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《神》の古具使い  作者: 桃姫
鍛冶編 SIDE.GOD
212/385

212話:説明&影桜

 とりあえず、宿直室の畳張りの床に腰を下ろし、説明をすることにした。何から説明するか、と言うと、橘先生は、実家が実家なだけに、《古具》などは知っているだろう、とは思うんだが、その辺の確認を取ってから説明をする内容を決めようと思っている。


 そもそも、橘先生の実家……日向神が、この世界で、どういったポジションに分類されるのかもよく分からんしな。


「橘先生は、《古具》、と呼ばれるものの存在を知っていますか?」


 《古具》。この世界固有のものだが、この世界に根を張る不思議な力に関係のある家に住む人間なら知っているはずだ。


「ふるぐ?ううん、聞き覚えはないよ?」


 どうやら、《古具》を知らないらしい。と言うことは《古具》使いでもないのだろう。しかし、パワースポットの守護家なのに、そういうのは全く知らないと言うのもどうなんだろうか。あえて橘先生にだけ知らされていなかったのか、家全体知らないのか。いや、立原家が関わっていて、知らないってことはないだろう。


「あー、この世界には、《古具(アーティファクト)》と呼ばれる不思議な力があるんですよ。うちの生徒会と、それから由梨香、紫炎とか、あと、水泳部の天姫谷も、《古具》の保持者ですね。こういったものです」


 そう言って、俺は、自分の《古具》である《神々の宝具(ゴッド・ブレス)》を発動して、その中の1つ《無敵の鬼神剣(アスラ・アパラージタ)》を呼び出した。緋色の布が柄にまかれた剣だ。久々に呼んだ気がするが……、あれだな、ミランダちゃんと戦った時以来だろう。そういえば、母さんたちにミランダちゃんたちがどうなったか聞いてなかったな。


「うわっ、おっきい剣……」


 まあ、確かにでかい剣だよな。だが、それ以前の問題として一般的におかしく思う部分がほかにもあると思うんだが。例えば、なんで剣、とか、どこから出したの、とか。それなのに、第一感想が「おっきい剣」と言うあたり、やっぱりこの人もどこかずれているような気がする。


「でも、この剣は、不思議な感じがするねぇ。わたし、実家の関係で、妖刀や魔剣なんていうのを見せられたこともあるけど、それとも違う、不思議な力を感じる」


 あー、確かに不思議だろう。まあ、分類上、神の造った剣【神剣】に当たるんだろうが、いまいち微妙な位置にあるものだしな。ああ、この場合の造った神ってのは、《古具》を造った神の方であって、インド神話系列のアパラージタを授けたとされる神のことではない。つまり本当の神様かも怪しいところだからな。


「まあ、剣と言うものならなんでも生み出すとかの生産系の《古具》もあれば、未来予知とか身体強化とかの補助系の《古具》、あとは俺のように固有の物を呼び出す《古具》なんかがあるな」


 俺の周りの《古具》使いは、前には攻撃系に偏っていると言っていたが、今はどうだろうか。そもそも攻撃系でもその中身は、様々だ。ユノン先輩の《破魔の宝刀(ブレイク・ダークネス)》は本人の弁によると、前述の種類で言うところの生産系の《古具》に当たるらしい。俺は実物を見たことがないからな。


 ミュラー先輩の《赫哭の赤紅アンリミテッド・レッド》は体を炎にする補助系と炎を具現化する生産系の両面を持つ《古具》である。


 静巴の《紅天の蒼翼ヘブンズ・パラドックス》はよくわからないが、自分に翼を生やしていたところを見ると、補助系なのかもしれない。詳細は不明。


 俺は前述のように固有の物しか呼び出せない召喚系の《古具》使いだ。


 秋世の《銀朱の時ヴァーミリオン・タイム》は、瞬間移動だから明らかに補助系の《古具》だろう。


 紫炎の《本能の覚醒サバイバル・インスティンクト》は、自己身体強化であり、補助系の《古具》だ。


 天姫谷の《刀工の呪魔剣スミス・カースブレード》は、幾多の呪いを帯びた数種類の様々な剣を出せることから生産系。


 由梨香の《戦舞の闘歌(バトル・ドライブ)》は、自他の身体強化能力であり、補助系に分類される。


 宴の《存在の拒絶(ノット・ファウンド)》は自分の姿を消すことのできる補助系に分類される。


 身近な面々だけで考えても、召喚系1、生産系3、補助系6(内、1つは推測、1つは両方にカウント)と、実のところ補助系の方が多くなっていた。

 いや、まあ、前のには姉さんのところのもカウントしていたが、姉さんの方も、九浄燦……恐山讃ちゃんの《古具》は知らんけど、姉さんと光……鷹月が攻撃系で、零斗……怜斗、不知火覇紋、占夏十月は補助系、と、どちらにせよ補助系の方が多くなるのだ。


「うん、それで、《古具》っていうのがあるっていうのは分かったけど、さっきの場所はなんだったの、青葉君?」


 何を疑問に思うでもなく、すんなりと受け入れるのは、自分の家が不思議な家であることが分かっているからなのか、それとも、現実味がないからなのか。まあ、どちらにせよ、細かく説明している時間はないからな。


