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《神》の古具使い  作者: 桃姫
聖剣編 SIDE.D
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161話:怜斗の古具

 あたし達は、休み時間になると、どういう関係か勘繰るクラスメイト達に質問を受けたけど、それを適当に流しつつ、あたし達は、放課後までの時間を過ごしたわ。そして、放課後になるなり、怜斗の首根っこを掴んで、《古代文明研究部》に連行することにしたわ。じゃないと、家に帰って筋トレしてそうだし、コイツ。


「行くわよ」


 あたしが、怜斗の首根っこを掴んで引っ張っていこうとすると、怜斗が素早く抜け出して、あたしから距離を取った位置まで逃げる。何で逃げんのよ、こいつ。


「行くってどこにだ、先に説明しろっ!」


 何故か怒鳴り散らす怜斗。凄い目立つし迷惑だからやめろっちゅーの。……まあ、説明してもいいか。……ん?いいのよね。まあ、説明したところで何の問題もないし。


「部活よ、部活」


 その言葉に、ホッとしたように胸をなでおろす怜斗。何なのよ、普通に考えて、この時間に行くつったら、部活か買い物かバイトの3択でしょ。で、誰かを連れて行くなら部活か買い物しかないでしょうに。で、あたしがあんま買い物しない性格だってのも知ってるから、部活しかないでしょ。


「何だ、部活か。そういうことなら、あの2人も誘おうぜ」


 そう言って、輝と讃ちゃんの方を見る怜斗。しかし、一方の2人は、きょとんとした様子で、こちらを見ていたわ。何よ、その目。


「昼休みに教えてなかったの?俺達、とっくにその話してたけど?」


 輝の言葉。え、そうなの?こっちは一切話してなかったわよ。てか、まあ、その場で言えばいいやって思ってたしね。


「それで、何て部活だよ?」


 どうせ普通の部活じゃないんだろ、みたいな目線であたしのことを見てくる怜斗。まあ、概ねその通り何だけどね。と、そこに十月がやってきた。遅いから見に来たって訳じゃあ、なさそうね。


「どったの、十月?」


 あたしは、微かな気配で気づいた十月に問いかける。おそらく気配に気づいてなかった怜斗、輝、讃ちゃんが驚きを露にする。まあ、これは慣れてないと気づかないわよね。


「らいきゃく。きょうはぶかつなし」


 ああ、なるほど、不知火家に来客があるから今日の部活は中止ってことね。……あたしは、よく、これで内容を把握できたわねぇ……。


「あ、十月。ついでに不知火に伝えといて。こっちの2人、明日から入部するから」


 そう言って怜斗と讃ちゃんを指差した。十月は、2人の顔を見てから、怪訝に眉根を寄せたわ。どうやら《千里の未来(シーン・フューチャー)》で、何かが見えたみたいね。


 十月に表情がついたように笑みが浮かんだわ。……白咲鞠華に切り替わった、と言うべきかしらね。


「どうにも、貴方に会ってからはわたし(・・・)が表層にでることが多くて困りますね。刃神さん。いえ、今のビジョンですと【闇色の剣客】でしたね。それと、【暗闇の暗殺者】さん、バルムンクの持ち主と九浄天神の巫女姫。意味はよく分かりませんが、今日の訪問者に聞いてみましょう。あの方も不思議な方ですから……」


 鞠華は、そうやって微笑むと身を翻して出て行ってしまった。十月の《古具》は未来予知よね。普通に考えて、過去を見通したのはおかしいと思うんだけど、よく分からんのよね。


「鞠華の今言ってた来客ってのは誰なのかしら」


 少し気になったけど、鞠華はもういなかったし、いつまでも気にしてても仕方がないわね。それにしても、今日は部活の時間に、この2人に《古具》持ちかどうかを確認しようと思ってたんだけど、どうしたらいいかしらね。

 ちょっと、周辺の【力場】を探って、誰もいなさそうね……。なら、話しても大丈夫よね。くるりと、皆の方を振り向き様に言う。


「あんた等、《古具》持ちなの?」


 それに対して、「なっ」とも声を上げそうな面々。急に周囲をキョロキョロと警戒するけど、そんくらい確認してから喋ってるつーの。


「誰かいたらどうするんだよ?」


 アンタも暗殺者なら気配察知の能力くらい磨きなさいよ。まあ、その辺は、あたしもそこそこ苦手だったから何も言えないんだけどね。


「ちゃんと(さぐ)って確認してから言ったわよ。それで、どうなのよ」


 あたしの問いかけに、怜斗は面倒くさそうに、それでも答えたわ。


「俺も讃も、持ってるよ」


 なるほど、持っているのね。まあ、あたしも輝も持って生まれ変わったからおかしくはないか……。それで、どんな能力なのかしらね。


「で、お前等は持ってんのかよ?」


 あ~、そっか、こっちが所持してるかどうかを明かしてなかったわね。別に、この2人に隠すようなことでもないし。


「持ってるわよ。あたしも、輝もね」


 全員が持っている《古具》と言う力。でも、それぞれの力ってよく分かってないわよね。仕方ないから、あたしが率先して《古具》を見せてあげましょうかね。そんな風に重いながら、その《古具》の名前を唱え呼ぶ。


「《黒刃の死神(ブラック・エッジ)》」


 その瞬間、あたしの姿が、放課後の教室には到底似つかわしくない漆黒のドレスへと変わったわ。毎回毎回微妙に違うドレスになるのよねぇ……。


 今回は、まるで、あたしと怜斗との再会を祝すかのような黒いブライダルドレス……ウェディングドレスだった。黒のウェディングドレスって何か縁起悪くないかしら……?


