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《神》の古具使い  作者: 桃姫
龍人編 SIDE.D
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189話:龍の集う場所――コウの龍

 あたしは、面倒だと思いながらも、仕方なく部屋の順番を説明することにしたわ。いえ、それほど面倒ではないんだけどね。ここから、なんで、そういう順番にしたの?なんて話やこっちのほうがいいんじゃないって話が始まると、まず面倒なのよ。だから、基本的に自己完結無説明をもっとうにしてるのよ。


「こっちの列の端から1でこっち側に来るにつれて2、3、4。1の対面が5、あとは同じように6、7、8よ」


 あたしの言葉に、「ふぅん」と声を漏らす白羅。煉巫は、ドアの外をのぞいて番号を確認してるみたいだった。


「普通にコの字を書くみたいなナンバリングでもよかったんじゃないの、とかいろいろ言いたいことはあるけど、うん、特に何も言わないわ」


 言ってんじゃないのよ。まあ、別にそれで番号を変えようなんて思わないけど。まあ、もっとツッコまれるかと思ってたけど、思いのほかマシだったわね。


「まあ、清二で妙なことには慣れてるし、ツッコんでも無駄だって知ってるしね」


「ええ、そうですわね。どうせ直しませんしね」


 などと2人は言うのだった。ああ、なるほどね、おじいちゃんもそんな感じだったってことなのね。まあ、遺伝っていうか、環境っていうか。まあ、それで慣れてるんだったら楽でしょうけど。ああ、なるほど、白羅があたしについてきたのも、おじいちゃんといる感覚だったからってことね。いろいろと納得がいったわ。


「ったく、おじいちゃんは、中々に性格に難ありね。ま、あたしが言えた義理じゃないけど」


 その言葉に「ええ全く」とでも言わんばかりに2人が頷いた気がしたけど見なかったことにしたわ。あたし、おじいちゃんがどのくらいだったのかは知らないし、あたしにそっくりってわけじゃないんでしょうし。


「それで、次はここの向かいの部屋ってことにしたけど、まあ、敵がいる可能性や罠がある可能性も否めないけど、なんとなく、それはないと思うわ。てか、ここまででなんとなく気づいたけど、これ、本来は、その時が来るまであたしらが出れないようにするためのディスペルの扉だったみたいね」


 あたしは裏技ってか、ミスを見つけて、それを覆したけどね。ようは、ロープレで本来は、時間経過かなんかフラグ立てないと出られない部屋からバグでなみのりだの話すだののアクションをしちゃって出ちゃったってところね。問題は、これで、もう二度とフラグが立たないだの元の場所に戻れないだののパッチを当てないとまずい様な事態か、最初からにしないとダメな事態に陥ってないことを祈るばかりね。


「罠らしい罠は、冷蔵庫のスライムボトル……あ、そだ、ついでに龍の瞳の雫を回収しとかないとね。あー、面倒」


 そう口に出しつつ全ての龍の瞳の雫を回収して、手元には4つになったわ。4つ……ペットボトル4本。凄い量ね。とてもじゃないけど、あたしのいた時代じゃ手に入れられないわよ。まあ、これの価値が分かっているからこその、スライムんボトルのフェイクの中にこれを入れているんでしょうね。


「さて、と、お次は何がいるのかしらね?」


 マジもんの八大龍王とか出てきたら、さすがのあたしも、本気でぶった切りに行くけどね。龍も龍でいろいろいるからね。


「おじゃましまーっす」


 扉を蹴破って室内に侵入すると、見知った顔があった。八大龍王じゃんなくて、5匹の龍を宿した男だか女だかよくわからん奴、つまり……


「瑠音じゃない」


 蒼紅瑠音だった。あたしと、さっき……つまり、この得体のしれない場所に来る前に顔を合わせていた人物よ。懐かしいというほど時間が経っていない、つまり、さっきぶりのこの人物に、再会したことになるんだけど……。


「青葉暗音さん。まさか、よもや、こんなところでも会うことになろうとは……」


 ん、こんなところ?ってことは瑠音はここが何だか知ってるって考えていいのかしら。それとも、何か別の意味でもあるのかしら?まあ、その辺はどうでもいいわ。


「あなた、口の周りにソースついてるわよ。さっきのステーキのね」


 なんて軽口をたたきつつ、冷蔵庫から水を取り出して瑠音に投げて、龍の瞳の雫を回収する。それにしても、冷蔵庫には手を付けてないわね。白羅ぐらいなのかしら、冷蔵庫を簡単に開けるような馬鹿は。まあ、そんなことはどうでもいいんだけれど、結局ここはどこなのかしらね。異世界にでも召喚されたのかしら、それとも転移?魔王でも倒すのかしら、それとも死に戻りまくって運命のあの娘を王様、ってことかしら。どっちにせよ、あたしは御免だけどね。


「六人の魔女の話でも始めるつもりか?」


 六人のマゾ?そんな変態の話はしてないわよ。急に何のよ、グラムってば、時々変なことを言うわよね。


「六人の魔女だ。とある伝承でな。とある世界の6端に6人の魔女が封印されて666年の時が経つと、魔女を解き放つ英雄が現れるというな」


 魔女って基本悪者でしょうに、それを封印から解き放つってことは、英雄じゃなくて悪魔とか反逆者の類でしょ。そんな訳の分からん御伽噺よりも、第六龍人種ばかり集められているこの場所が何なのかって話よ。第六龍人種ってことにそれなりの意味があるってことでしょうけど、それだけじゃ何も判断できないしね。


