表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《神》の古具使い  作者: 桃姫
前世編 SIDE.D
224/385

224話:妹と幼馴染

 桜子と紫麗華……もといマリア・ルーンヘクサ、幼馴染が対面したわ。何年振りなのかは分からないけど、相当久しぶりに再会したってことよね。まあ、あたしにしたってそれは同じなんだけどね。


「ん、染井君は、この女性と知り合いなのかね」


 女性、と不知火が表現したことから、今のマリア・ルーンヘクサは、幼女じゃなくて、普通の女に見えてるんでしょうね。無論、あたしには黒髪幼女に見えてるわよ。


紫雨(むらさめ)紫麗華(しりか)ちゃん。私の妹分で、幼馴染なの」


「今は、紫藤(しどう)紫麗華(しりか)よ。それよりもなんだって桜子姉がこんなところにいるのよ?」


 流石の《終焉の少女》でも桜子の転生までは知らなかったんでしょうね。てか、あたしにも気づいてないっぽいし。まあ、それよりも先に、この状況であたしのことをネタバレするのはリスクが高すぎるんだけどね。


「あ、そだ、紫麗華、さっき私のこと呼び捨てにしたね。挑戦?」


「ち、違うって。もう、相変わらず桜子姉は……」


「何、文句あるのブラコン?」


 いつも通りの……零士(あたし)にとっていつも通りの光景が繰り広げられるので、ため息交じりに、部屋に強行突破することにするわ。


「とりあえず邪魔するわよ。って、汚っ。ちゃんと掃除してねぇーのかよ」


 思わずあたしの中の零士が口を出してしまうくらいに汚かった。典型的ニートの部屋って感じのゲーム散らばって、ポテチのカスが落ちてて、コーラのペットボトルの空が散乱している状態よ。


「零士、口調、口調!」


 桜子からぼそりとツッコミが入ったけど、気づいとるっちゅーのよ。しかし、まー汚いわね。あたしも人のことを言えないタイプだけど、ここまでじゃないわよ。それにしても、この部屋、入って改めて感じるけど、どこか神聖な気配……地脈の点穴のような場所のように感じるけれど、それをこの部屋が増長させているように感じるわね。

 所謂、風水って奴かしら。九頭龍(くずりゅう)の巫女とやらをやっていたらしいし、おかしなはなしではないわよね。生徒会長の感じた雰囲気も、これのせいか、それともマリア・ルーンヘクサの特性か、どっちかのせいでしょうね。


 やれやれ、座る場所もないわ……と思って、適当にどかしながら座ろうと思ったその時、桜子から大きな声が上がった。


「あーっ!」


 耳をつんざくような高い声に、あたしの耳がキーンってする。何なのよ、と思って、桜子の視線の先を追って、あたしは動きが止まった。そこには、ごみにまみれながらも、その光沢は決して穢れのない、そんな魔装大剣が放置されていたのよ。パージされた補助パーツと共にね。


「どうしたんですか、染井先輩(?)さん」


 讃ちゃんが遠慮気味に桜子に問いかける。しかし、桜子は、それには答えず、紫麗華に詰め寄った。


「ちょっと、どうして私のデュランダルがここにあるの?というかゴミまみれじゃ

ない!紫麗華!」


 デュランダル……【魔装大剣デュランダル】。かつて零士(あたし)が、偶然発掘したもので無類の切れ味を誇っていたわ。ただし、切れ味が良すぎるし、危険だからって、零士(あたし)は破壊したってことにしてパーツを加えて魔装銃剣として、桜子に持たせていたのよね。魔装銃剣の時は【魔装銃剣ミストルティン】って名前だったし、基本的にそれを使っていたけれど、まあ、いわば枷だからね、ピンチの時は解放するのよ。このカラーコード003、極めて純粋な魔力伝達物質でできた剣を、ね。


