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《神》の古具使い  作者: 桃姫
鍛冶編 SIDE.GOD
203/385

203話:荒唐

 突然だが、荒唐無稽(こうとうむけい)と言う言葉の荒唐(こうとう)と言う言葉の意味はご存じだろうか。荒唐無稽とは、もともとは、2つの言葉があったが、意味が近かったので統合されて、荒唐無稽と言う形になったもので、言うことや考えていることに根拠がなく、とりとめのないことと言う意味だ。


 荒唐とは、荒と言う字が「途方もなく広い」、唐と言う字が「ものすごく大きい」と言う意味をあらわして、荒唐となると「言うことに根拠がなく、とりとめないさま」と言う意味になる。


 はてさて、一体もって、なんでこのような話を始めたかと言うと、始まりは、あの日、テストの2日目、月曜日のことだった。土曜日の【幼刀・御神楽】、【神刀・里神楽】の件の衝撃も若干薄れてきた日のこと。それは突如として起こった。


――■■■■


 そんな声が頭に響いたと思ったら、俺は、気が付けば、よくわからない場所にいた。そう、荒唐無稽な話だろう。俺もそう思う。しかし、分からない場所にいるのは事実だ。


 そもそも、周囲は一般住宅で、到底、異世界に召喚されたとか、タイムスリップしたとか、そんなことではないのは確かだ。


 でも、その住宅街も、どこかおかしいように感じる。違和感を目で追って探すと……なるほど、花だ。花がない。


 もちろん、その花は女の子を指している言葉ではなく、そのまま花を指し示している。今は夏……冬ならともかく、一般的に玄関などを華やかにする花は、春夏秋には、基本的に飾ってあるものだ。それが一切ない。


 そういえば、犬小屋はあれど犬はいない。あまり見なくなったが絶滅したわけではない(たむろ)する猫も見られない。……生物が、いない?


 そうだ、生物とされるものが一切いないんだ。と言うことは人間もいないはず。なのに、なんで俺はここにいられるんだろうか。


 静けさが支配する空間に、俺は、一瞬、ある影を捉えた。人影……とは限らないが、確かに動体だ。機械、あるいは、人外かもしれないが、何かに会えるだけましだろう。


 俺は、急いでその影を追ってみる。誰でもいい、誰かいてくれ。


「あぁん?何だってんだ?」


 その声は、低い男の声だった。ガラの悪い男のような声。俺は、その声に向かって進んでいく。


「テメェ、何考えてやがる……?」


 誰かと話しているのか……。でも、相手の声は聞こえないな。電話、それともテレパシー……。


「んぁ?そこにいるのは誰だぁ?」


 俺のこと、だよな。出て行ってみようかな。別に怪しいことはしてないし、きっと大丈夫だよな。


「あの……」


 俺が出ていくと、そこには、1人の男がいた。染めたような雑な金髪、サングラス、そして、ピアス。


「ぁああん、んだ、ガキか」


 その男は、20歳くらいの青年だった。不良……なのか?でも、その辺の不良とはどこか違うようにも見える。


「えっと、あなたは……?」


 俺の質問に、男は、眉を吊り上げて、俺の顔を覗き込んでくる。ジロジロと品定めをするように、しばらく視線が続いた後、男は、口を開く。


「テメェ、……セトのところの《神遣者》じゃねぇのか……?」


 セト……?瀬戸?一体誰のことを言っているのかは分からないが、俺の知り合いにはいないな。俺が首をかしげていると、男は、ため息をつく。


「ったく、んで、テメェみたいなガキがこんなとこで何やってやがる。ここはガキの来るところじゃねぇーぞ」


 ボリボリと頭を掻きながら、サングラスの奥の眼を鈍く光らせて、俺の肩に手を置く。ギリギリと力が籠るが、特にそこまで痛いほどではない。


「なるほど、ヤワではねぇーわけか」


 何がしたいんだ、この男は。俺が疑問に思っていると、男が俺の背中を思いっきり叩く。パァン!と乾いた音が静かな世界に水滴が落ちたように広まっていった。


「へぇ、コイツでビクともしねぇのな。ガキはガキでも、まだマシな奴ってこった」


 何かを納得するように、男がそう呟いていた。俺は、ヒリヒリと痛む背中をさすりながら、男の正体をうかがう。【力場】を見るに、見た目通りの年齢だろう。特におかしな点はないはずだが、どうにもこの男には、違和感がぬぐえない。


「ガキ、テメェ、なんて名前だぁ?」


 男の問いがあまりにも唐突すぎて、一瞬意味が分からなかったが、名前を問われたのだと悟り、答える。


「青葉紳司……です」


 男は値踏みするように、俺の名前を考えていたが、ニヤリと笑う。


「なるほど、良い名前じゃねぇか。オレは、七上(ななかみ)晴臣(はるおみ)だ」


 七上晴臣と名乗った男は、俺についてくるように促した。どうやら七上さんは、ここらの……この空間のことを知っているようだ。


「テメェはどうやって、ここに入ってきた?」


 どうやって、って聞かれても返答に困るな……。この場合は、素直に言うのが一番だろうから、そのまま言うけど信じてくれっかな?


