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《神》の古具使い  作者: 桃姫
龍神編 SIDE.GOD
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179話:銀朱の女と約束の時

 白羅さんのところから、またも、いろんなところを経由して、秋世のいるであろう、氷龍の部屋2にへと向かっていた。隣の氷龍の部屋には、由梨香がいて、由梨香がトレーニング計画を立てているはずだ。早いところ由梨香に会いたいが、秋世が拗ねるとあれだから、会いに行ってやろう。べ、別に会いたいとか、そんなんじゃないんだからねっ!


『主よ、それは『つんでれ』というやつではあらんか?』


 ヒイロにそんなツッコミを入れられた。いや、ツンデレじゃないっての……ほんとだよ?ま、まあ、顔を見せないと拗ねるから、そうなると面倒ってだけで、べ、別に、秋世に会いたいわけじゃねぇし。


『信兄ぃ、素直になろうぜィ?』


 うるさいやい。俺は、素直だっつの。それにしても、秋世に会う前に、龍神にでもあって鍛冶のできるスペースがないか聞いてみようかな。もう1振打っておきたい刀がある。正確には、それを打つことはできないが、その名を継いだ刀を打つことができるだろう。

 【幼刀(ようとう)御神楽(みかぐら)】、それと対になるが、しかし、途中までしか打てなかった。それが心残りなんだよな。


『さとこのことですね。それが気がかりなのはわかりますが、おそらく、もう、この世には現存していないかと。又聞きした情報だと、【幼刀(ようとう)御神楽(みかぐら)】はどこかに封印された可能性はありますが、おそらく、そちらは破棄されたかと』


 ……そうか。【幼刀(ようとう)御神楽(みかぐら)】は、封印されているにしても、あっちはダメか。仕方がない、と言いたくないが、仕方がないんだろう。あの、【神刀】は……。


 俺は、最後まで、あの刀を打とうとした。けれど、打てなかった。(しん)はおそらく、俺の物には手を出さなかったのだろう。静葉は俺よりも先に亡くなったし。紳が手を出さないのなら、弓歌ちゃんも手を出さなかっただろう。


『まあ、御館様も、お気になさらずに。あの子も、打掛とはいえ、打たれ、生まれたことはうれしかったでしょうから』


 うれしかった……、か、本当にそうだといいな。あの刀は、打ち終わる前だったから【精霊神界】であの子に会うことはなかった。だが、確かに、あの刀には、マー子が言う「さとこ」という存在が、マー子やヒー子、ヒイロ、ヨー子のように存在していたのだろう。彼女に会うことはかなわなかったが、会ってみたかった。


『会ってみたかった、ですか。御館様は、やはり、刀であるわたくしたちに愛情を注いでくださるのですね』


 ん、そりゃ、まあな。この世界、いや、この世界に限らず、どこの世界にも、刀や剣は、所詮人斬り包丁で、ただの人殺しの道具でしかない、という人間は多くいる。そして、その刀を造る俺たちは、人殺しの仲間ってな。

 だが、じゃあ、銃を開発した人は人殺しの仲間だろうか、それは違う。しかし、俺は、そう言う気はない。確かに俺たちが造っているのは人殺しの道具だし、その道具で人は死んでいるかもしれない。


 だが、言わせてもらうなら、俺が打っているのは(かたな)道具(かたな)ではない。……なんで娘に限定してしまったのか。


『そら、息子は下のほうに……』


「ヒー子?!」


 ヒー子がとんでもないことを言い出したので、慌てて叫んでツッコんでしまった。しかし、いろんな意味でびっくりだよ!


 まあ、愛着が湧くという意味では、息子よりも娘のほうが見合った呼び方なのだと、俺は思う。決して、息子はすでについているとか、刀の精がすべて女だから、とか、そんな理由ではない。愛娘(まなむすめ)とはよく言っても、愛息子とはあまり聞かないだろう?


 さて、そんな話をしている間に、秋世のいる氷龍の部屋2にたどり着いたのだ。さて、入ろう。どうせ、さっきみたいなイベントは起こらないだろうし、気にする必要なんてないんだ。


――ガチャ


 ドアを開けると、そこには、全裸の秋世がいた。てか、全裸でボリボリと股を掻きながら、胡坐(あぐら)で本を読んでいた。……なんというか、非常に反応に困る。あれだ、漫画やあれな動画によくある、女性が裸に見える眼鏡をかけて、女性の変なしぐさの全裸状態を見てしまった時のような何とも言えない感じだ。ようするに微妙な気持ちとしか言えないのだが、はてさて、どうしたものか。


 俺に気付いた秋世は、羞恥に頬を赤く染め、股を閉じるのも忘れ硬直してしまっていた。いや股閉じろ。大事なところが丸見えだ。どこ、とは明言しないが大事なところだ、察せ。


 ふむ、硬直すること1分。俺の目には、しっかりと秋世の裸体が焼き付けられた。秋世は、わなわなと震えだしてやっと、股を閉じて、胸を手で覆った。しかし、中途半端な体育座りみたいな閉じ方をしたせいで、まだ見えるという……。ちゃんと閉じろ!


