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《神》の古具使い  作者: 桃姫
魔剣編 SIDE.GOD
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147話:X組の洗礼

 俺は、【魔剣(まけん)・グラフィオ】を白い部屋に置いてきてしまったので、それをどうするべきかと授業中にずっと考えていた。しかし、結局のところ、白い部屋の謎は解明されていてないし、自分からあの空間に行くのは出来ない。となると、今はどうすることもできない、と言うのが俺の出した結論である。


 まあ、尤も、あの剣を持っているメリットもあまりないわけで、時折、見ては、ガレオンのおっさん凄ぇと言う感想を抱くだけになりそうだしなぁ……。剣を打つ剣鍛冶のガレオンのおっさんと、刀鍛冶の俺やナオトやレンなんかとは種類が別だったけど、それでも仕事の丁寧さや使っている材質なんかはとても参考なるしな。


 俺たちが複数の鉄を組み合わせて刀を作るのに対して、ガレオンのおっさんは、鉄を丸々加工して剣を作るからな……。デカイ鉄の塊を材料としているって言うこともあって中々に技術が高くないと出来ないんだよ。


 だが、まあ、そもそも、俺は、刀以外を打たないし、打てないんだよな。これは、ナオトやレンとも(かね)てから言っていたことだが、俺達のような刀鍛冶は、一点特化で刀鍛冶の製法しか学ばなかったが為に、他のはもっと楽だから、とか言われても出来んし、楽なものなどない。


 ナオトは一時期、ガレオンのおっさんの下で剣を打つ修行も積んでいたようだが、当然ながら、マスターは出来なかった。ガレオンのおっさんの名剣鍛冶(スミスマスター)と呼ばれる腕前は伊達じゃないからな。一朝一夕で盗ましちゃくれねぇだろう。


 と、そんな内輪の鍛冶話なんて、どうでもいいか。ガレオンのおっさんには悪いが、次に白い部屋に行くまで封印状態だな、ありゃ。

 まあ、おっさんも天国から見守ってくれていることだろうぜ。……世界違うけど、見守ってんのか?







 まあ、そんな物騒と暑苦しいが交じりあった男の世界の話は置いておいて、現在は生徒会の仕事の真っ最中。今日の仕事は、各クラスの教室の備品点検だ。


 掃除用具の箒の数や、ちりとりの数、小箒やバケツ、雑巾まで全て適切な数が決まっているのでそれの確認。

 そのほかに教室内の全体の異常がないか。例えば、壁に落書きはないか、カーテンは破れていないか、教卓に欠損はないか、などの確認。

 そして、机の異常確認。もうじき定期考査と言うこともあって、机に落書きがないか、机に彫り跡がないか、などをチェックする。


 こういったことも生徒会の活動に分類されるわけで、しかも、通常教室以外の選択教室や多目的室、音楽室といった授業教室も見ることになっている。部室として使われている部屋に関しては、部活動検査のときに行うので今回はパスになる。

 しかもチェックする点が多いせいで、4人のみで行動している生徒会では、分担するよりも全員で回ったほうが早いということで集団行動することになっているのだ。


 正直に言って、通常の教室の方は楽に片付く。三鷹丘学園に通っている生徒の大半が、真面目に進路を考えている様な生徒で、勉強一筋と言う人間が多いために、妙な悪戯をする生徒は少ない。中には、俺のように不真面目な生徒もいるが、基本的に無害である。そういう行為を行った末の代償も考えているからだろう。少なくとも停学や退学を避けるだけの脳はある、と言う結論で落ち着いてもらいたいな。


 まあ、そういうことで、簡単に片付く教室はいい。せいぜい箒の劣化や黒板消しの劣化、黒板消しクリーナーの吸い込み不全くらいの問題しかない。前2つは買い替え、後者はカバーを外して中の筒状のスポンジを洗えば済むし、個人でどうにかなるレベルの問題ばかりでよかった。


 選択教室に関しても同様だ。全学年の不特定多数の生徒が利用するので汚れるときには汚れるのが、掃除もキチンと出来ているので大丈夫だろう。


 音楽室や多目的室のような……特に多目的室はほとんど活用しないので、年に数回レベルの授業しか使わないので、むしろ立ち入らない分、埃は酷かったが、大掃除の際に掃除するので大丈夫だろう。


 そして、問題なのが職員室だ。生徒が教師に呼び出される場合や呼び出す場合は、今や、職員室に隣接されている応接室に行き、そこで話がされる。

 教師が呼び出す場合は、極私的な用事でない限り、校内放送で応接室(そのうちの1から5までのどれかを指定)に呼び出す。

 生徒が教師を呼び出す場合は、空いている応接室に行き、応接室にあるパネルで隣接する職員室に直通の電話をかけて呼び出す。教師が職員室に居ない場合は、電話を受けたほかの教師が校内放送で指定の応接室に呼び出す。


 と言う仕組みになっていて、生徒が入ってこないのなら滅多に見られまいとかなり汚いのだ。まあ、それでもノートを運んできて欲しいとか、そういうことで職員室に入る生徒が稀にいるので、酷すぎるわけではないが。


 例によって、ここが一番時間がかかったのだが、まあ、その辺はいいだろう。なお、秋世のように机に何もない人間も居たが、秋世の場合は、必要なものは、自分の家から即時に持ってこれるから、と言う理由出だろう。由梨果の机は、非常に整頓されていて無駄なものが少ない印象だ。しかし他の教師はと言うと、(たちばな)鳴凛(めいりん)先生の机なんかを見ると、酷く雑多に積み上げられた書類の山と化粧ポーチからはみでている化粧品。とても一般生徒には見せられたものではない。


