問いかける。本当にどこに行くつもりなんだろうか。


「天龍寺本家よ」











 天龍寺家。元京都司中八家の一角にしてこの国の中枢に意見できる特別な家の一つでもある。現当主が天龍寺彼方、その妹である秋世が教師、弟の秋文(あきふみ)も確か教師、と言った面々がいる。

 家の歴史は古く、父さん曰く、そのルーツは、魔人と夜の女王だと言っていた。よくわからないがそう言う存在らしい。

 しかし、天龍寺家の歴史を振り返ると、先代の当主、天龍寺深紅(しんく)さんとその妹にして秋世の母である天龍寺紅紗(くしゃ)さん、そして現当主の時代が凄いだけであって、それ以前となると、前述の夜の女王の代くらいにしか強いと呼べるものはいなかったと言われている。そして、かつては、なんとどこか世界の月面にある城の中に本家があったそうだが、今は場所が移されている。

 その天龍寺邸に俺は秋世の《銀朱の時ヴァーミリオン・タイム》によって連れてこられていた。広大な土地に佇む一つの家。雰囲気で言えば冥院寺家の家に近い感じがする。


 中に入ると、俺は、秋世に連れられて、何やら大きな部屋へと続くであろう扉の前に連れてこられた。おそらく食堂か何かだろうが、なんで、俺はここに連れてこられているんだろうか。何度目のため息になるか分からないが、ため息を吐くと、秋世がその扉を開いた。


 ギィイと言う少し軋むような音を立てながら、扉が開いて、そこには天龍寺家の人間と思われる人々が座っていた。


「秋世、遅かったわね」


 黒髪の女性が秋世に向かってそう言った。この女性が、おそらく、天龍寺彼方さんだろう。この中でほぼ唯一の真っ黒な髪だし。てか、俺だけ普通の服だからものすっごい浮いてるんだけど。


「あら、そちらの方は?わたくし、この家に嫁入りして随分と経ちますが、お会いするのは初めてだと思うのですが」


 薄茶の……どちらかと言えばオレンジに近い感じの髪色をした縦ロールっぽい女性が俺の方を見ながらそんなことを言った。


「あら、愛巫(あいむ)さん。今日は愛巫さんもいらっしゃっていたんですか。本当に秋文には勿体ない方です。紅条(くじょう)の家にも何かとお世話になっていますし。

 ああ、それで、彼は……」


 愛巫、秋文には勿体ないという言葉からおそらく秋世の弟の秋文の婚約者と言ったところだろうか。紅条旧姓と言うことは、元は紅条(くじょう)愛巫(あいむ)と言う名前だったのだろう。

 秋世は俺を、自己紹介しろと、言うような目で見てくるので、俺は仕方なく、その目に従うことにした。


「俺は……っと、自分は青葉紳司です。今日は秋世……天龍寺先生と私的な約束をしていたのですが、なぜかここに連行されるように連れてこられたのですが……」


 連行されるように、と言った時点で、秋世がこちらを睨んでいたが無視。すると愛巫さんが「ほへぇ」と何とも気の抜ける声を出した。


「ちょ、お母様、流石に客人もいるんですから外面を保ってください」


 俺よりも3つか4つ年下だろうか。そんな見た目の赤みがかった黒髪の少女が、愛巫さんに向かってそう言った。


「いえ、ですけど、何やら天龍寺家の皆さまを見る限り、結構知っていそうな感じですし、取り繕うこともないんじゃないか、と思いまして。それに討華(うつか)はまだ子供なのですからもっと子供らしくしていてもいいんですよ?」


 どうやら愛巫さんの娘で討華(うつか)ちゃんと言うらしい。将来を期待できそうなほどに今でもかなり可愛い見た目をしている。


「でも、親しいかどうかはともかく、地獄の加護……死者の加護は持っているようですね。あの方に、【蓮華(れんか)が咲きました】から」


 【蓮華(れんか)が咲きました】と言うフレーズ自体に意味があるのだろうか。それにしても、何やら怪しい雰囲気を放っているし、彼女もやはり子供とはいえ、ただものではないのだろう。

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