「ねえ、ここが何の施設だかわかる?」


 念のために瑠音にそう問いかけてみる。まあ、答えなんて期待しちゃいないんだけどね。そもそも答えを知っていそうにないじゃない。事前情報があるなら、不知火の家で言ってくれてもいいだろうしね。なのに、何一つ言われなかったってこと、それに、こんなところで会うとはって言葉を考えると、何も知らないんじゃないかしら。もしくは、この場に呼ばれることは知っていてもあたしが来ることは知らなかったってことかしら。


「さあ、そこまでは。近々厄介ごとに巻き込まれるとは瑠音(りゅうね)から聞いていたんだけど、まあ、本当に厄介ごとなのは確かだよ。だって、僕と瑠音が完全に分離した状態にあるのだから。きっと、あのパーティの席に、瑠音が残ったままのはず。パッと見て行方不明なのは君だけだよ」


 なるほど、分離しているってことは、無理やり引っ張ってこられたってことで、どうやら、本当に厄介極まりないわけね。で、瑠音(りゅうね)のほうが知ってたってことは、どうやら、神託ってので今回の騒動が分かってたんじゃないのかしら。チッ、なんで一緒に連れてこないのかしらね。


「でも、少しおかしい気がする。僕がしばらく帰れない、ってことは、ここでは普通に時間が経過するとみてもおかしくないはずなのに、おそらくここは外界と時間の感覚が隔離されている気がするんだよね。まあ、その辺はどうなるか分からないから考えても無駄かな」


 時間が隔離……、まあ、よくわからないけど、あたしとしては、ここがどこだかわかるってのが一番ありがたい情報だったんだけどね、分からないなら仕方ないわ。


「まあ、そんな下らんことよりも、今は、ここがどこかの解明と、どうやって出るかの解明よね。まあ、何事にもお約束ってのと、現実ならではの理不尽と、現実だからできることってのがあるもんよ」


 何を言っているか、ってのは、さっきの、フラグ立てないで外に出ちゃってどうにもならないってことに関してよ。


 お約束ってのはフラグを立てたり、都合よく物事が運んだりすること。で、現実ならではの理不尽ってのは、お約束がそうそう起きないってこと。そんでもって現実だからできることってのは、それを逆手に取ったルール無視。


 順を追って説明するわ。お約束……、この場合は、あたしたちが閉じ込められていたディスペルの扉。参加者が条件を満たすまで出られないってのは、いかにもなお約束よ。そして、どこからともなく、気づいたらあんなところにいるってのもお約束1つ。そして冷蔵庫に罠ってのもお約束ね。

 それで、現実ならではの理不尽ってのは、あたしのような問題外の……つまり主催者側の意図しない行動をとるイレギュラー(あたし)のこと、もしくは、あたしの行動で起こらなくなったかもしれないイベントのこと。

 そして、現実だからできることってのは、そうね、今、あたしがやっている行動とでも言い換えましょうか。そうね、これだけは、ゲームに例えると分かりやすいものがあるかしら。例えば、紳司がたまにやっているようなギャルゲー、もしくは、クラスの女子がやってるような乙女ゲーによくある選択肢というもの。あれは、ゲームだと、一度選べば、セーブからやり直したり、前の選択肢に戻ったりしないと選びなおすことはできないわよね。でも、現実であれば、その選択肢の1つをひょんなことで変えられるわ。

 今から「図書室へ行こうかな」という選択肢でも現実なら「やっぱ、教室にいよう」に変えられるし、「遊びに行こうよ」と言われてYes/Noの二択でも、「うん、いいよ」ってYesの選択肢をした後に、「あ、ごめん、そういえば、今日は別の約束があったんだ。また今度誘ってよ」ってNoの選択肢に変えられるでしょ?そういうことよ。


 つまり、フラグを立ててなくても現実なら、ある程度どうにかできるってことよ。なら、できるだけ戦力は揃えておきたいじゃないの。んじゃ、そろそろ、隣の部屋でも開けに行きましょうかね。てか、扉のところでボーってしてるなら、煉巫も白羅も隣の部屋を開けにいけばいいのに。


「暗音様のお知り合いなのかしら」


 煉巫はそんなことを言いながら瑠音を見ていた。そして、白羅はチラチラと隣の部屋のほうを見ている。うん、見ているだけ。だから開けにいけっつってんのよ。


「あら、白羅、どうかしましたの?いつも以上にバカみたいな顔をして」


「うん、実は、隣のほうから感じたことのある気配が……って、いつも以上にバカみたいな顔ってことはいつもバカみたいな顔してるってことかしら?!」


 事実じゃないのよ。何を怒ってるのかしら、白羅ったら。そんなことよりも、感じたことのある気配が、まさか大叔母様じゃないわよね。


 そんなことを思いつつ、あたしは、瑠音を連れてこの部屋を出ようとして……。

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