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《神》の古具使い  作者: 桃姫
前世編 SIDE.D
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230話:化け物

 桜子の治療を、みんなには、簡単に説明しておいたわ。謝礼を貰えると聞いて何ができるかと尋ねたら高度な治療もできるって言われたから桜子の治療をお願いした、って感じで説明してるけどね。流石に転生と過去のことは話せないもの。零桜華も付き添いの子ってことにしてるしね。とにかく治療をしてもらうんだけど、結構難しいのよ。


 魂と肉体の関係は的確には分かってないけれど、アストラル体だのアッシャーだの適当なことを言うつもりはないけど、生まれたときよりも成長すると体と魂の結びつきは非常に強くなるわ。まあ、それが徐々に老いるごとにほつれていくんだけどね。そして、魂と肉体に施す治療は、幼少期の方が、魂との結びつきが緩くて、しかもそのあとしっかりしていくからやりやすいのよ。でも、今の桜子くらいまでに育っていると結構難しいってことよ。まあ、今の技術ならそれでも死んじゃうとかの確率は5%未満だけどね。


「なあ、大丈夫なのか。疑うわけじゃないけど、ここが異世界だってんなら、未知の技術だろ?染井先輩ヤバイんじゃねぇか?」


 怜斗がちょっと不満そうに言った。不満なのは、帰れないからかしら、って違うわね、死んじゃうかもしれないって思ってるからね。人が理不尽で死ぬのは許せないたちだから。まあ、そのくせバンバン殺すんだけどね、人を。


「大丈夫よ。この世界じゃ、100年以上もまえに桃悟郎のおっさんが確立した技術なんだから」


 てかまあ、桃悟郎のおっさんも、見た目は機械で若いからおっさんじゃないんだけどね。要するに、この魂を操作する技術ってのは「風林火陰山雷」の開発にも関係しているってか、それがあるから開発できたってことなんだけどね。


「待て、青葉君。君はなぜそんなことを知っている。とうごろうとは誰のことだい。君の言動には時々不自然なものがあったが、ここにきている間はそれが極端に目立って見える。君はいったい……」


 おやまあ、不知火が妙なことを言い出したわね。しっかし、まあ、あたしとしては、別段変な行動は……してるわね。パーティの時の妙なキャラづくりとかね。


忌憚(きたん)の宿命を背負いし、されどその宿命を跳ね除ける希望たる黎明(れいめい)。聖典に記された黒き剣士であり暗殺者でもある者。そして、刃に愛され、そして《覇の古具使い》の孫。弟は《神の古具》を操り、父は《勝利の古具》を司る。そして、(ひかりあるもの)は《(せい)の古具使い》。《(せい)()》《(せい)()》、同じ読みをする運命。そして、彼の最強の血統にして――と――の血を持つ二重神性体。

 それが彼女の運命というものですよ、坊ちゃま」


 その言葉は十月の口から出ていたけれど、口調が十月じゃなかったわ。つまり鞠華と言うことよね。


「鞠華か……?しかしどういう意味だい。青葉君の運命とやらは……」


 どうやらあたしは随分と数奇な運命の元に生まれたようね。まあ、実体験済みだけど。それにしてもいろいろと詳しく知っている鞠華はいったい何なのかしら。前は、十月の能力を借りているみたいな感じだったけど、流石に、十月の予知だけでこれだけの情報は仕入れられないでしょう?


「どこ情報よ?」


 あたしは、鞠華にそう問いかけた。すると、鞠華は、一瞬迷って、それでも答えてくれるわ。


「《千里の未来(シーン・フューチャー)》は、本来の能力じゃないです。本当は、私の使っている《古具》が本来で、そこから派生していましてね」


 不知火も初めて聞いたのか、驚いた顔をしていたわ。ふぅん、派生能力ね。そんなこともあるのってのは初耳だけど、まあ、能力の一端ってことよね。


「それにしても、暗音さんは、馬鹿みたいに強いからなー。いろいろと隠しててもおかしくはないんだけど」


 輝がそんなことを言う。要約すると(昔から隠し事の多い人だったからなー、姉さんは)ってところかしら。讃ちゃんも同意しているのか、うんうんと頷いていた。


「昔から隠し事をする人でしたからね。なんでも内緒って感じで」


 讃ちゃん、あたしそんなに隠し事してないわよ?ったく、まあ、多少あったのは認めるけどね。

 そもそもの話、あの世界に生きていたあたしは、いろいろと隠し事を背負ってたわよ。それこそ蒼子さんとあたしだけの秘密とかもあったし、そのほかにもいろいろと暗殺関係で隠し事はあったけれど、今ほど深い隠し事は全然なかったのよね。