「ちょっと、いいでしょ、桜子姉。せっかく世界を漂っているところを拾ってきて

あげたのに感謝はされども、怒られる筋合いはないわよ?」


 え、世界を漂っていた、ですって?どうしてそんなことに……って言うのはどうでもいいわね。てか、それよりも、


「みんなも遠慮しないで座れば?」


 なんか、遠巻きにこっちを見ている面々にそうやって声をかけるわ。遠慮することなんてないのに。


「青葉暗音、ここはあなたの家じゃないのに、なんであなたがそんなことを言っているのよ」


 紫麗華、もといマリア・ルーンヘクサは、あたしが零士であることにまだ気づいてないのよね。桜子や百合はすぐに気付いたのに、どうしてかしらね。妹力の欠如、と言うやつかしら。……妹力って何よ。


――お前は、こんな時に何を考えているんだ。しかし、どういう状況だ。眠りから覚めると、これほどの【魔性】を宿したものが目の前にいるとは……。黒騎士以来か。


 あら、グラム、あんた黒騎士と戦ったことがあるの?問いかけるとグラムは、しばし唸るようにキンキンと音を立てながら言う。


「いや、直接戦ったわけではない。見たことがあるというだけだ。やつはす凄まじかったな。黒の甲冑に身を包み、黒き剣で地平を裂く。……そうだな、お前と少し似ていた気がする」


 へぇ、あたしと黒騎士がね。あ、そうそう、この目の前にいるのは、その黒騎士と同じ力を持つ……てか、黒騎士がコイツと同じ力を持っているんだけど、《終焉の少女》その人よ。


「《終焉の少女》、だと……」


 グラムは驚愕のあまり声が出ないようね。それ以上は話さず黙り込んじゃったわ。まあ、いいけど。


「青葉君、君もよく堂々と人の家に入っていけるな。肝が据わっているというか、何も考えてないというか」


 あら失礼しちゃうわね。これでも一応の礼節くらいはわきまえてるわよ。でも妹の家に上がるのに、一々面倒なことを考える必要はないでしょ?


「流石に人の家に入るのはためらうけど、妹の家に入るのに、そんなまどろっこしいことをする必要なんてないじゃないの」


「妹ってねぇ……、私の兄は、ただ一人よ。姉はいないわ。勝手に名乗らないでくれる?」


 マリア・ルーンヘクサの鋭い声が飛んでくる。いやいや、その愛しのお兄様があたしなんだけど。気づけってのよ。


「おい、いい加減に気付けよ、紫麗華。俺だよ。お前、相変わらず変に鋭いのに、妙に鈍いよな……」


 耳元で零士がマリア・ルーンヘクサ……紫麗華に囁いた。すると、紫麗華はみるみると表情を変えて、そして、唖然とした声でつぶやいたわ。


「お兄ちゃん?」


 その言葉だけで十分だったわ。それで、紫麗華が、あたしと零士をイコールで結んだのが分かったんだもの。本当に驚いている様子だったわ。


「でも、そんな馬鹿なことが……。青葉暗音、八斗神闇音の転生体。今まで幾度となく生きてきた中で、転生体は珍しいけど、皆無というわけではなかった。でも、でも……!

 そんなことってあり得るの?いえ、実例はあるわ。でも、これじゃあ、まるで……、まさか、予言の子(せつな)、の言う、《悠久聖典(アシャノス)》の【第十六節】に出てくる……。

 でも、それは……、てっきり5代目天辰流だと……いえ、でも、予言の子はそうだと明言しなかった。むしろ、【第十一節】の方を5代目だと言っていたわ。でも、すると、矛盾が生まれるから、私はこちらを5代目だと思い込んでいた。それは違った……?