 と、職員室が一番酷いと言うように扱っているが、実はそうではなかったのだ。一番酷いのが、X組と呼ばれるクラスの教室だ。


 X組とは、特別学業免除制度によって学業を免除されている生徒が学園に来たときに使う教室で、普通の教室に数人しか居ないし、来ない日も多いというので全然大丈夫かと思い気やそんなことはなかった。むしろ一番酷いのだ。


 1年生のX組の教室の場合。ビニールテープで4分割されているのは、おそらく4人しか在籍していないからだと思われる。そして、資料が雑多に積まれたままのスペースはおそらくリュインちゃんの場所。それ以外の場所も酷く実験器具などが散乱していたり、本が高く積み上げられていたり、壁中に数式が書かれていたり、と酷いというレベルを超えていた。

 これは一体どうすればいいのだろうか。片付けるわけにもいかんし、逆に触って大変なことにでもなったら責任が取れない……と言うことで、ここはスルーすることに。


 2年生のX組の教室の場合。特に分けられていないどころか、部屋に何もない。ただし、無残に切り刻まれた机と虫の死骸あったため、七星佳奈の仕業だとすぐに分かった。これをどう片付けろと……?


 3年生のX組の教室の場合。本の山が壁となっている。おそらく宴が読んだ本の山なのだろう。キチンと片しにいけよ。この本をどこに返却すればいいのかは分からないし、もしかして、宴の私物の可能性もあるのが厄介な点だな。


 と言うわけで、X組の片づけが一番大変なんだが、掃除をしないために掃除用具は綺麗だし、黒板も使わないため黒板消しも黒板消しクリーナーも全く汚れていない。壁の落書きと言っても数式なので手が出せない。机は切り刻まれていたり、薬品で溶けて穴が開いていたりと、俺達ではどうにも出来ないものばかりだし。


 机なんて買いなおさないと修繕は無理だろう。刃物ですっぱり切られている机を瞬間接着剤でどうにかできるとは思えないし、どうにかしたところでガタくるだけだ。しかも解ける場合は、同じ材質の木板を大体のサイズに合わせて加工して穴に接着剤と共に入れて、その後、平らになるように表面をやすりがけして均してから、ワックスで覆わなくてはならない。

 そんな手間のかかることをするなら買いなおしたほうが圧倒的に早いし、滅多に使わないのに買いなおしたところで意味があるか、と聞かれると返答に困る。


 と言うことで俺の意見は現状放置と言うものなのだが、他の面々は、一応、片付けたいというものだった。


 俺は、どうしようか、と考えて、結局皆に付き添い、1年生のX組の教室に戻ってきていた。それで、物の種類や使っている人が別々な人が多いであろうこの教室をどうにかするのは難しいと思うのだが。


 と、そうこうしているところに、俺が今朝与えたレポートを読み耽りながらリュインちゃんが教室にやってきた。

 リュインちゃんは鞄を取りにきたようで、スムーズに自分のエリアにある机と鞄の元へと向かった。


「あ、ちょっと、ここの教室を使ってるのよね。これ、なんとかなならない?」


 ユノン先輩がリュインちゃんに言った。しかし、リュインちゃんは、未だにレポートを読み耽っている。ユノン先輩は、流石にイラッときたのかそのレポートを取り上げて、表紙を見た。


「『アストラル体に関する霊体的或いは超常的現象について』って、これ、昨日、し、紳司が探していた資料じゃない?」


 ああ、そういえば、ユノン先輩に、家族の食事に誘われたときに、その話をしたんだったっけか?


「俺が今朝リュインちゃんに渡したんですよ」


 そう説明する。嘘偽りのない事実である。一方、資料を奪い取られたリュインちゃんはと言うと、すぐさまに資料を取り返して、またも考え事をするかのように、いつもの表情でブツブツと呟きながら行ってしまった。


 どうしようもないので2年生のX組の教室に再び行くと、七星佳奈が教室の端の壁に寄りかかっていた。目を閉じているので寝ているのかとも思ったが……


「青葉、紳司」


 俺が近づいた瞬間に、七星佳奈の口がそう動いたように思えた。俺も彼女がここにいることは聖気や【力場】で察していたので向こうがわかっていても不思議ではない。


「この間ぶりです、七星佳奈さん」


 俺は、教室に入ると、彼女にそんな風に挨拶をした。そして、一応、皆に紹介でもしておこうか、と思ったが、彼女は、窓を開け、窓から外へ出て行ってしまった。念のために言うが、ここは2階だ。


「知り合いなの?」


 ミュラー先輩が問いかけてきたので、俺は、流石に《終焉の少女(マリア・ルーンヘクサ)》だの筆頭騎士だのを言うわけにはいかないので、無難に言えることを言う。


「彼女は、《死古具ダリオス・アーティファクト》の持ち主、七星佳奈さんですよ」


 俺の言葉に、驚いたようにするが、しかし、本人はもうおらず、片付けようがないので、今日のところは、どうもしないことになった。

 そして、最後に3年生のX組の教室。適当に手をもみもみしてたら宴の胸を揉めるんじゃないかと思ったが、結局宴には会えなかった。


「ここもパスですね」


 静巴がそう言った。


 結局、今日は、X組以外の点検は全て終えたが、X組に関しては何もできなかったのであった。

 体調不良な今日この頃。

 たまには生徒会っぽい話を書いてみました。と、言っても生徒会室で議論とかではなく、活動的な意味でしたが。

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