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《神》の古具使い  作者: 桃姫
魔法編 SIDE.GOD
235/385

235話:清二VS紳司

 青葉清二(せいじ)。それが俺のじいちゃんの名前だ。尤も、俺自身が物心ついてから会ったのは、ついこの間のことになる。しかし、前々から話は聞いていた。ある者は、《聖剣》である《切断の剣(デュランダル)》を持っていると、そして、ある者は《死古具》である……


「《殺戮の剣(デッド・ソード)》」


 禍々しい、その剣こそは、4つの《死古具ダリオス・アーティファクト》の1つだ。七星加奈の《殲滅の斧ジェノサイド・ラブリュス》、七星加奈が戦ったという世界管理委員会のNo.16龍ヶ浜崎(りゅうがはまざき)将院(しょういん)が持つ《破壊の槌(ブレイク・ハンマー)》、そして俺が戦ったミランダちゃんの持つ《刻天滅具(ジ・エンド)》こと《神滅の槍ペネトレイト・ロンギヌス》の3つに並ぶ、最強の……秋世曰く《覇の古具》だそうだ。


「その刀と剣がお前の《古具》か?」


 前回会ったときは、【王刀・火喰】についての話ばっかだったからな。ろくに俺の《古具》について話していなかったのが助かったか。父さんや母さんも忙しくてじいちゃんたちには会えてねぇみたいだし。俺の情報はほとんど伝わってないのだろう。


「んじゃ、まずは、小手調べと行くかっ!」


 じいちゃんは、手に持った2つの剣を構え、一気に間合いを詰めてきた。そして、そのまま流れるような動作で、右手の《殺戮の剣(デッド・ソード)》を突き出して来る。


 俺は、《無敵の鬼神剣(アスラ・アパラージタ)》の側面で、切っ先を逸らすようにして、その突きを()なす。躱せた、が、そこにすぐさまもう片手の《切断の剣(デュランダル)》が迫ってきていた。とっさに【幼刀・御神楽】で弾こうとしたが、無理だ、間に合わない!


「クッ、《神王の雷霆(ゼウス・ケラウノス)》」


 急いで体の周りに雷を纏う。この雷は、カウンター効果と天罰を追加攻撃効果がある。雷の膜が《切断の剣(デュランダル)》を阻むが止まらない。まっすぐに貫くように迫ってくる。そこにカウンターの雷と天罰の雷が迫った。


「チッ、付随効果かよっ、――雷切」


 俺に迫っていた剣を下に振り下ろしてもう片手を上げやすくして、雷を《殺戮の剣(デッド・ソード)》で斬り飛ばした。マジかよ……。


「へぇ、龍神が再現した雷璃(らいり)の雷ぐらいの強さはあるな」


 おいおい、雷まで切れるなんて聞いてねぇっての。化け物じゃねぇか。いや、姉さんも化け物みたいなもんだし、俺も人のことを言えねぇな。


「さぁて、そろそろ、やるとするか」


 じいちゃんは、俺から一旦距離を取って、両手の剣を重ねるように近づけていく。そして、黒と白のまばゆい光が剣から噴き出していた。


「《聖覇にして()殺戮切断の剣(デュランダル)》ッ」


 じいちゃんの手に握られていたのは、神々しくも禍々しい、鏡色にして黒色の、美しくも醜い、そんな矛盾を孕んだ剣だった。


「おいおい、何だよ、そりゃ」


 マズい、それが見ただけで感じ取れる。まるですべてを切断するためにだけ存在しているかのような研ぎ澄まされた剣。決して人業ではたどり着くことのできない究極の剣のような剣だ。あれほどの逸品を打つのはガレオンのおっさんでも無理だろう。


「――切り裂け」


 その言葉とともに、距離を取った状態からじいちゃんが剣を振った。その瞬間、斬撃が全てを飲み込むかのように、次元すら切断しそうな勢いで空気を切り裂きながら迫ってくる。


