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《神》の古具使い  作者: 桃姫
古具編 SIDE.D
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25話:陰謀と古具

 あたしは、スマホをポケットにしまうとみんなの方を見た。すると、鷹月が唖然とした目であたしのことを見ていた。何だろう?


「い、今の電話の相手、弟さん、ですよね」


 鷹月がいきなりそう話を切り出してきたので、あたしは、頷いた。普通に弟と話していたことを隠すつもりは無い。


「あおば、しんじ」


 十月が、紳司の名前を言った。あれ、十月はなんで紳司の名前知ってんのかしらね?って、まあ、今、バンバン、電話中に名前言ってたからおかしくないか。


「そうよ、青葉紳司。青い葉っぱに紳士の紳、司るで青葉紳司。あたしの双子の弟よ」


 あたしが紳司の名前の説明をすると、皆、その字を思い浮かべたのだろう。ちなみに、ウチの一家の男子は「じ」で終わることが多いらしい。っつっても、おじいちゃん、父さん、紳司の三人だけなんだけど。清二(せいじ)おじいちゃん、王司(おうじ)父さん、紳司(しんじ)


「てんにつらなる『――』のあーてぃふぁくたー」


 十月が、またも意味深なことを言った。またも、のまた、というのは、あたしのことを「黒き者」って言ったり、鷹月を「白き者」って言ったりしてたことを指す。


「十月、ということは、彼女も三神の末裔(まつえい)ってことかい?」


 不知火が十月に聞いた。意味不明な単語が出てくるけど、あたしは、その単語を知らない、けれど、どこか、ひっかかる気がするわ。


「うん、『しのみやはやて』とおなじ。『しのみやはやて』が『しのみやむそう』のしそんなら、かのじょたちは『そうてん』のしそん」


 そう、てん……。その名前には覚えがあるわ。グラムが言っていた、蒼刃蒼天。グラムを封じた神だか人だか。なるほど、三神ってのは、蒼刃蒼天とか、さっきの「しのみやむそう」とか言う人たちのことを言うのね。


「かつて、大きな戦争が起こり死んだけど、ある契約によって神の位へと至った者、ねぇ」


 あたしがグラムの言葉を思い出しながら呟いた。すると、不知火が、驚いたように目を見開いた。


「驚いた。この話で、即座にそう言った言葉が出てきたのは瑠音(るおん)君以来だね」


 また、知らない奴の名前が出てきたわね。まっ、どうでもいいか。どうせ、実際に会わなきゃ、ほぼ無関係なんだし。


「あたしもよくは知んないわよ。ちょこっと聞きかじった程度ってだけ」


 あたしは肩をすくめて不知火を見た。本格的にきょとんとしてる鷹月だけを置いてけぼりにして、話は進む。


「聞きかじる、か。一体どこで……とは野暮な質問かな。私を含め、ここにいる者は異常者だ。どんな知識があってもおかしくないからね」


 不知火はそういうと、十月の方を見て、十月は、それに頷き返した。


「まあ、その辺の話はまた今度で構わないだろう。私も詳しいと呼べる分野まで達しているわけではないのでね」


 不知火は、そういいながら、少し顎に手を当て考える。


「そのときになったら、天龍寺の秋世姉様を呼んで説明する方がいいかもな」


 天龍寺?天龍寺って言えば、名家よね。でっかい家とかが特徴的な。政財界に深く関わってるってんだから、まあ、この世の裏側の人間とか《古具(アーティファクト)》とかも知っててもおかしくないわね。


「誰、それ?」


 あたしは不知火にそう聞くと、十月が、ボソリと言った。


「みたかおかのせいとかいこもん……にもどったはず」


 戻ったってことは、前はそうで、別のところにいって、また戻ってきたってことよね。三鷹丘の生徒会顧問ってことは、紳司のことを勧誘したって奴ね。


「ふぅん、まあ、いいわ。そいつが説明してくれるっていうんなら、あたしは誰が来ても構わないし」


 まあ、ちょっと紳司に聞いてみるけどね、どんな奴か。


「それにしても、あたしは、まだ《古具》を持ってないけど、鷹月や三年2人は持ってるんでしょ?十月のが未来予知ってのは分かったし、鷹月のが武器出すやつってのも知ってるけど、不知火、あんたのってどんなんなのよ?」


 あたしの疑問の声に、不知火は、「ふむ」と言ってから、暫し間をおき、言う。


「中々に説明が難しいので、私の能力については、いずれ、時がきたら説明をするとしよう」


 へぇ、後回し、ね。まあ、いいわ。それよりも、あたしとしては、これほどの数の《古具》使いが一同に会しているのは、なぜかってことの方が気になるわね。話を聞く限りだと、おそらく、紳司のいる三鷹丘の生徒会も《古具》使いの集団なのだろうし、そのすぐ近くに、あたしを含めた4人。


 こんなにもホイホイ《古具》使いがいるんじゃ、世界は《古具》使いだらけよ。


「《古具》使いって何でこんなにいるの?」


 あたしはその疑問を思い切って不知火にぶつけることにした。すると不知火は、「ほぉ」と言いながら十月に目配せをした。


「《古具》使いがこんなにも多い、というのは、まあ、確かに極所的に見れば多いかも知れないね。この一帯、特に三鷹丘の辺りでは《古具》使いが生まれやすいといわれている。他にも、《古具》使いの家系は《古具》使いが生まれやすい、や、日本なら京都、イギリスならロンドン……と言ったように、世界の各地に似たような場所がある。まあ、尤も、その中でも三鷹丘は異常だとされていたがね」


 なるほど、この辺が異常なだけってわけね。納得、と言うわけじゃないけど、まあ、分からないでもないわ。母さんも、父さんも、この土地の生まれで、なおかつ、何か知ってるっぽいから。


 この土地、三鷹丘や鷹之町が、何か異常地域だってのは納得いくんだけど、「だとされていた」ってことは今は、そこまで異常じゃないってことかしら?


