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《神》の古具使い  作者: 桃姫
龍人編 SIDE.D
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186話:プロローグ

SIDE.HOST


――さあ、いよいよ、開幕の時だ


 私は、覇龍祭(ドラゴンフェスタ)のという、この祭りのために生まれてきて、それを準備し、主催することだけを生き甲斐とするもの。主催者、すなわちホストだ。


 何年も、いや、何十年も、いや、何百年もこの時を待っていた。生まれてから、ずっと、ずっと、ずっと、この時を待っていたのだ。


 覇龍祭(ドラゴンフェスタ)、龍の祭典、龍の宴、様々な呼ばれ方をするが、簡単に言ってしまえば、龍が一堂に会するものだ。その壮観な様子を頭の中でずっと思い描きつけていた。もうすでに龍たちの準備はしてある。


 腕羽竜(ワイバーン)角無竜(ノンホーンドラゴン)などの木端な龍はもちろん、名だたる龍も集めたつもりだ。問題は、彼らだけでは、この祭りは開けないということなのだよ。


 だから、私は主催者(ホスト)として、この祭りの出演者にふさわしい面々をこの場に呼ばなくてはならないのです。そう、龍なるものをその裡に宿して生まれた覇者たる人間、第六龍人種たちを。


 では、まずは、彼に呼びかけてみましょうか。私が最も出演を願う、彼ほどの人物が入れば、この祭典の成功は間違いないと言い切れる存在に……。


 時空の穴へと手を伸ばす。そこから、彼を引っ張ってこれれば、成功だ。彼もまた、今は単なる異界の高校生にすぎない。ならば引っ張ってくるのは簡単だろう。


――シュバッ


 そう踏んでいたのに、私の右腕は、瞬時に「消滅」した。まるで、分子レベルに分解されたかのように消え去ったのだ。

 こんな情報は、私の集めた資料には乗っていなかった。彼の情報は、できる限り集めたというのに、まだ、こんな隠した手があったということに驚きながら、もう、彼を呼ぶのは諦める。もとより、彼の中の氷龍「ガルディア」に腕を凍らされることくらいは覚悟の上だったが、まさか、消されるほどとは……。流石は、最強の血統種ですね。


 しかも、腕が半分に減ったことで、連れてこれる人数までもが減ってしまいましたが、そこは致し方ない。両腕が消失しなかっただけましだと考えよう。


 風龍「テリューズ」、炎龍「バスティカ」、時間龍「サージャス」は諦めるとようか。風龍と炎龍の代わりはいますからね。まあ、風龍のほうはこれからだいぶ先の時間から引っ張ってこなくはなりませんけど、そこはどうにかしよう。


 さあ、続いては、雷龍と闇龍。雷龍「アーレオス」と闇龍「レミダス」、この2匹の龍は、中々に引っ張ってくるのは難しいと踏んでいましたが、予想以上にあっさり引っ張ってこれましたね。銀髪の雷皇女と黒髪の闇喰い姫。この2人がいれば、十分に盛り上がるだろう。


 呼び出した2人は、控室に移し、次なる龍を宿す存在を呼び出す。続いては、氷龍「ナルディア」と、そして……紅炎龍「ベリオルグ」。先ほど言っていた炎龍「バスティカ」の代わりでもあり、最強とうたわれる紅炎龍「ベリオルグ」、氷龍「ガルディア」とは双子だとうわさされている氷龍「ナルディア」。この2匹も何としても手に入れたい。

 こちらも何とか引っ張ってくることができた。龍神の子の1人で白金の美姫と紅蓮色の緋姫、どちらも強力だからありがたい。


 こちらの2人も控室に移動させ、そして、さらなる龍を呼び出す。続いては、風龍「マリューシカ」。少々厄介なことに、少し先の未来に存在するが、呼び出せる……はず。かつて、神の御使い【彼の物を破壊する者(ラシオン)】が、時間を越えて出現してしまうという怪現象が起こった。それを、その穴を利用すれば可能なはずだ。


 私は精一杯手を伸ばす。未来にも届くように、ひたすらに手を伸ばし、そして、たどり着く。よし、これで……


――へぇ、面白いことをたくらんでいるようではないですか


 ゾッとした。全身に寒気がよぎり、思わず手を放し、ひっこめたくなるような衝動に駆られるくらいに。男とも女とも子供とも大人とも老人とも取れる、奇妙な声。その声は、一体……


――マリューシカの子を連れていくのは構いませんが、いざとなれば、何が起こるか、その保証はしませんよ?


 この存在は、一体、何なんだ。この威圧、まるで、神のような……いや、神ではない、しかし……。その存在が、消えるのを確認すると、私は、思わず座り込んでしまう。もしかしたら、私は、とんでもないものを呼び出してしまったのかもしれない。


 だが、そんなことではこれをやめることはできない。呼び出した風龍の少年を控室に入れると、難関である5龍の彼を呼び出すことにする。

 本来、第六龍人種とは、その身に生まれついて1体の龍を宿したもののことを指す。けれど、稀に、その身に数体の龍を宿す、奇跡に見舞われるものもいる。そして、史上、最も多くの龍をその身に宿したのは、5匹。動物一族と揶揄されることもある蒼紅家。その中でも、蒼紅ミララ、蒼紅龍麻、蒼紅瑠菜、蒼紅瑠音。彼ら、彼女らだけはコウの音を名乗る龍王を5匹もその身に宿していた。


 だからこそ、私は、その5匹を宿した人間をこの祭典へと正体する。そうすれば、大いに盛り上がるだろうから。さあ、手を伸ばして、……


 掴んだ。これならば、きっと……


 そう、きっとうまくいく。私はそう思い、引上げ、成功した。5匹の龍を宿す青年を呼び出せたのだ。


 彼を控室に移して、最後の呼び出しを始める。彼女を呼び出すことができれば、最初の彼がいなくても、まず、成功は間違いないはずだ。いや、もう、彼女を呼び出さなくても成功の可能性は十分に高いのだが。


 そんなことを考えながら、最後の1人、……いや、精霊と呼ぶべきか、彼女へと手を伸ばす。終焉の龍「ジ・エンド・オブ・ワールド」へと。


――スッ


 何かによって、運命を改竄されるように、私の伸ばした手が、別の方向へと捻じ曲げられた。まるで、何かが私を呼んでいるかのように……。


 そして、何かを掴んだ。掴んでしまった。もう、これ以上、別の何かを呼ぶことができない。つまり、終焉の龍「ジ・エンド・オブ・ワールド」を呼ぶことには失敗してしまったのだ。これも、終焉の龍「ジ・エンド・オブ・ワールド」の策略か、仕方がないので、掴んでしまったものも控室に移す。


 さて、これで人数はそろった。7人の第六龍人種と、10匹の龍がこの地に舞い降りたのだ。最強と思しき2人は呼べなかったが、それでも、これだけいれば、十分だろう。


 だから、これをもって龍の祭典、覇龍祭(ドラゴンフェスタ)を開宴しよう。







 この時、私は気づいていなかった。私が最後に掴まされたそれが、どんなに恐ろしい存在だったのかを……

 え~、ということで、龍人編SIDE.Dです。最初の彼に関しては、なんとなくわかってしまった人も分からない人も、まあ、関係ないので気にしないでください。

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