「……どうやら、治療が終わったみたいね」


 そういったのは、話の輪に入っていなかった零桜華よ。そして、治療終了を伝える証としてアナウンスが流れた。


「それにしても、私がいたころの黒減式の機械からだいぶ進歩してるわよね。やっぱ医学的なものは発展するのかしら」


 などと紫麗華は呟く。ああ、なお、現在の黒減式の機械は8代目らしいわね。

 そういえばどうでもいい話だけれど、零桜華の名前は、零は零士の「零」、桜は桜子の「桜」で、華は紫麗華の「華」だったのよね。


「ふぅ、……零桜華、私の服を取ってくれる?」


 桜子が、扉の向こうから半裸の状態で出てきた。どうやら、普通に成功したみたいね。半裸なのは、服を着ていると施術できないからってことよ。そんで中に衣類を持ち込めないから、出てくる途中にあったタオルで体を隠して出てきたってことろかしら。


「え、制服っぽいのならクリーニング中で、少し時間がかかるわよ?」


 ああ、そうだったわね。終了時刻がつかめなくて、戦闘で汚れていたからクリーニングしてたのよね。


「えー、じゃあ、なんでもいいからちょうだいよ」


 そういう桜子に紫零華が、瞬時に服を構築して差し出した。その服は、昔のA支部の制服だったわ。その姿を見たあたしはどこか懐かしい気分になった。昔は、あたしもあの服を……男子用だったけどね、着ていたのよ。


「ああ、懐かしいわねぇ……」


 しみじみと呟く桜子を置いておいて、これからどうするかが問題よね。って思った瞬間、目の前が白く染まった。また、ってことかしら。ったくいつも急ね。






 暗転、目を開けると、紫麗華の家にいたわ。全員そろっているわね。そう、全員いるのよ、零桜華も含めてね。


「零桜華、あんたもついてきっちゃったの?」


 あたしの呆れた言葉に、皆が零桜華の存在に気付いた。零桜華はあたしの言葉に憤慨した様子をみせるわ。


「あたしだって好きでついてきたわけじゃないわよ。勝手に巻き込まれたのよ!」


 やれやれね。てか、そろそろ明かした方がいい頃合いなのよね。でも不知火たちも巻き込むのはちょっとやりすぎ感があるのよね。


「おお、ここは元の場所か。……もうわけのわからないことが続いて私は疲れたよ。先に帰らせてもらう」


 不知火は十月を連れてそそくさと帰ってしまった。こいつ、本来の目的を忘れてるわね。まあ、いいんだけど。そのほうが話しやすいしね。


「ったく、じゃあ、邪魔者も帰ったことだし、本題の前に、軽く話しておこうかしら。特にあたしの夫である怜斗には話しとかなきゃって思ってたしね」


 そう言って、どっかりと腰をかける。その言葉に長話の予感を感じたのか、全員が、その辺に適当に腰を掛けたわ。さてっと、話すとしますか。そう思って、床に手を置いた瞬間に、どこか肌触りのいい何かを掴んだ。何よ、これ……


「って、あたしが言えた義理じゃないけどブラくらいしまいなさいよ、ホント、あたしが言えた義理じゃないけど」


 似た者姉妹かしら。ってそんなことを話している場合じゃないわね。この悪魔のブラ(そういう商品名の小悪魔系のブラよ。露出がちょっと高めだけどセクシー系のよりは低いっている中間な感じの見せブラってところかしら)はほっぽっといて、話を始めるとしましょうか。


