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《神》の古具使い  作者: 桃姫
古具編 SIDE.D
21/385

21話:朝の談話

「一緒にシャワー浴びただけだ」


「一緒にシャワー浴びただけよ」


 この状況に、あたしと紳司は、同時に口にだした。さすが双子って感じよね。母さんはそれを聞いてホッとした。


「あ、一緒にシャワー浴びただけですか……、何だ、驚かさないでくださいよ」


 ホッと一息ついて、母さんは、朝食を作りにキッチンへ向かおうとして、動きが止まった。


「ん?……一緒にシャワー、ですか?」


 母さんの目が点になった。暫し、パチクリとまばたきを繰り返し、振り返った。


「一緒に、シャワーを、浴びたん、ですか?」


 自分で自分の言っていることを確認するように母さんは、言葉を区切り区切り言った。


「「浴びたよ」」


 あたしと紳司は口を揃えて悪びれることなく、ごく自然だと言う様に言った。


「は、(はだか)で?」


 母さんの少々動揺した声。シャワーを服を着て浴びたら意味ないというか、なんと言うか。


「もちろん」


「シャワー浴びるのに服着てどーすんの?」


 あたしと紳司の話を聞いて母さんが、アホみたく口をあけた。


「あの、紳司君、暗音さん、今、いくつでしたっけ?」


 母さんがボケたのね……。


「「17」」


 額に手を当てる母さん。なにやら主婦っぽい仕草(しぐさ)よね。もしくは中二っぽいわ。


「あのですね……。世間(せけん)一般では、17歳で姉弟(きょうだい)は一緒にお風呂に入ったりしないんですよ」


 世間は世間、ウチはウチ。というより他所は他所、ウチはウチってことよ。てーか、腹減ったわね。


「そんなことよりご飯まだ?」


 あたしとしては、そんなどうでもいい話より、ご飯の方が大事なのよ。そう母さんに伝えると、母さんは、溜息混じりに言った。


「はぁ……。はい、分かりました。作りますから少し待っていてください。暗音さんは、服を着ておいてくださいね。まったく……こういうところは父親似(ちちおやに)なんですから」


 母さんはキッチンへと向かう。その足取りは重そうね……。


「姉さん、俺、気になってたんだけどさ」


「なによ」


 紳司が急に話を切り出してきた。母さんがいたら出来ない話だったのかしら?母さんがキッチンに行ったのを確認するようにしてから言う。


「下着って、上下で違う(がら)のこともあるんだな」


 ふむ、さっきからずっとあたしの身体を見ていると思ったら、そんなことを考えていたのね。紳司って相変わらず……。


 たしかにあたしのショーツは、フリルのあしらったショーツだし、ブラは、ストライプのセットで買った緑と白のやつだ。


「ん?別に見せるわけじゃないし、そんなもんよ」


 基本的に勝負下着ってわけじゃないんだから、そこまで揃える必要性は感じないのよね。まあ、夏場とか、制服のシャツが透けてブラが見えることもあるから、夏場のブラは、気を使うけど、ショーツは別にって感じだし。


 勝負下着と言えば、母さんは、黒の薄地のスケスケパンツ(布地少な目)と黒の薄地のスケスケブラ(薔薇刺繍)らしいわね。


 まあ、普段、こんなんだと紳司とかは「幻滅したな……、ちょっと萎える」とか思ってんでしょうけど。

 まあ、勝負時はきちんと勝負下着を穿くから、ね。


「あとは、サニタリーとかで、なかなかセットで可愛いのがないからパンツだけサニタリーで、ブラは見せブラとかね」


 サニタリーは、あんま可愛いのが無いのよね。生地が厚かったり、ごわついたり、物によってはカボチャパンツ……、いえ、いまや、あんまそんな極端なのはないんだけれどね。てーか、紳司、興味津々ね。そんなに下着の話がしたいのだろうか?


 てゆーか、さっきからショーツやらブラやらの話ばっかだけど大丈夫なのかしら?いろんな意味で。


「ふぅん、女子って大変なんだな」


 紳司がいかにも適当な言葉でその場を濁すと、紳司は、母さんを追うようにキッチンに併設されたリビングへと向かっていった。あたしは、部屋に戻り、制服を着てくるのだった。ちなみに、紳司の発言のこともあり、あたしは下着を一新したというのは余談かしら?








