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《神》の古具使い  作者: 桃姫
龍神編 SIDE.GOD
183/385

183話:密やかな集まり

SIDE.Crimson Princess in Blaze Dragon


 (わたくし)朱野宮(あけのみや)煉巫(れんむ)は、旧知の面々を集めて茶話会を催していましたわ。集まっている面々は、私と白羅さんと秋世さんだけでした。まあ、もとより、初期の《チーム三鷹丘》に参加していたメンバーで私以外に、今ここにいるのが彼女たちだけなので仕方がないことなのでしょうけれど。


 そもそも、初期メンバーと言っても、清二(せいじ)様、美園(みその)様、彼方(かなた)さん、秋世(あきよ)さん、真琴(まこと)さん、久々李(くくり)さん、恵李那(えりな)さん、私、アリスさんくらいで、あとは、一応、龍神さん、深紅さん、立原夫妻などもメンバーとして数えられていますが実質協力者という肩書ですので。

 第二世代、という言い方も適当ではありませんが、メンバーが次により多く加わった時期なので、そのように表記させてもらいます。その第二世代の王司(おうじ)様、紫苑(しおん)様、ルラさん、真希(まき)さん、祐司(ゆうじ)さん、八千代(やちよ)さん、サルディアさん、愛美(まなみ)さん、彩陽(あやひ)さんたちは、私たち初期メンバーとはあまり縁がないといいますか、協力はし合いますが、そこまで親しくないのです。


 と、そのような話はあまり関係ないのですが、まあ、この茶話会は、どちらかというと《チーム三鷹丘》の話ではなく、別の話をする目的で集まっているのです。

 その話のネタというか、肴というか、……という言い方はあまりしたくはないのですが、紳司様の話です。


 ここの面々は、こと、紳司様と暗音様のことはほとんど知らないのです。特に秋世さんは暗音さんのことすら知らなさそうな感じでしたから、暗音様の話はさておき、ここでは紳司様の話をすることにしたのですわ。


 そもそも、私たちは、紳司様の出産には立ち会っておりませんし、本当に双子として生まれたのかも実のところ知りませんの。王司様、紫苑様、暗音様、紳司様の証言を元にそう判断しているだけに過ぎませんわ。


 ただ、私は、紳司様が炎と魔力を自らの身に吸い込める力を持っていること、しかもそれが《古具》ではないことを知っているのです。ただ、私が知っているのは、これだけ。もしかしたら、他にもっと、何かあるのではないでしょうか。そう思って、ここに集まったのです。


 他の2人もどこか、思うところがあったのでしょう。だからこそこうして一堂に会すことになっているのですから。特に秋世さんは、紳司様にぞっこんのようですからね。割と秘密にされていることがあるのには気づいていても言い出せない、というようなところではないのでしょうかね。

 さて、そろそろ、お茶も行き渡ったところでしょうし、話を始めることにいたしましょうか。


「では、話を始めましょう」


 私の合図とともに、話し合いが始まりますわ。まあ、まずは、主催の私が話題を提供しなくてはなりませんわね。


「まず、紳司様は、《古具》に開花していらっしゃるのでしょうか」


 紳司様の姉君であらせられる暗音様は、きっちり開花していましたし、三鷹丘学園の生徒会に所属し、幾度かの死地を乗り越えていらしているはずの紳司様が《古具》に目覚めていないのは奇異なことだと思いませんかしら?


「本人は、まだ開花してないって言ってたし、市原会長もファルファムさんも見たことがないって言ってましたよ?」


 秋世さんがそんな風にいいますわ。ですが、それはあくまでその2人が見ていないだけではありませんの?


「あれ、じゃあ、静巴さんは見てないっては言ってないのよね?」


 白羅さんが秋世さんに質問しますわ。そうですわね、なぜ、先ほどの2人だけに聞いた答えを言ったんでしょうか。それはすなわち、静巴さんは別の答えを言ったということではありませんの?


「秘密、って言われましたね」


 それは、静巴さんだけが知っている秘密があるということでしょうか、それとも秋世が紳司様を意識していることを知っているからこその精神攻撃という可能性も捨てきれませんわね。


「つまり、静巴さんは何かを知ってるんではありませんの?」


 そう問いかけてみますわ。これで秋世さんに思い当たる節でもあれば、静巴さんは前者の可能性が高くなるのですが……


「う~ん、静巴さんは、たぶん、紳司君と秘密を共有しているんですよね。それが私には何か分からないんですけどね」


 そういって、お茶を一口飲む秋世さん。やはり、静巴さんは、紳司様の何かを知っていることになりますわね。でも、それは、私の知っている秘密とは別の秘密ですわ。なぜなら、紳司様は、「誰も知らないから」と私に言ったのですもの。知っている人物がいるのなら、「あまり知られたくないから」というはずですわ。