「さて、と。まあ、ここにいるメンツは、あたしが転生をしてるってことは知ってるわよね?」


 あたしの言葉に、皆が一様にうなずいたわ。まあ、全員、それぞれ前世の関係者だから知っているのは当然なんだけどね。で本筋はこっからよ。


「まあ、んでもって、輝、讃ちゃん、怜斗は八斗神(やとがみ)闇音(あんね)関係よね。でもそれだけじゃないのよ」


 そう言って一息入れる。桜子と紫麗華と零桜華がこっちを見ていたわ。ええ、そうね、うん、わかってる。


「あたしは紫雨(むらさめ)零士(れいじ)でもあるのよ。ねぇ、桜子、紫麗華、零桜華」


 3人に話を振ると、3人は何言ってんだコイツって目で見ながらあたりまえだって感じで頷いた。


「ってわけで、あたしには2つの前世があるのよ。あー、なんつーの、これってたぶんありえない類のことなんでしょ?例外みたいな紫麗華を除けば」


 《終焉の少女》、【超自然的輪廻転生存在(リンカネーション)】。永遠に転生し続けることを運命づけられた存在だものね。


「ええ、私のようなケースを除くと、その存在は1人しか思い浮かばないわね……」


 そう言って、ため息交じりに「それもとびっきりの怪物しか」と小声でつぶやいた。あたしの知る限り一番ヤバいのは【血塗れ太陽】だけど、それ以外にヤバイ奴がいるってことかしら。


――ええ、居る。それは、最強と謳われる武神


 そういったのは、あたしの中の龍、儚き龍の皇女、グレート・オブ・ドラゴンよ。そしてその言葉を引き継ぐように、別の声があたしの中に響く。


――そう、そして、「帝華」。そして、「死の一族」。そして、「偉大なる魔術師」。今までに3度の転生を繰り返している……予言ではもうじき4度目の転生を遂げると言われている存在だ。


 化け物のことかしら。やばすぎる奴よね。そして、それが全ての前世を引き継いでいるのなら最強ってレベルじゃないわよ。流石にそんな奴は存在しないんじゃないかしら……。


――そう、本来ならありえないわね。


――だがしかし、奴は特殊だった。まあ、尤も、前世の力を万全に引き出せるわけではなかったようだがな。いや4人目だけは全てを……これから先に転生する相手すらもその身に体現することができる特異体質だったらしいが。


 なにその超異常な怪物。あたしなんか比じゃないじゃない。これが全世界レベルの化け物ってことなのね。


――そうよ、決してあなたでも届かない(いただき)の向こうにその化けものがいるのよ。


 そっか、文字通りまだまだ世界は広いってことね。


「なるほど、婚約者とか幼馴染ってのはこういうことか」


 怜斗は頷いていた。そういえば、軽く桜子について言っていたっけ。まあ、納得してくれたならいいのよ。


「それと、本題に入るのを忘れてたわね」


 あたしの言葉に皆が一様に首を傾げる。ちょっとしかっりしてよ。


「本題って何だ?」


「ちょっと、あたしらはどうしてここに来たのよ。紫麗華の不登校を矯正するためでしょうがっ!」


 こうして、あたしたちは、紫麗華を説得して登校するようにしたのよ。なお、紫麗華が学生になった理由は簡単で、世間体を考えると20代過ぎで常に家にいるのはあまりよろしくなく、かつ身分証明を偽装するために簡単な学生を選んだそうよ。世界を欺く力で簡単に学生証を作れちゃったみたいだし。


 なお、零桜華は、桜子が夏休み前まで預かっとくって言ってたわ。まあ、それ以降はウチで面倒を見ろってことでしょうけど。

 え~、これにて前世編SIDE.Dが終了となります。ちょうど一か月ってころですね、前章の完結から。もうちょっとペースを上げたいところですが、課題がやばいのでどうなることやら……。


 と言うわけで次章予告


――その女の瞳を見てはならない

――その女の瞳に映ってはならない

――なぜならば、見た瞬間に、あるいは見られた瞬間に、その人生が終わりを告げる。

 世界に点在する魔法組織の中でも一二を争う魔法少女独立保守機構と【最古の術師】。その2つがとある少女を中心にぶつかり合う。その騒動に巻き込まれたのは《神の古具使い》だった……。巻き込まれた彼の運命は……

次章 魔法編SIDE.GOD

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