 そんなことがあり、教室にて、あたしは、はやてと談笑をすることにした。話の肴は、今朝のことである。


「ねぇ、はやて、聞いてよ」


 あたしがそう言うと、はやてがテクテクとやってきた。家から学校まで徒歩数分だというのに、きちんと早めに登校しているはやては偉いと思うわ。


「なぁに、暗音ちゃん?」


 寄ってきたはやてが、ちょこんと首をかしげて、あたしと談笑する準備が万端だ。まあ、いつも朝はこうして話しているんだけれどね。


「聞いてよ~、今朝ね、ちょっとしたことがあってさ~」


「何があったの?」


 いつものようにあたしの話に相槌を打つはやて。いつもこうやってあたしの話を聞いてくれるのよね。


「今朝さぁ、紳司と一緒にシャワー浴びたんだけどね」


「うん。……うん?」


 あたしが今朝のことを語り始める。すると、今日は珍しく、はやてから話に入ってきた。


「って、ちょっと待って!一緒にシャワー浴びたの?!」


 何か大きな声で言われた。しかもその後すぐに、ハッとして、あわてて両手で口を塞いだ。何なのかしら?


「何で、そんなことになったの?」


 そんなことって、一緒にシャワー浴びたことかしら。別に、あたしは、その場の流れとしかいえないのだけれど。


「別に、たまたま時間がかぶったからだけど?」


 あたしの発言に、なぜか周囲がざわつきだした。何でよ?


「暗音ちゃん、……その、は、裸で?」


 はやてが、恥ずかしいけど聞きたい、みたいな真っ赤な顔であたしに聞いてきた。


「そりゃ、服着てシャワー浴びてどうすんのよ?母さんと同じこと聞かないでよぉ」


「お母さんも知ってるの?!と、とめられないの?」


 はやては何を言っているのかしら。普通は入らないものだ、とは言われたけれど、入るな、とは言われてないのだから、あたしは紳司と風呂に入ることはやめないと思うわよ?それに、とめられてはない。


「とめられないわ(脚色)」


 あたしの発言に、はやては、絶句した。唖然とした表情で、ポカーンと口をあけて、何を言っていいの分からないかのような感じで、結局、はやてが言ったのは、


「暗音ちゃんちって凄いんだね」


 そんな小学生の感想のような一言だけだった。 


「凄いって、何が?」


 いまいち、何が凄いのか分からず、あたしは、はやてにそう聞いた。するとはやては、溜息をつきたげな顔で言う。


「そういうところがだよぉ……」


 はやては何か、ちょと泣きそうだった。何でよ?


「はやてだって友則と一緒にお風呂ぐらい入るでしょ?」


「入らないよ!」


 激怒された。


「そ、そりゃ、ち、ちっちゃな頃とかは入ったけど……。さ、最近は入ってないよ!」


 最近っていつぐらいまでは一緒に入ってたのだろうか?あたしと紳司は姉弟だからまだしも、はやてと友則って……。まあ、バカップルだから仕方ないか。


「一緒に入ってたのも、その2年前までだったし……」


 2年前、すなわち、中3まで。ふむ……


「人のこと言えないじゃない」


 あたしが肩を竦めて言った。


「い、言えるよぉ。少なくとも今は入ってないぉ」


 ふむ、しかし、数年もしたら一緒に風呂に入る仲になっているのだろう。仲というか、関係?


 もう、半分夫婦みたいなもんだから、必然よね。もしかしたら学生結婚なんてことになるかもね。何でもはやての両親の友達の両親は、何でも学生結婚だったらしいしね。どうでもいいけど両親の友達の両親って何か言いにくい上に、関係性が分かりにくいわよね。


「まあ、どうでもいいけど」


 あたしはそう言って話を終わらせた。


「終わらせないでよ!まだ、話、終わってないよ!」


 はやてが叫ぶ。朝から元気ね。あたしは、もう、眠い。ほら、地の文も一文ずつが短くなってきた。ふぁあぁ。あっ、よだれ垂れちゃった。


「じゅる」


「暗音ちゃん、よだれ啜らないで!」


 はやてが叫ぶ。朝から元気ね。あたしは、もう……。あれ、さっきも同じようなことを……。


「これが無限ループの恐ろしさってやつね……」


「恐ろしいのは暗音ちゃんの頭の中だよ!一体どんな思考回路をしてるの?!」


 はやてが叫ぶ。朝から……


「ハッ、すでに無限ループ、だと……」


 あたしがそう言った瞬間に、はやてが、もう諦めたような目をしていた。


「もう、諦めるよ」


 否、諦めていた。


「暗音ちゃんを理解するのは、わたしじゃ無理だよぉ」


 理解しようとしていたのかしら?微塵もそんな気配が無かったのだけれど。


「それで、何の話してたんだっけ?」


「あれ、そういえば……」


 あたしとはやて、二人して話していた内容を、後の無駄な会話で忘れてしまったのだった。

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