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《神》の古具使い  作者: 桃姫
龍人編 SIDE.D
193/385

193話:既にクリアされた第一の試練

 そうして、7人の第六龍人種が、扉の前へと集結したのよ。改めて集結したメンバーを記すと、あたし、青葉(あおば)暗音(あのん)、氷の第六龍人種(だとさっき聞いた)氷室(ひむろ)白羅(びゃくら)、紅炎龍ベリオルグを宿す朱野宮(あけのみや)煉巫(れんむ)、5匹の《コウ》龍をその身に宿した蒼紅(あおべに)瑠音(るおん)、【銀髪の雷皇女(らいおうじょ)】と呼ばれる細波(さざなみ)雷璃(らいり)、【黒髪の闇喰い姫】と呼ばれる闇羽(やみはね)黒霞(くろか)、天使と龍を宿している篠宮(しのみや)瑠葵(りゅうき)


 中々にそうそうたる面々ね。どうやら、瑠音と煉巫の間では、扉を調べているときに龍関係で何かあったようだけど、そこまで深く聞いていないわ。なんでも、煉巫の中の龍、紅炎龍ベリオルグと、瑠音の中の龍の1匹【紅龍王】ベルシャグリノスが、何やら、本体とクローンみたいな関係だったらしくて、一悶着って感じよ。まあ、大した騒動にはならなかったらしいけど。


 さて、こうして7人が揃ったわけだし、改めて自己紹介をしたところで、扉を開けることになったわ。なぜ自己紹介をしたかというと、あたしは全員に会っていたけど、瑠葵とかは、あたしくらいしか自己紹介してなかったからね。他の面々も互いに面識あったりなかったりだったし。いい機会だからまとめて、全員自己紹介ってね。


「さて、それじゃあ、いよいよ開けるわよ?別にディスペルもかかってないし、鍵もかかってないみたいだから簡単に開くはずよ。なんか、分厚いから防音とかはばっちりでしょうけど」


 簡単に言うなら、ここの部屋の壁並に分厚い扉よ。これだけ分厚ければ防音対策はばっちりと考えるべきでしょうね。中の音は聞こえないし、中からは外の音が聞こえないってことよ。まあ、それはそれで良し悪しあるけど。


――ギィイ


 そんな軋んだ音を立てながら、扉はゆっくりと開く。パッと見て、扉の向こうには、部屋の反対側にもう1つ。そして、右側と左側にも扉がある。右側の扉の奥からは、不気味に蠢く気配がしているわね。真ん前の扉の奥は何も感じない。左の扉からは人間らしき気配。


 どうやら、部屋そのものは食堂のようで、料理とかは何も並んでいないけど部屋の中央にザッと20人くらいが座れそうな長机があったわ。あまり趣味はいいとは思えない内装だけどね。まるで、龍の腹の中とでも言う感じかしら。柱は骨のような形だし、色は不気味……とまでは言わないけど、妙な感じ。そして、あちこちの装飾品には龍が象られている。西洋の龍から東洋の龍までそれは様々ね。でも、まあ、1つ言えるのは、気持ち悪いってことよ。

 とりあえず適当に席に着くあたしたち。全員が席について一段落ついたところで、少し慌てたように左、つまり、何やら蠢くのがいる方とは逆の方の扉が開いた。入ってきたのは一人の男だった。スーツのような感じの服に、サングラスという妙な格好、てか怪しさ満点の格好の男よ。


「これはこれは……」


 何やら驚いたようにあたしたちを見回す男。これは、やっぱり、ディスペルの扉を破ってきたからよね。本来なら、まだ、ここにいるはずはないのだから、驚いて当然よ。


「驚いた。まさか私のかけたディスペルの扉を破ってここに来る者が現れようとは……」


 結構ガチで驚いてるわね。つまり、破られることを想定していなかったってことよね。まあ、あたし以外にも雷璃とかなら壁をぶち破れてたから時間の問題だったかも知れんけど。


「いったい、誰が、どう破ったのか聞かせてもらえないだろうか」


 そんな風に、席に着き、顔の前で手を組みながら聞いてくる男。結構上から目線でむかつくわね。まあ、いいわ、答えてあげましょう。みんな、あたしの方を見ちゃってるしね。


「あたしが破ったわ。てか、ディスペルかけるなら、蝶番も忘れないほうがいいわね」


 その言葉に、「ほぅ」と本当に心底驚いたというようにして、あたしの顔を見ていた。そして小さく呟く。


「イレギュラー、か」


 その声は、あたしにしっかりと届いていた。でも、今の発言、あたしの行動がイレギュラーなんじゃなくて、まるで、あたしそのものがイレギュラーとでも言っているかのようね。


「招待した6人の龍を宿した者、そして、終焉の龍に導かれし少女よ。どうやら、本当の意味でのイレギュラーのようで、こちらも大変驚いている」


 終焉の龍に導かれた少女……?あたしは、周りを見回す、ババア、ババア、ババア、ババア、男、男、……あ、うん、あたしのことね。てか、女で唯一の普通の女じゃないのよ。あと、年食ったババアしかいないじゃないの。