「気が付いたら、ここにいましたけど?」


 俺が恐る恐る言うと、七上さんは、「フッ」と笑った。その笑いは嘲笑とかではなく、予想通りと、ほくそ笑むような、そんな笑み。


「ヤッパ、テメェもその口か……。クッソ、あのアマ、次会ったらぶっ殺してやる」


 あのアマ……女、さっきのセトとか言う人のことだろうか。それとも別の……。とにかく、ここにはその人が関与しているようだ。


「まあ、いい。とりあえず、テメェを師匠(せんこう)のところに連れてってやるよ」


 先公……、教師?誰のことだろうか。この空間に、他に誰かがいるのは確かであるが、そのアマだのセトだのとは違う人物のようだ。






 たわいもない世間話に花を咲かせることもなく、しばらく歩いて行くと、どこからか、妙な笑い声が聞こえてきた。


「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!」


 息をつく間もな高笑いをする少女の声。その声に対する七上さんの反応をうかがうが、特に気にした様子はないようだ。ってことは、この人が、彼の言う先公のことなのだろうか。


「おい、師匠(せんこう)。馬鹿みたいに笑ってねぇで、この巻き込まれた奴をどうにかしやがれ」


 巻き込まれた……?俺は、何かに巻き込まれてここにいるってことだろうか。つくづく厄介ごとに好かれているな……。


「ハハハハハッ、ハッ、いや、失礼。中々に興味深い存在だったもので、つい、笑ってしまった」


 その体からにじみ出る【力場】は、並大抵のものではなかった。少なくとも、俺よりも強い……。姉さんと五分五分くらいの不気味なまでの強さ。


「それ、オレん時にも言ってやがったな」


 七上さんの時にも?でも、七上さんからは特に不思議な【力場】は感じられないけど。いや、もしかして、感じられないからこそ、なのか?


「そりゃ、そうさ。七上晴臣、君ほどの力を有しながら、それは一切【力場】を介さない、純粋なまでの身体能力なのだから」


 身体能力が高い……ってどのくらいなんだろうか。実際に見てみないと分からないけど、この異常な人が認めるってことは、かなり異常なんじゃなかろうか。


「ま、そんなことはおいておこう。初めまして、篠宮(しのみや)液梨(つゆり)だ」


 その姿を改めてみて、その腰に下がる剣が分かった。あの剣は、独特の力が秘められた連星刀剣だ。


五星剣(ゴセイ)……ッ!」


 この人も連星刀剣保持者の一人なのか。七星加奈、静、火雲、東雲楪。今分かっている4人の保持者の誰でもない、


「へぇ。刀剣の名前まで知っているということは知り合いに保持者(ホルダー)がいるのかな。その通り、これは連星刀剣の一振り、五星剣(ゴセイ)と言う」


 まさか、こんなところで、持ち主に会うとは。この人は何者だろうか。


「それにしても、保持者は、……夏桜(かざくら)じゃないだろうし、楪ちゃんか、それとも天使・静?」


 夏桜(かざくら)。知らない名前だけど、……もしかして、火雲の名前なのか?火雲夏桜、なんかしっくりくるな。で、天使静は、種違いの娘だ。


「七星加奈、それと静」


 俺の答えに、篠宮液梨と言う少女……見た目通りの年齢ではないので、女性って表現のほうがいいか。篠宮液梨と言う女性が、笑った。


「そう……そう!七星!将院(しょういん)を討ったあの子か!」


 将院。龍ヶ浜崎(りゅうがはまざき)将院。七星加奈が戦った《魔堂王会》の仲間、唯一人、行方が分からず、七星加奈がこの世界にいないと言っていた人物。


「あの子たちからは師匠、とか呼ばれているが、別にそんな呼び方はしなくていいよ。ナンバー5……と言う名前を名乗るのもどうかと思うけど。世界管理委員会、剣術師範兼No5」


 世界管理委員会……、姉さんからも聞いたことのあるし、それに七星加奈もあのとき言っていた。やはり、か。


「ぁんだか、よくわからねぇが、早く帰してやれよ」


 七上さんが、液梨さんに言った。液梨さんは、「ああ」と呟いて、七上さんに言う。


「悪かったよ。晴臣、君も帰っていい。もう、ここでやるべきことは終わった」


 片手にスマートフォン、片手にガラパゴスケータイを持って、彼女は笑いながら言った。てか、なんで2つも持ってるんだ?


「先ほど、鈴々(すず)から連絡があってね、彼女と要監視対象が世界を離れたから、その穴埋めにいかなくちゃならない。カグヤ姫の末裔とツインベルの行方末を見てみたかったんだけど、仕事が優先だかね」


 カグヤ姫の末裔……?よくわからないけど、結局、何なんだ、この人。そんな感じのことを聞くと、彼女は答えた。


「神に最も近く、最も遠い存在……。君とは違うのだよ。君は、神に最も近くて、やっぱり最も近い存在だから。そうだろ、蒼刃蒼天君」


 いや、青葉紳司だから。


「なりそこないの神様と、神になれる者……。君は、どちらだろうな」


 なりそこないの、神……。


「それと、1つ忠告するなら、【神魔刀・里神楽】を完成させることだ。それが、……神に……」


 その瞬間、目の前の風景が掻き消え、気が付けば元の教室に戻っていた……が、横には七上さん。結局、何だったんだ?

 え~、一週間で2枚レポートは鬼畜過ぎです。死にます。時間なさ過ぎて、これをあいた時間に書くのに3日もかかりました。

 また、しばらく間隔が空きそうですが、日曜に頑張って書こうと思います(レポートを……)

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