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《神》の古具使い  作者: 桃姫
聖剣編 SIDE.D
158/385

158話:転校初日

SIDE.SAN


 私、恐山(きょうやま)(さん)は、本日から転校先の鷹之町第二高等学校へと転校します。編入試験はものすごく難しかったですが、きちんと受かってよかったです。ここに落ちると、三鷹丘学園か、鷹之町第四高等学校のどちらかを受ける予定でしたが、まあ、受けないに越したことはありませんよね。


 さて、時刻は、午前6時50分。この時間に起きれば余裕ありすぎるくらいに早く登校できますね。ここは、大体、学校まで徒歩で12、3分くらいらしいので7時には学校につけますね。まあ、朝食等を今から取るで、そんなことはないんですが。


 そもそも、朝のショートホームルームの開始時刻は8時35分なので、その時間までに教室にいればいいとパンフレットに明記してありました。今日は担任の廿日先生に早めに来るようにと言われているので、7時30分頃に登校する予定ですが、本来なら8時に家を出ても大丈夫でしょう。


 時間を簡単に確認すると、私は、身だしなみの確認をします。転校初日ですから、流石に乱れた服装で行くわけにはいきませんよね。そう思って、まだ引越したてでなれませんが、もう場所は覚えた洗面所に行って、顔を洗います。


 校則では、目で見て分かるあからさまな化粧は禁じられていますが、多少の化粧なら許可が出ていますし、配られた数年前からの校則改訂の質疑応答に目を通すと、コンタクトは可ですが、カラーコンタクトは不可。リップクリーム、ナチュラルカラーの口紅は可ですが、濃い目の色や青色や紫色、緑色などは不可。耳に穴を開けないイヤリングは可ですが、耳に穴を開けるピアスは不可。ナチュラルなアイシャドー(肌に近い色で薄めの物)は可ですが、肌の色に近くない物(青色や紫色など)や色の濃い物(目で見て明らかに分かるもの)などは不可。マスカラは可、付け睫毛は、適量の使用は可だが、大量に使うことは不可。眉毛を書く場合、自然な形に眉毛を補助するのは可、不自然に眉毛を剃ってから書いたり、眉毛の形を大きく変えるものは不可。ファンデーションはリキッドファンデーションもファンデーションも可。チークのように、肌に塗るものは、薄い色なら可、濃い色(濃いめの赤など)は不可、また、白粉(おしろい)の様なものも不可。

 と化粧だけでもこれだけ校則が細かく決まっているのでナチュラルメークくらいなら大丈夫でしょう。女子としてはありがたい校則というか、校風ですよね。


 髪の校則も、染髪は黒、茶、金などの明るい色は可、しかし、青色や緑色などの自然的にありえないものは不可、とかなり緩い校則です。

 まあ、私は染めることはないですけどね。また、刃物の持ち込み関しても校則が決まっていたので、天羽々斬(あめのはばきり)は大丈夫なのか確認したのですが、


――銃砲刀剣類所持等取締法に反するものの持ちこみは禁じるが、国や県などに許可を貰っている場合は可とする。


 と有るので大丈夫でしょう。念のために、今日は証明書を持っていって廿日先生に見せることにします。


 と、そんなことを考えているうちに化粧が終わったのですが、失敗ですね。ご飯食べてからにした方がよかったです。テンションが上がりすぎて頭がすっからかんだったことが原因でしょう。


 まあ、口紅は後で塗りなおすとして、では、朝食の準備をしますか。


 我が家では、朝食は自分で用意するのが習慣です。理由は、両親が仕事の所為で、起きる時間が不規則だから、と言う理由です。何の職についているかはよく分かっていませんが……。


 ……怜斗君は、朝食をキチンと食べているでしょうか。と言うか、起きてるでしょうか。そんなことを考えながら朝食を作ってしまいます。


 と、言っても、大したものを作れるわけではありませんし、そんな時間もないのでトースターと目玉焼きくらいになりますけどね。あとは、プチトマトでも添えて……。


 では、さっそくいただきましょうか。さくさくとしたトースター、パサパサしたものを好まないので黄身は半熟状態で、醤油を少々かけて食べます。怜斗君はソース派でしたね。そして、デザート代わりにプチトマト。


 パッと食べて、初めて制服に袖を通します。初めて着る制服ですが、一般的なものと変わらないので特に問題はありませんでした。


 スカートのジッパーを上に上げて、準備が出来ると、髪を簡単にセットします。軽く整えるだけでいいでしょう。最近は、昔……光さんと一緒だった頃のサイドポニーにまとめることが多いですが、流石に少しアレンジをしていますがね。

 ちょっと高めの位置で結んで、逆毛……髪を根元から立ち上がらせてふんわり感の髪になるんですが、それを混ぜてサイドポニーにしています。


 最後に口紅を軽く塗りなおして、準備は完了です。さほど濃い化粧はしていません。青森の友人は、「化粧した顔の方が素より劣ってるから化粧なしでもいいと思うけど、もし化粧するなら薄化粧にしなさい」と言っていたので、それにしたがっています。


 さて、と鞄を持って、隣の家に向かいましょう。私の家の右隣の家が、怜斗君の家になっています。


 普通のローファーを履いて外に出ます。極普通の平日なのに、転校初日はやはり特別な感じがしますし、緊張もそれなりにしますね。そう思いながら、肩に通している鞘袋の紐が腋を締め付ける感じに、いつもと変わらぬ点を感じて安堵します。無論、鞘袋の中身は天羽々斬(あめのはばきり)です。