「終焉の龍、ね。大叔母さんもなんでよりによってあたしなんかに押し付けたんだか……」


 聖大叔母さんも考えてることがよくわからないわね。終焉の龍とかいうとんでもないもの宿してるんだったら、自分で殲滅できるでしょうに。そもそも、終焉の龍ってのがいまいちピンってこないのよね。何よ、終焉って。

 まあ、それに関しちゃ、グレート・オブ・ドラゴン、夢幻刃龍皇ってのもよくわからないけど。


「大叔母、なるほど、あの蒼刃聖の関係者ということか。それなら、このイレギュラー性も納得が行くというものだ」


 くくっ、と含み笑いを浮かべる男。どことなく、不気味な雰囲気を醸し出すその様子に、眉根を寄せながら、この場の男の説明を待つことにしたわ。


「まあ、いいさ。では、少々イレギュラーも起きたところで、ここについて説明をしよう。ここは、龍の闘技場(ドラゴン・コロシアム)。龍の祭典、覇龍祭(ドラゴンフェスタ)の会場だ。私はこの場を取り仕切らせてもらう、……主催者(ホスト)とでも呼んでもらえればいい」


 覇龍祭(ドラゴンフェスタ)……ですって?何よ、そのよくわからない祭りは。そもそも、外の気配からして、物騒で野蛮なのは確定してるんだけど、嫌な予感しかしないわね。


覇龍祭(ドラゴンフェスタ)とは文字通り、龍の覇王を決める祭りだ。この祭りは、闘技場に巣食う龍と、16人の第六龍人種によって繰り広げられるもの……何だが、少々事情があって15人ということになっていてね。さらに、とある御仁に拒まれて、この通り、片腕を失ってしまったものでね、半数の7人しかいないことは申し訳ない」


 そう言って、義手の右手を見せる男。へぇ、拒否もできるのね。まあ、あたしも気を張っていた状況なら同じように手を切り落とせていたかもしれないわ。それにしても、その拒否した奴って何者かしら。相当な手練れよね。


「さて、さしあたっては、第一の試練と行こう。これをクリアできねば、君ら、全員は、永久にこの空間に閉じ込められることになる。そして、この第一の試練は、本来は、君たちのいた部屋、控室で行うものだったんだが、先に説明だけしておこう。

 あの部屋には小型の冷蔵庫が置かれていたはずだ。その冷蔵庫の中に、龍のためのものが入っている。それを確実に選んで取ってきてもらおう。外した場合は、何ともないこともあるが、少々苦しい思いをすることもあるかもしれない」


 あ、白羅は、失敗しそうだったわね。てか、それ、もう、クリア済みじゃないかしら。超ラッキーね。念のためにもってきておいてよかったわ。


「合ってるかどうかはどうやって証明するの?その場で飲んで証明しろってことかしら」


 あたしの問いかけに、主催者は、首を横に振った。どうやら、別に飲むまでもしなくても大丈夫みたいね。まあ、スライム以外は色で分かるし、スライムだったら、よく見ればわかるからね。


「その必要はない。持ってきたものは、こちらで用意したグラスに注いでもらう、それだけで正解、不正解は分かる」


 そう言って、あたしたちの前にグラスが現れた。手品、の類じゃなくて、機械の類ね。この机にもいろいろ仕掛けがあるようよ。まあ、その辺は、一々暴いていても仕方がないんだけどね。


「では、さっそく、移動をしようか」


 主催者がそう言ったので、あたしは、左手で皆に待つように指示をするわ。そして、白羅に言う。なお、瑠葵の部屋の分は、あたしの足元、他は、全部白羅の足元に置いてある。


「白羅、あんたに持たせておいたペットボトル、全員に回してちょうだい。1個余ったのは、あんたがまだ持ってって。で、配られたら、全員、それをグラスに注いで」


 あたしの指示に、よくわからなさそうに、みんなが従った。そうして、全員のグラスに龍の瞳の雫が注がれた。透き通るような蒼透明のドリンク。どれ1つスライムなどではなく、本物よ。


「さあ、あなたのご所望の第一の試練で取ってくる龍の瞳の雫はこうして全員が選んだわ。先に言わせてもらうと、あなたの言う第一の試練は、始まる前に終わっていたのよ」


 ドヤ顔で言い放つと、男は、若干狼狽していた。まあ、流石に、これは偶然なんだけどね。てか、いまどき、こんなもの全然主流じゃないから、ほとんどの人が知らないでしょうね。だって流行ってたのあたしの時代なのよ?


「ふはっ、君は本当の意味で凄いイレギュラーだ。恐ろしいものだよ、本当に」


 あらあら、ほめてくれてありがとう。それで、この後は第二の試練かしらね。おそらく、第二の試練は、外のあれと戦わされるんでしょうね。おそらく、雑魚とはいえ、かなりの数いるみたいだし。


「それで第二の試練は、630匹くらい雑魚龍を屠ればいいってことかしらね?」

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