「グッ、《破壊神の三又槍(シヴァ・トリシューラ)》」


 避けられないほどに速かったので、俺は、足元に《破壊神の三又槍(シヴァ・トリシューラ)》を落として、地面を爆発させその衝撃で横に避ける。


「《破壊神の煌々矢(シヴァ・ピナカ)》」


 そして、すぐさまに、《無敵の鬼神剣(アスラ・アパラージタ)》と《破壊神の三又槍(シヴァ・トリシューラ)》をしまい《破壊神の煌々矢(シヴァ・ピナカ)》を出して、目で見て、矢を番い放つ。


「むっ」


 じいちゃんは、軽々と、刀身に当てて弾いてしまう。やっぱり通じないか。だが、振るって落とすのはできないんだな、威力が強すぎて。


「――火を吐け、ヒイロッ!」


 【王刀・火喰】を出し、振り抜きざまに火を吐かせた。じいちゃんは、剣を下げ、手をかざして言う。


「死の風よ」


 黒い風が炎をかき消した。俺は、【王刀・火喰】をしまい、そして、もう一度、今度は俺自身の手から火を吐く。刃主一体で手にした能力だ。


「――火を吐け」


 じいちゃんは、一瞬面を喰らったような顔をした。それもそうだろう。俺が初撃でわざと【王刀・火喰】を呼んで火を出したのは、刀から炎が出ることを印象付けるためだったのだから。


「チッ、奥の手だッ」


 じいちゃんが、天高く手をかざす。何をする気だ……?そう思ったのもつかの間、何もないはずの空間から、何かを裂くように物体が現れた。その現れたのは一振りの剣。神々しい、蒼色の輝きを放つ大剣だった。


 その大剣の出現した瞬間に、なぜか、俺の炎はかき消されてしまい、そして、じいちゃんは何かを唱えるように言う。


「《蒼王孔雀(そうおうくじゃく)》」


 祝詞のようにも聞こえるその言葉は、おそらく剣の名前。俺の心になぜか強く響く、その剣を、じいちゃんは、手にある剣と近づける。しかもその瞬間、じいちゃんの右手……《聖覇にして()殺戮切断の剣(デュランダル)》を持っている方の手に、【蒼き力場】が凝縮されたような気が……


「《蒼天の覇者の剣(そうおうくじゃく)》」


 先ほどの召喚された剣と同じだが、密度が違う。そう、例えるなら、一度破壊されてしまった剣はいくら修復しようと欠けたり脆くなったりする部分があるように、召喚された剣は「足りない状態」だった。しかし、そこに、先ほどの剣が加わることで、元の姿どころか、それを越えた何かになったような、そんな気がした。

 だが、それは、マズい、マズすぎる。俺はこの状況をひっくり返せるような奥の手は残ってない。せいぜい【蒼刻】くらいだが、それが残っているのはじいちゃんも一緒。それにじいちゃんには、なんか、聖大叔母さんの補助っていうシステムがあるって父さんから聞いた。せこすぎだろ。


「仕方ない、やりたくなかったが」


 いや、奥の手が無いわけではなかった。俺は、学習機能を常にONにしていたのだ。【幼刀・御神楽】を出す前から。と言うより、効果を考えれば【幼刀・御神楽】を出したところで、学習するのは【幼刀・御神楽】になる。つまり、俺自身が学習する機能とは関係ないということだ。まあ、ちゃっかり、【幼刀・御神楽】に切断能力を学習させようとしたが、剣固有の、と言うか、剣そのものが、あの材質でできているから成り立つ神業だったので学習させることはできなかった。

 では、何を学んでいたか、と言うと、


「《変形の神眼(カッパッタ)》」


 試しに、使ってみたのは、イシュタルの神眼。そう、あれを学習していたのだ。床を変形させて、攻撃してみる。


「へぇ、んなこともできるのか」


 そんなことと言うのが学習のことを指すのか、地面を変形させたことを指すのか分からなかったが、おそらく後者だと思われる。


「さあ、ここからは、小細工なしの剣戟と行こうか」


 それは、床を変形させるな、火を使うなってことか。まあ、いい、どうせ、【蒼刻】を使えば、そういった力は無意味になる。じいちゃんもそう言っているのだろう。秋世も言っていたが、【蒼刻】はその特性上、【力場】の過剰生成により、昂揚感、好戦的、衝動的、その他もろもろ、要するに脳筋になるらしい。秋世の曰く「姉様が言ってたけど、【蒼刻】使った清二さんは言葉遣いがむっちゃ荒かったって」と言っていた。「むっちゃ」って死語じゃね?