「ななな、なー!」


 な、しか言ってないな、秋世。壊れたレコーダーみたいだ。……レコーダーって言葉通じるのかな?いや、ICレコーダーとか売ってるし、スマートフォンでも似たようなことができるからわかるか。なお、ICレコーダーのICは集積回路のことで、ハードウェア技術や電子回路などを専攻していると習うと思うが、フラッシュメモリなどでも使用されている。大規模集積回路(LSI)が一般に普及しているので、小規模(SSI)中規模(MSI)超大規模(VLSI)などの集積回路は現在、ほとんど使用されていない。電子機器の基盤なんかを見たことのある人には、四角形の小さな箱からムカデのように左右対称に何本か足が出ているのを見たことはないだろうか、それが集積回路だ。いや、断言はできないし、似たようなパーツはいっぱいあるけどな。


 というか、なんでICの話なんかをこんなにしているのか、と言うと、目の前の秋世の痴態から目を逸らすためである。現実逃避、と言い換えても構わないだろう。


 さて、秋世は、ダッシュでベッドにもぐりこみ、そこで、シーツにくるまりながらもぞもぞと着替えを始めた。非常に気マズいので、俺は、あまりベッドのほうを見ないようにして、秋世がさっきまで読んでいた本に目を向けた。


 秋世が慌てて移動した際に、蹴ってひっくり返っている。そのため、表紙が見え、そのタイトルも明らかになっているのだが、


「『剣舞大国(アルレリアス)宮廷魔術師の大いなる約束』……だと?」


 剣舞大国(アルレリアス)剣帝大国(アルレリアス)の前身で、剣舞大会から剣帝大会に変わり発展を遂げると剣帝大国(アルレリアス)になったのだ。剣舞大会から剣帝大会への移り変わりは、ちょうど俺の生きていた時代がまっただ中だったからな、記憶に残っているさ。


『アルレリアスの宮廷魔導士と言うと、アルデンテさんが有名でしたよね』


 ああ、アルデンテ・クロムヘルトが筆頭魔術師だったからな。だが、著者は、アルデンテ・クロムヘルトではなく、ナナナ・ナルナーゼとなっている。

 ナナナ・ナルナーゼとは、赤茶の髪をツインテールにした魔術師で、アルデンテ・クロムヘルトとは旧知の仲だと聞いていた。宮廷魔導士の筆頭がアルデンテならば、顧問がナナナなのだ。まあ、尤も、顧問よりも強い筆頭魔術師だったのだが。


「ナナナの約束……。聞いたことがないが……」


 俺が死んだ後の話だろうか。いや、しかし、それだと本のタイトルは剣帝大国宮廷魔術師でないとおかしいだろう。いや、約束をしたのが、まだ、剣舞帝国の段階だったのだろうか。

 俺が本のタイトルを見て熟考していると、着替え終えた秋世がやってきた。その顔は羞恥で真っ赤に染まっている。だが、俺の視線が本に向いていることに気づき、さっきのことをうやむやにできるのでは、と考えたのだろう、本について語りだした。


「そ、その本は、ナナナって人が、アルデンテって人と約束をしたことについて書かれてる本よ。どんな約束かってのは、空間魔術で専用の鍛冶場を作ってほしいという無茶な注文で、しかし、アルデンテが鍛冶をするような人でもないから疑問に思いながらも約束を果たすころには、アルデンテは死んでしまっていて、結局、何のために作られた鍛冶場だったのかが分からないって。でも、呪文は記してあるから、アルデンテが生前に決めたパスワードを知るものがいたら、その人に託すって書いてあるわ。まあ、よくあるオカルトの本よ」


 秋世の言葉に、俺は正直、驚いていた。あのアルデンテが鍛冶場を作っていたということにだ。おそらく、作ったのは俺のため。無口で不器用な奴だったが、なんだかんだで俺に尽くしてくれていたからな。しかし、アルデンテの決めたパスワード、ね。


『それはあれじゃねェの?』


 ヒー子の言う心当たりは、実のところ、俺にもある。あいつのことだから、俺の知っているワードをパスワードにしていてもおかしくはない。


「パスワードは4文字と3文字の組み合わせらしいんだけど、私にはよくわからなかったわ」


 秋世はそういうので、俺の考えていたのとは違うようなので、困った。だが、もしかして、普通に考えたほうがいいのかもしれないという結論に至り、俺の考えていた3文字と4文字の組み合わせを逆にしてみることにしたのだ。


「呪文ってのは……?」


 俺は秋世に問いかける。用意された約束の鍛冶場へ入るために。昔、いつだったか忘れたけど、あいつに愚痴ったことがあったんだ。持ち運べる鍛冶場が欲しい、ってさ。あいつはそれを叶えてくれたってことだろ?


「こんなん、眉唾よ?

 幽玄なる空間の精よ。精霊の門を開き、空間をつなぐ場所へと誘いたまえ。この言葉を告げる」


■■■(■■■■)(■■■)


 俺の告げた言葉で、扉は開かれた。俺は、その扉へと手を伸ばして……、目の前が暗転する。意識を失うような衝撃と眩い赤い光は、まるで、侵入者を拒むように俺の前に立ちふさがっていた。


――これは……?!


 ああ、そういうことか。アルデンテのやつ、俺以外が万が一にも解いてしまった時のために、こんなものを用意してたってのかよ。――クソがっ。


 血反吐を吐きそうなのを堪えながら、立ち上がる。目の前にはピジョン・ブラッドよりも透き通ったまばゆい輝きの塊。


――なあ、アルデンテ。俺ならこれを倒せるって?





――そりゃ、過大評価だろうよ……



 そんなことを思いながら拳を握りしめるのだった。

 遅れて申し訳ありません。昨日はちょっとごたついてて。ぼっちなので気力がゴリゴリ削れらているせいで、寝落ちしました。起きたのは今日の1時。ついさっきです。はい、というわけで、なんか少しバトルを挟もうか、と思いこんな話を……なんで、こんな展開にしちゃったんだろ……?最近、自分で自分が分かりません。

 自分で戦闘苦手だって言ってるのに……。まあ、はい、そういうことです。

 あと、講義が暇だったせいで、新しく別の物語を思いついてしまった。こうやって、書けない分がたまっていくんですよね。まあ、いずれ、書くかもしれません。はい

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