「早着替えの《神創具》なのか?」


 《神創具》……字面と状況から《古具》のことなんでしょうけど、方言みたいなものなのかしら。


「違うわよ。この格好は、自動(オート)で発動するもんよ。あたしの能力は、」


 何か切ってもよさそうなものはないかしら……。う~ん、教室の中でそんなものは特にないのよね。あ、新品のチョークを真っ二つに切断すればいいわね。

 ひょいとチョークを持ち上げて、輝に投げ渡す。ほいっと軽く放物線を描きながら輝の方へ飛んでいったチョークを輝が取り損ねて落とした。


――カラン、ボキッ


 地面にぶつかって割れるチョーク。あたしは、輝を冷ややかな目で見つつ、もう1本を投げる。今度は無事にキャッチしたわね。


「それを、両端を摘むようにして持ってなさい」


 要するに空手で、試割(ためしわ)りをするときの様な感じね。輝がそうやって持ったのを確認すると、そのチョークの真ん中くらいをなぞるように触る。


――シッ


 そんな微かな音がする。うん、切れたわね。輝が未だにギュッと持ってる所為で変化が見受けられないけど、切れてるはずよ。


「輝、左右に引っ張ってみなさい」


 輝が言葉に従って首を傾げながらチョークを伸ばすように引っ張ると、あっさりと真ん中から分かたれていた。さっき輝が落として割れたチョークを拾い上げえて、それを見せながら言うわ。


「あたしの能力は切断。ほら、落ちて割れたのとは違って、キチンと切断した断面でしょ?手でも足でも自由に、物を切断させることができるわよ?」


 そういいつつ、怜斗に《古具》を出すように促した。すると、怜斗は仕方がなさそうに《古具》を発動させる。


「《漆黒の外套(ブラック・ベール)》」


 怜斗は漆黒のロングコートを身に纏っていたわ。そして、それを着ていると、【力場】が一切感じられないのよ。気配もね。ってことは、気配を遮断する系統の《古具》ってことよね。中々に暗殺向きの《古具》じゃないの。


「本気になれば、姿そのものを消すことも出来るんだが、まるで……」


 そうね、怜斗の今言ったその能力は、まるで――


「【零】の眼と一緒ね」


 前世の七夜零斗が持っていた魔眼、【零】の眼。それの能力と酷似しているのよね、このコートの能力。造った神様が参考にでもしたのかしら。まあ、そんなことはどうでもいいわよね。


 しかし、この《古具》が、見事に自分達にあったものしか出ないのって違和感があるわよね。それに、心に何か急激な変化があると発現すると言うのもおかしいと思うのよ。人生に転機と言うのは幾度となく訪れるわ。でも、全員が全員持っているわけでもなければ、全員が全員発現するとも限らない。そして、大物になった人が持っていることが多いという話。矛盾、とまでは言わないけど、おかしいわよね。大物になったというのは、必ず転機を迎えて大物になったとは限らないけれど、それでも少なからずは、いるはずよね。なのに、何で、その人は《古具》に開花しなかったのかしら。そして、あたしのような一介の高校生にも関わらず、弟を襲った相手がいるというだけで、弟が無事であることを知っていたのに発現したのはなぜかしら。


 紳司は、まだ、螢馬との戦いで殺されそうになった、しかも、痛みを何倍にも増幅される攻撃なんかもされているから、その死から来る絶望とかから発現したとか言うのも分からなくはないけど……本人は知識欲とか言ってたけどね。


 苦しみからの自殺、死にそうになっている人を助けたいと思う自己犠牲、幾つも自分が開花しそうなシチュエーションは浮かぶわ。でも、他の人がそうなっても開花はしない。それは、本当に《古具》を持っていないからなのかしら。


 いえ、正確には持っていないのではなく、持たされていないのではないのかしら。本当に、持たされているのが偶然授かったにしては、転生したこの4人全員が持っているのはあまりにも都合が良すぎるとは思わないかしら。

 紳司なら、《古具》を持っている体だからこそ転生できた、と言う風に逆論的に結論付けるのかも知れないけど、それはあまりにも都合のいい解釈なのよ。


 ああ、もう、この考えはきっとまとまらんわね。夜にでも考えましょうか。今は、目の前の話を聞くほうが……っ、誰か来るわね。


 あたしは、急いで《古具》を解いて、怜斗にも《古具》をしまうように指示をしたわ。そして、手早く教科書を取り出すと、全員を集める。


「ん、何だ、お前等、まだ教室にいたのか?部活とかの用事がないなら早めに帰れよー」


 物理教師の禿太郎(あだ名)ね。あたしは、教科書を見せながら、怜斗と讃ちゃんを指差して言う。


「あー、すんません。編入生に今、どのくらいの範囲までこの学校がやってるのか教えてたんでー」


 と適当に説明する。怜斗が「よくそんな嘘がすらすら出るなー」的な視線をこちらに向けているけど、むしろ、こういうのは紳司の専門分野だから、あたしは苦手なのよね。


 あの子、抜けてるくせに、女性教師に無類の強さを発揮する上に、男教師にもそれなりの強さを発揮するのはズルすぎよねぇ。あたしの言葉に、禿太郎は、「そこそこにしとけよー」と言って去っていったわ。さすがにこれ以上の長居は無茶かしら?


「んじゃ、今日は解散ってーことで、明日、部活ん時にでも続きを色々話しましょうか。たぶん、明日は部活あるでしょうから」


 そう言って、解散する。さあて、あたしは家に帰ってさっきの疑問の答えを探すとしますかね。

 160話があんなんなので、連投です。160話のことは気にしないでください。はい、あれはノリです。徹夜のノリがあんなものを書き上げてしまったのです。

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