「気になること、と言えば、さっきの鍛冶場に入る前の映像を見てた紳司君の様子、見てた?」


 白羅さんの問いかけ。それに私は静かにうなずきますわ。ええ、当然見ていました。どことなく懐かしげな様子で映像に見入る紳司様の姿を。


「彼は、あの映像の女性を知っていたんじゃないの?」


 その言葉に、どことなく、ぼんやりと考えていたであろう秋世さんが「あっ」と声をあげました。


「そういえば、彼、あの鍛冶場の出し方を乗った本を見て『ナナナの約束……。聞いたことないが』って言ってましたね。表紙だけで普通はそれを判断できないんですよ。フィクションか、ノンフィクションかも明記されていなくて、『剣舞大国(アルレリアス)宮廷魔術師の大いなる約束』とナナナ・ナルナーゼという著者名が書いてあるだけですから。つまり、あの著者ナナナという人物と、ホログラムの女性を知っていたってことじゃないでしょうか」


 確かに、そう取れなくもない発言ですね。……そういえば、確か、あの時、秋世さんは「紳司君がパスワードを唱えたら赤い怪物が現れて紳司君が交戦中」と言っていましたわね。


「そもそも、扉のパスワードを、なぜ解けたんですの?」


 秋世さんが知っていたというよりは、紳司様がパスワードを知っていたかのような言い方なのでそこが引っ掛かりましたの。


「あ、そういえば……。ホログラムでも『私のかつての名前』と言ってましたけど、えーと、紳司君はなんて言ってたんだっけ……。う……う……、『う』から始まったのは確かなんですけど、4文字と3文字の組み合わせで……。

 思い出せませんけど、4文字と3文字の組み合わせなんてそこらじゅうにごまんとあるのに、その中から、ピンポイントでそれだけを選べるはずがないんですから、紳司君はあのホログラムの女性を知っていたんですよ」


 「う」から始まる4文字の苗字と3文字の名前……確かに知りでもしない限り、即答は無理ですね。そもそも、その「う」すらも本来は分かっていなかったんですし、ヒントが1つ与えられた私たちに分からないものをノーヒントではいくら紳司様でも答えにたどり着けるはずがないのですわ。

 いえ、そういう《古具》という可能性も無きにしもあらずですわね。答えを見通す《古具》ないし全てを知る《古具》などと言う可能性もないことにはないと言い切れませんが、おそらくは違うでしょう。


「でも、それが秘密と何の関係があるのかしら。まさか、そのホログラムの女性と直接の面識があったわけでもあるまいし」


 その言葉が頭のどこかで、ある可能性を私に導きださせますわ。そう、王司様と紫苑様、この2人と同じように……


「まさか……」


 そもそも、それは限りなく難しいものだと聞いていました。ですので、王司様と紫苑様の2人がそのような状態であると聞いたときに、私の中の龍は大層驚いていたのです。


(ああ、確かに驚いたな。転生というものを目の当たりにしたのは初めてだったからな。転生というのは不可能ではないが、魂量数値という概念が密接に関わり、近親、それも双子など以外での転生確率は限りなくゼロに等しい。ただ1人、天辰流篠之宮神を除いてな。だが、稀に起こることもあると聞く。その貴重な例を見たが、さらにその子もなどと言う話は到底信じられない)


 と私のなかの龍……紅炎龍にしてムスペリア神話のムスペル12神が柱でもある龍神、紅蓮の王がその身に封じ込めた最悪の龍、ベリオルグがそういったのですわ。

 ですが、可能性としては尤も高いと私は思いますの。それなら、静巴さんの知っている秘密、というのにも納得がいきますわ。


「まさか、何ですか?」


 秋世さんが、言葉が詰まった私にその続きを促してきました。私は意を決して、それを告げます。


「もしかしたら、紳司様は王司様や紫苑様と同じく転生者かもしれない、ということですわ」


 そう、それならば、あの魔力と炎を吸う謎の力も前世の物として納得ができますし、それを私で実験したのなら、その力が戻ったのはつい最近ということなのでしょう。


「そして、おそらく、静巴さんも転生者。紳司様と同じ時代の人間ということなら納得がいきますわ。

 あの鍛冶場に入ってきた静巴さんは『入り口に散っていた魔力残痕は、――アルデンテ・クロムヘルトのもの、でしょうか』と言っていましたわね。そのアルデンテ・クロムヘルトなる人物は、おそらく状況考えると、ホログラムの女性のことでしょうし、その問いに、紳司様は『ああ』と応じています。つまり、あの2人には、あのホログラムの女性に対する共通見解があったということになりますわ。

 ホログラムの女性アルデンテさん、本の著者ナナナさん、そして紳司様と静巴さんの前世が同じ時代を生きていたらすべてに納得がいくんですのよ」


 私の説を聞いた2人は何とも言えない顔をしていらっしゃいましたわ。おそらく、それはあり得ない、とベリオルグと同じことを考えているのでしょう。


「とりあえず、その意見は保留ということで、他に何か、紳司君のことでわかることはあるかしら」


 白羅さんが、勝手に私に代わって仕切り始めます。な、なんで、勝手に仕切っていらっしゃるんですのよ。


(当然の結果だろう?)


 ちょ、ベリオルグまでもそんなことを言うんですの?!


 私の説、自信がありましたのに、誰も信じてくださいませんでしたわ。


 そうして、紳司様の話をしながら、話を続けます。気が付けば、飲み物はお茶からビールとワインに、茶話会は飲み会に変貌していた、と気づいたのは、次の日の朝になってからでしたわ。

 え~、秋世と白羅さんの口調は非常に近いのですが、2人が互いに話すときは、白羅さんが年上なので秋世は敬語を使うのでどちらか分かりやすい、と思います。

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