「あ~、そっちを説明する前に、俺について説明しなくてはいけませんね。まあ、それよりも前に、前提として、橘先生は、前世や輪廻転生と言うものを信じていますか?」


 これを信じられないのなら説明が面倒になるんだが、まあ、その辺は適当に流してもいいんだよな。別に、わざわざ秘密を積極的にバラしていく必要もないし。


「前世、輪廻転生って、一回死んじゃっても、次に生を受けて生まれ変わることでしょぉ?少女漫画とかにもある設定だからね。うん、信じるよぉー」


 少女漫画の話じゃないんだがな。まあいい、信じてると言っている……いや、信じると言っているんだ、蒸し返して妙に話を長引かせる必要もあるまい。


「実は俺も転生者なんですよ。かつては、とある世界の刀匠、六花信司と言いました」


 俺の言葉に「六花、信司……」と前世の俺の名前を呟いていた。まあ、名前に関しちゃ、この際どうでもよくはあるんだがな。


「そして、この刀は、前世の俺が打ちかけだった刀なんです」


 そう言って、未完成の刀を見せる。まだ鈍く、光を反射する様子すらない刀身に、仮付けされた雑な柄。まあ、雑だったからこそ、すぐに判別できたんだが。


「そっか、刀匠だもんね、刀を打ってたんだぁ……。で、あの空間は?」


 さて、一番説明の難しいところだな。どう説明をしたものか。俺もよくわかっていないからな。


「う~ん、なんていえばいいんでしょうか。魔法で作られた空間……とも違うし、異空間と言うには大げさで、別世界なんて表現も、小世界なんて表現も大仰な、そう、表現するなら、刀の意思の世界、結界とでも言いましょうか……」


 それこそが【精霊神界】。レイルシル、と言う名前は、剣帝王国(アルレリアス)で、精霊や悪霊と言った意味の言葉である。まあ、あの国は特殊な表現と言うか、精霊も悪霊も同じ発音っておかしいだろ?

 あとは太陽と清らか、聖なるが同じシュリクシア、夜とか邪悪とか汚いがデシスピア、機械的とか仕組みとかごちゃごちゃしたって意味のエスサイシア、偉大とか強大とかおぞましいとかドラゴンを指すのがドライグル、天使や天国、翼を意味するのがシンフォリア、とか、妙に複数の意味のある言葉っていうのがある。


「じゃあ、あそこは、この子の世界ってことぉ?」


 おおむねその通りだが、俺は1つだけ訂正することにした。


「この子、じゃなくてこの子たち、ですよ」


 サト子とカグラの2人がいるからな。さて、説明も一段落だろうか。他に説明しなくてはならないこともないだろうし。……ん?


 今、一瞬、外から視線を感じたような気がしたんだが、気のせいだろうか。心の奥で、何かに頷き返すようなそんな感じが……。


 ふと、窓の外を見ると、もう、夏だというのにも関わらず、季節外れにもほどがある桜の花びらが数枚、地面へと落ちていくのが見えた……ような気がした。


「紳司様、今……」


 今まで俺の後ろに控えるようにして押し黙っていた由梨香が、俺にそう声をかけた。どうやら由梨香も気づいたようで、それなら俺の気のせいではない、と言うことなのだろうが、……いや、いいか。


「大丈夫だ、問題はないさ。それに、もうこの世界から発っているころだろうよ」


 なんでか知らないが、俺は、とにかくそういった。知っているようで、知らないはずの、その()


 ははっ、まあ、どうでもいいか。俺は、そう思いながら、再び橘先生の方を見る。そして、告げる。


「説明は以上です。俺は、今から、こいつ……【魔刀・里神楽】を完成させるために、鍛冶場に入りますから、では、これで」


 そう言って、胸に下げているペンダントに手をかける。アルデンテ・クロムヘルトの残してくれた、あの鍛冶場へと向かうために。









影桜

SIDE.???


 ああ、うん、あれが、そうなんやね。やっぱり、予言で知るんと、実際に見るんやと、結構ちゃうもんやね。蒼き血統、蒼色の血潮……ブルー・ブラッドが流れとる神なる子供。清らかにして聖なる……そして、最強の血統。


 ウチの予言やと、春場(はるば)はんも、もうじき亡くなってまうし、そうなってくると、やっぱり、あの子の打つ……が。


 そう言って、チラリと、窓からのぞき込んでみる。別にけったいなもんがあるわけやないけど、そこにいた青年は、かつて、ウチが窓から剣を振るう様子を眺めとった騎士団長にそっくりな青年やった。


 ふふっ、随分と懐かしい顔やね。それに、一緒に()る子ら、あの子が、シュピードの……あの戦いにて、執事さん(かれ)と互角にわったっとった悠久聖典にも載っとるあの女の、弟子やんね。


 そして、対面しとるんが、あの舞子はんの親戚にして、予言の……、あの時の神託によって出た、あの子なんやよね。蒼き神と共に歩む、辰を祓う力が無くとも、栄華の証を手にする子。


 さあ、あの人(・・・)に教えた予言の顛末は見届けた。ふふっ、どこか、彼の魔力がウチに挨拶をしとるような……いや、ちゃうな。彼の魔力やのうて、その奥に眠る、あの人(・・・)の魔力やな。

 長いも無用や。名残惜しくはあるんやけど、転移しようやないか。


――スッ


 その時、ウチの苗字にも入っている桜の花びらが数枚舞い落ちる。さあ、ウチの名前のように短い査察は、これにて終わりやね。次の……春場はんの後継者を……その生まれ落ちる地を探さんと。それにしても、よーゆーたもんやな。確かに、「姫には花と恋がお似合いで華がある」ってもんや。でも、その花は儚い、そう、椿の花が落ちるように悲しい結末が待っとる人生かもしれんけどな、その姫は。

 え~、誰なんだ???って……と、まあ、あたしの作品で関西弁をしゃべっているのは2人くらいかな?まあ、本文の関西弁は、あたし的関西弁なので関西の方からしたらこんなんじゃない、と憤慨されるかもしれませんがご許容ください。


 亞月と……あの人くらいですからねぇ。ってまあ、普通に周辺単語で分かるような、分からないような。分かる人は桃姫検定準2級くらいですね。


(追記)

 ナチュラルに宴の存在が消えていたのでつけたし……これがノットファウンドの力か……

5/11

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