 さて、と、インターホンを鳴らすと、怜斗君のお母さんの声がスピーカーから聞こえてきました。


『あ、讃ちゃん、おはよう。ごめんなさいね、怜斗の奴、まだ起きてないのよ。上がって待っててくれる?』


 怜斗君のお母さん(おばさん)にそう言われたので、門を開けて敷地の中に入って、玄関に行って家の中に上がらせてもらいます。


 青森の頃から変わらない、いつものことですね。怜斗君は時間にルーズなのではなく、基本的に夜行性なので、朝は起きれないのです。


 夜行性と言っても、基本的にゲームをしたり遊んだりしているわけでなく、何故か筋トレをやっているんですよね。しかも、ここに来てすぐに、地図を見て、ランニングコースを決めて夜に走りこみをしたり、部屋からバーベルを落とす音が聞こえたので部屋でも筋トレをしたりしていたんでしょう。

 転校前日に何をやってるんだ、と言う話ですが、怜斗君は、この生活サイクルを変えることはないんですよね……。しかも、隠しているつもりでしょうけど、ランニングのときに聞いているのは、英語の単語を録音したものや英語の長文と訳を録音したものなどですし、基礎トレーニングはノートを読み返しながら、と勉強もキチンとしているんですよね。


 まあ、そんなことはどうでもよくて、やっと、怜斗君が降りてきました。ボサボサの髪に、上手く着れてない制服。どう見ても寝起きですね……。


「よぉ、讃。飯食ってくるからちょっと、待ってろー」


 待ってろって命令形なのに腹が立ちますがいつものことなので今更ですね。まあ、このペースでも充分に早く学校に着けるからいいんですけどね。


「はいはい」


 適当に返事をして、待つこと15分。やっと出てきました。毎度のことながら、待たされるこちらの身にもなってほしいんですが。


「それじゃあ、行きますよ、怜斗君」


 私の言葉に、欠伸交じりに頷く怜斗君。あ~、もう、この辺はいつもどおりと言うか、転校初日のわくわく気分と緊張を全て吹っ飛ばされました。







 そして、道を確認するようにしながら鷹之町第二高等学校に到着しました。着いたのはいいんですが、職員室はどちらにあるんでしょうか。


「えっと、職員室は……」


 私たちが迷っていると、丁度、部活動の途中と思われる生徒さんが前を通りかかりました。仕方がないので聞いてみますか。


「あのぉ……申し訳ありません。本日、転校してきたものなんですが、職員室はどちらでしょうか」


 聞くと、その人は、慌てたように方角だけ指して逃げるように言ってしまいました。どうかしたんでしょうか?


「そら、刀持ったやつに話しかけられりゃ、そうなるだろ」


 鞘袋にはキチンと入れてますっ!


 まあ、逃げた理由は分かりませんが、とりあえず、指が示していた方向へ言ってみることにします。

 あ、受付がありますね。ここで話を聞きましょうか。そう思って、受付のお姉さんに、声をかけてみました。


「あの、すみません……」


 お姉さんは、眉根を寄せて、渋々といった表情で対応にしてくれるようです。何か、申し訳ないような気がしますね。


「はい、なんですか?」


 ここの事務室は大丈夫なんでしょうか。来客者にこのような態度をとっていたらクビになりそうなものですが……。


「今日からこの学校にきた転校生なんですけど、職員室ってどこですか?」


 嫌々そうにして、「はぁ」と溜息交じりに、お姉さんは、雑な対応をします。本当に大丈夫なんですかねぇ?!


「生徒手帳の最後のページを読んで勝手に行って」


 何なんでしょうか、この人、本当に受付さん何ですか?私が生徒手帳を見ていると、お姉さんが不意にポツリと漏らします。


「そういえば、何十年か前にも同じことがあったわね。雨月(あまつき)無限(むげん)君だったかしら。座敷童子としては、何十年も見守っていると同じようなこともあるってことかしら?」


 座敷童子……?いえ、気のせいでしょう。とりあえず職員室の場所が分かったので、怜斗君を連れて職員室に向かいます。





 職員室に入ると、今、担任がいないから、帰ってくるまで待っていてくれと、言われて、しばらく待ちます。今日は待ってばかりな気がしますが……。


「悪ぃ、厄介な生徒に捕まっちまってな。昨日も電話で名乗ったように、廿日雨柄だ」


 普通のおじさんと言う感じの風貌の方ですね。面倒くさがりなのが態度で分かるというのも相当稀有でしょう。


「あの、一応、証明書を持ってきたのですが、この刀の帯刀を……」


 そういいながら天羽々斬(あめのはばきり)を見せます。廿日先生は、一瞬、もの凄く面倒なものを見る目をして、


「ああ、なんでもいいよ。勝手にしろ」


 とそんなことを言うのでした。物分りのいい先生ですね。まあ、助かるのだからいいんですが。






 そうして、チャイムと共に、案内された教室に入ります。そして、教卓の横に立って、クラスを見た瞬間、郷愁と、喜びに、鳥肌が立ち、目を奪われました。

 呼吸するのも忘れて、その懐かしくて愛おしい人の姿の面影を存分に残した人を見て、思わず口からその名前が漏れてしまいます。


(ひかる)さん……」


(さん)ちゃん……」


零斗(れいと)……」


闇音(あんね)……」


 別のところからも声が漏れ、4人の声が交差し、教室は静まり返りました。私の頬には涙が伝います。他の人たちも同様に伝っていました。



――これが、運命と言うものなのでしょうか……、それとも……奇跡……?

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