「やっぱそうなんのかよッ」


 俺は【蒼刻】になる。体内に形成された7つの【蒼き力場】により、全身が蒼く染まる。これこそが、青葉……蒼刃の血統の証。


「【神魔刀・里神楽】」


 刀を構える。ただし、【天冥神閻流】の構えではなかった。そう、その構えは、我流の構え。一番野蛮な、最も研鑽しなかった頃の、されど、最も生死を懸けていた頃の刀の構えだった。俺の師はこう言った。


「うーん、と、おめぇが初めて打った刀、あんだろ?あの(なまくら)持って材料とってこい」


 と。そうして、自然と手にしたのが、この封じられた刀の流派。師からつけられた流派の名前は、【我流・狗牙太刀(くがたち)】と。その流派の刀は全て、通り道が分からない。まるで、どこかに潜んで、獲物を狩るときを待つ狗のようで、そしてその牙は、刀よりも間合いの長い太刀のようである、と名付けられたのだ。

 一人前の鍛冶師になってからは、依頼をして材料を取ってきてもらうこともあったし、使うことはなく封印して、その後、英司に剣を習ってからは【天冥神閻流】に鞍替えしたが、俺の原典、それを、この【蒼刻】と、熱い戦いが呼び覚ましたのだ。


「俺もなるぜ、【蒼刻】」


 じいちゃんも全身を蒼く染めた。だが、それだけではなかった。本来形成される7つの【蒼き力場】のほかに、もう7つ【蒼き力場】が形成されている。つまり精製量が倍になっているということだ。いや、違う、倍ではない。発生は二乗的に……累乗的に増えていく。だから、その差は倍どころではなかった。

 これが、大叔母さんからのバックアップか。クッ、規格外過ぎんだろーがよ。俺は、【神魔刀・里神楽】にありったけの【蒼き力場】を注ぎこむ。


「さあ、決着をつけようか、紳司ッ!」


「望むところだよ、じいちゃんッ!」


 互いの全力が籠った一撃を放つ。【我流・狗牙太刀】……その奥義の名は、【狗双十字(くそうじゅうじ)】。ある剣豪が偶然見て、真似をしたとか言う話もあるらしい、俺のとっておきだ。真似した奴は《双劉牙(そうりゅうが)》と名付けたらしいがな。


「オラァアアアアアアアッ!」


 じいちゃんの必殺ともいえる蒼い奔流を伴う一撃。それを、俺は、迎え撃つ。俺の全力の力で……


「【我流・狗牙太刀】奥義――【狗双十字(くそうじゅうじ)】」


 眩い光を放ちながら、蒼色の十字が二組重なり「*」のような形をした斬撃が蒼い奔流の中心を貫くように進む。その様子はさながら、束になった軍勢対一騎当千の猛将。軍の中心を馬に乗って駆け、軍勢を切り裂いていくかのようにまっすぐに進むような、そんな様子。


 そして、光が止み、勝ったのは……

 え~、いいところで、みたいな感じですが、この話のタイトルを見れば、どっちが勝ったのか分かるお約束。前にも言いましたが、あたしの作品に関して「○○VS■■」っていうのはよくあることでして、その時のタイトルには法則性があります。


なお、《双劉牙(そうりゅうが)》からある人を連想しますが、実は、そのある人は、直で紳司……当時の信司を見たわけではありません。その辺は、三神物語をリメイクできたら語ろうと思いますが、剣技誕生秘話、みたいな。

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