 たしか、あの節は……」


 何やらぶつぶつと呟く紫麗華。《悠久聖典(アシャノス)》だのなんだとのと言う言葉が出てきたんだけれど、紳司曰く、世界のすべてを記した予言書、アカシックレコードのようなものらしいわね。ミュラー・ディ・ファルファムが、その炎の章を扱えるとかどうとか。


「【悠久聖典(アシャノス)第十六節】


 ――暗闇の章(デュライト)


 ――八節。


 深き氷の奥の奥、光の差さぬ【漆黒の闇】。淀み出るは暗黒。司るは夜の女王(キョウカ)


 黒き騎士は龍を屠りて高らかな笑い声をあげる。無数の龍と聖なる剣が駆る時代を黒く邪なるものが覆い尽くす。


 時代は移ろい、やがて来るのは終焉の日。だが、その日を前にして、黒き少年(けんてん)闇の剣士(あんさつしゃ)、それらから生まれ変わった女は覇にして刃、皇にして刃、獣にして刃。


 闇はさらなる闇へと暗さを増していく、――影槍花月(えいそうかげつ)


 さあ、反撃だ」


 今のは悠久聖典ってやつの一か所なのかしら。反撃……つまり、今まで陰に徹していたけれど、反撃の時が来たから攻撃しようってこと、みたいだけど、途中の、「黒き少年」と「闇の剣士」、「生まれ変わった女」、「皇にして刃」、「獣にして刃」ってのにはなんか既視感を感じるっていうか……あたしのことじゃないかしら。


 黒き少年ってのは紫雨零士のことで、闇の剣士は八斗神闇音のことで、生まれ変わった女はあたし。皇にして刃は、夢幻の龍皇女グレート・オブ・ドラゴン。獣にして刃は、宵闇に輝く刃の獣グラムファリオ。覇にして刃ってのは知らんけどね。


 あまりにも類似点が多いものね。でも、紫麗華はなんで驚いていたのよ。その辺がよくわからないんだけど。


「転生から転生へ……。通常ならあり得ない。まさに『神の領域』に片足をツッコんでいないと到底ありえない存在よ。いくら……――と蒼天の馬鹿の血族だからといって会っていいことじゃないわ。どちらも、個人にそれが受け継がれるものだもの。それが遺伝しているわけがない。

 でも、《神》の古具使い……神――祝福をその身に宿した――の生き写しがいるんだもの。その姉が――の生き写しでもおかしくはないはず。だとすると、いえ、なるほど、じゃあ、つい最近、少なくとも青葉暗音が、自分が『紫雨零士』であると認識したときに、もしくはその直前……少なくとも1時間程度以内に《紅天の蒼翼ヘブンズ・パラドックス》が発動していなければおかしいわね。

 ねぇ、お兄ちゃん、自覚したのはいつ?」


 紫麗華が長い考察から帰ってきて、急にそんな風に問いかけられたわ。まあ、紫雨零士であることを自覚したのは昨日ってことになるわね。


「一応、昨日だけど?」


「昨日、確か、昨日は、三鷹丘で三鷹丘学園の生徒会と《魔堂王会》がやり合っていたはずよね。つまり、その時に、花月静巴の枷が外れたのかしら。そして、――の力を取り戻して、その影響で――の2人が覚醒した、と?」


 こうなると長いわね、紫麗華。ったく、一体何なのよ。てか、早く本題に入りたいんだけど。

 え~、大変遅くなりました。事情はいつも通り、課題です。山盛りです。今週提出のレポートが3枚、課題が1つ、中間テストが4つ。ぶっちゃけヤバすぎ。1年前期が一番きついとは聞いてましたが、これは無理。この話もレポートの合間の休憩でどうにかかきました。


 そんな愚痴はおいておいて、本編についてちょこっと補足。

 間にいろいろはさんでいるために分かりづらいですが、この話は、紳司たちにとってはミランダたちが襲ってきた次の日であり、つまり龍神の部屋から帰ってきた日になります。

 そして、暗音が零士について自覚したのは、覇龍祭の途中及び帰ってきた後。覇龍祭が時間の流れが違うため分かりづらいですが、ミランダの一件が解決した1時間くらい後になりますかね。


 で、紳司が牡丹を打ったのはこれの1週間ちょい後くらいになるので、そのため、この時には、静巴は連星剣を持っていません。


 こんな感じが補足でしょうか。次はなるべく早く更新します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