「尤も、現在でも、この土地に、《古具》使いを探しに来る者は少なくないがな。特に京都などの名家の中には、跡取り問題で、《古具》使いを探しに、この土地へきた、と言うものは多い。現在でも私が知る限り2の家、いや、この間で、3つの家になったかな」


 なるほど、跡継ぎ問題ね。こないだの黒衣の奴等もその一家だろうし、他にもいるってんなら、この辺って以外とヤバイんじゃないの?特にあたしとか紳司とかが。

 ってなると、女と黒衣の男達に襲われるってのは、それ関係かしらね?


「3つ……、紫炎(しえん)以外にも?」


 鷹月がそんな声を漏らした。確か紫炎(しえん)って前に、前に三鷹丘にいるって言ってた奴よね。そういえば紳司に聞くの忘れてたわ。


「ああ、私が確認しているだけで、天姫谷(あまきたに)明津灘(あきつなだ)冥院寺(みょういんじ)だの3つの家だ」


 なるほどね、不知火の情報網に引っかかってないのがいる可能性も有るわよね?まっ、どうでもいいわよ。別にあたしに害があるわけじゃあるまいし。


「鷹月、あんたの知り合いだって言う紫炎(しえん)ってのは何者なの?」


 一応、聞いておく。別に、何者でも関係ないんだけど、紳司に手を出されたらたまったもんじゃない。


「えっと、……。明津灘(あきつなだ)紫炎(しえん)って言って、俺の幼馴染なんです。京都の司中八家(しちゅうはっけ)に連なる次期当主だってことしか知らないんですけど。何でも、自分と対になる『(いん)』の者を探すとか……。明津灘(あきつなだ)は古武術の名門なんですが、自分達を『(よう)』と称し、パートナーを『(いん)』とするらしいんです」


 その説明を受けたあたしは、正直言って微妙な顔をしていた。まあ、ぶっちゃけると、紳司はそういうのに好かれやすい傾向にあるから、妙な誘いを受けなきゃいいんだけどってことよ。


「ふむ、司中八家(しちゅうはっけ)に連なる人間が5人も居るのだ、三鷹丘は、相当大変なことになっているだろうな」


 不知火がそう言った。5人?えっと、黒衣の男と女が兄妹だとして、2人。あとの2家のどっちかが2人ってことかしら?


「天姫谷の兄妹、冥院寺のお嬢、明津灘の紫炎嬢、市原(いちはら)裕音(ゆのん)


 市原?


「あんた、この辺に居るのは3つの家って言わなかった?」


 あたしがそう聞くと、不知火は肩を竦めた。


「確かに、跡取り問題で、《古具》使いを探しに、この土地へきたのは3つの家だ。市原に関しては、別の事情に過ぎないからな。だから私は先ほど除外したのだよ」


 なるほどね。別の問題……。どんな問題よ?


「奴に関しては、三鷹丘で生徒会長をしている」


 また三鷹丘ね。これも紳司に聞いておこうかしら。しっかし、まあ、紳司の方には、次々に厄介事が降りかかるわね。


「それにしても奴、なんていうからには、会ったことがあるんでしょうけど、仲悪いの?」


 奴とか言っちゃってるから仲悪いんでしょうけど……。


「けんえんのなか」


 それに関しては十月が言った。なるほど、犬猿の仲なのね……。まあ、馬が合わないことは多々あるんでしょうけど。


「ふん、奴は、典型的な攻撃タイプの《古具》使いだからな。私のソレとは相性がよくないのだよ……」


 ふ~んってことは、不知火は攻撃系の《古具》じゃないのね。例えば、鷹月なんかは、鎌は典型的な攻撃タイプの《古具》ね。十月は典型的な補助タイプの《古具》。


「奴のような特定のものに有効な《古具》はあまり好かないな。まあ、尤も、決まったものしか出せないような奴と、その能力を付加したものなら数個出せるものと攻撃タイプも様々だがな」


 不知火の言っているのは、きっと、「なんちゃらの剣」って《古具》なら、その剣以外だせないってのとか、きっと鷹月がこのタイプね。他には、「麻痺の剣」って名前なら、麻痺を付加したナイフからショートソードからロングソード、刀まで様々出せるタイプもあるってことね。他にも、炎や氷と言ったそれ自体を出す攻撃タイプもあるんでしょうね。


「まあ、あんたのがどんなのか分かんないから判断のしようがないけど、鷹月が攻撃、あんたらが両方支援、と考えるとあたしは、攻撃系の方が好ましいわよね」


 ってーか、あたしの性格からして支援は向いてないのよね……。


「ふむ、しかし、支援、と言っても色々あるからな。十月のようなタイプならば、数秒先の未来を読めは、敵の動きが分かるから攻撃にも転じられる。尤も、十月は、近接戦闘には向いていないので、そんなことはできないがな」


 なるほど。しかし、今の言い方からして不知火の《古具》はそういうタイプではないみたいね。


「まあ、君が目覚めるとしたら、おそらく……」


「こうげきたいぷ」


 未来を予知している十月がそういうのだから、おそらくあたしは攻撃タイプの《古具》何でしょうけど……。

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