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《神》の古具使い  作者: 桃姫
魔剣編 SIDE.GOD
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146話:鎚と彼女

――かつて、わたしの祖父は、4つの力を生み出した……。


――そして……その1つ持つ――は、――を倒すために行動している。


                 ……SIDE.God Slayer



 わたしは、ホテルでシャワーを浴びる。このホテルの設備は整っているので、きちんと1部屋にシャワーも完備しているわね。この辺は、日本のいいところよね、設備がきちんと整っている当たり、裕福な国の象徴というか……。


 諸外国に行くと、ここまで綺麗な部屋はないし、シャワー室も狭いわ。そもそも温水のシャワーすら出ないところもあるし。まあ、欧米では、シャワーの習慣はあっても入浴って言うのはあんまりないのよね。


 欧米の場合、シャワーで汚れを落とせれば、それ以外は特にしないのよ。これは、キリスト教の普及によって、人前でみだりに身体を晒すのはよくないというもので、わたしにはあまり関係ないけど、キリスト教以外でも、そう言ったものは多くて、それによって、あまり入浴と言う習慣は流行らなかったのよ。


 日本くらいよね、バスタブにお湯を張って、全身を浸かって疲れを取る、なんていう習慣は。まあ、でも、日本に、そういう習慣があるからこそ、シャワーはキチンとしているのよね。


 肌に勢いよく噴射されたお湯が弾けて落ちる。大して大きくもない胸に沿うように雫が(したた)り落ちていく。


 まだ生え始めだけど、キチンと手入れをしなくちゃならないのが大変なのよね……、ああ、腋毛よ?下はまだ生えてな……何言わせてんのよ?!

 でも、そのうち、永久脱毛でもした方が楽よね……。どうせ生やすことは無いんだし……。処理残しでもあると、何か、嫌じゃない?


 あ~、洗顔とか、トリートメントとかのアメニティグッズも充実しているし、日本は言うこと無しね。自分で持ってこなくても、適量は、ホテルに常備してあるし、マッサージや食事も頼めば、部屋まで運んでくれるし、部屋に入るな、と言えば、入ってこない。


 本当に、日本は楽な国よ。外人と言うだけで、あまり踏み込んでこないし、ただ、まあ、諸外国で悪いニュースがあると、無関係の国なのに、近いだけで疑いの眼で見る人間性はどうかと思うけど。


 おそらくだけど、隣国に陸続きの国が無いから、外のことにあまり重きを置かないんじゃないかしら。ちょっとは、個人の海外進出もすべきじゃないかしら。いえ、会社の進出とそれによる派遣はだいぶ増えているらしいし、まあ、中東やアジアが多いらしいけどね。それでも充分だと思うのよ。


 ほら、国境を車で跨げる欧州諸国だと、ドライブで他国までとかも行けるから、飛行機を使わない分、手軽でスムーズなのよね。


 鎖国だっけ?日本が昔やっていたやつ。あれも島国で、それも陸地からだいぶ離れているから出来たわけで、イギリスとかは鎖国なんて出来ないし(まあ、する必要もなかったんだけど)、でもそれを引きずったのかしら、未だに海外へは旅行にしか行かないじゃない?

 まあ、そんなものなのかもしれないけれどね。日本のことなんて、わたしには分からないし、分かる必要もないしね。


 ……そろそろ上がろうかしら。


 シャワーを浴びた後は、体が冷えやすいし、ああ、だから日本人はお湯に浸かって体を有る程度温めるのね。


 そういえば、あいつと初めて会ったのも、こんな風に、全身が濡れていたっけ。そう、全身を濡らすような雨の降る日だったわね……。







 イギリスでデリオラを仲間に引き入れたわたしたちは、その後、数ヶ月間、欧州内で《古具》使いを捜していたの。まあ、結局として、《聖王教会》が先に仲間に引き入れていたり、どこか別の組織に所属していたりと、わたしたちの仲間になってくれるような《古具》使いには出会うことが出来なかったのよ。


 例えばドイツにも行ったわ。それにイタリアやフランス、スイスとその辺の国を片っ端から回って、そして、スイスのジュネーブ湖……レマン湖と言ったほうが分かりやすいかしら、まあ、スイスの端っこにある湖で、わたしは、その男とであった。


 あの日は、珍しく雨の降る日だったわ。視界を遮るほどのスコールが傘をも潰し、互いの声すら聞こえない、そんな日に、あの男は、湖の側で寝ていた。

 雨が降っているのに仰向けで、顔面に水が大量に入っているのに、気にした様子はなく、溺れる様子もない。死んでいるのではないか、とも思うが、時より身をよじるので生きているのよね。


「んがぁ?」


 その男は、突如、起き上がり、手に大きなハンマーを出現させると、それを天へと投げた。


――ドォオン!


 天を裂くような音がして、雲が裂け、雨が止む。それは、その男がやってのけたことだった。天を割ったのよ、ハンマーで。


「あれは、《破壊の鎚(ブレイク・ハンマー)》です!」


 ランスロットの声に、わたしは確信する。アレが、幾多の国を越えて、捜し続けている《死古具ダリオス・アーティファクト》の持ち主であるのだと。


「何だ、ガキども、この俺様に何か用でもあるのか?」


 男がそんな風に言う。この男は、間違いなく強い、それを肌が感じ取って、ピリピリとした雰囲気が警戒すべきだと直感に訴えかけてくる。


「貴方、名前は?」


 わたしの問いかけに、男は怪訝な顔をして、それでも一応、わたしの問いの意味は理解しているらしい。


「名を聞くときは、そっちが名乗るのが礼儀だろぉが。それとも、そりゃ、俺の国だけのルールだったっけかぁ?」


 少なくともわたしは聞いたことが無いんだけど、とりあえずそれが礼儀ならば名乗るしかないわね。


「わたしはミランダ・ヘンミー。《魔堂王会》の長をしているわ」


 わたしが名乗ると、それにあわせるように、わたしに続いて仲間達も名乗る。


「自分は、ランスロットと申します」


 と、ランスロットが仰々しく、恭しく名乗る。そして、次に、


「僕はディルセ・ディブライドだよ」


 と、ディルセがいたって普通に、しかし、独特の挨拶の仕方をした。国によって違うものなのだろう、とわたしは自分で勝手に結論付ける。それから、次に、


「ボクは、デリオラ・アール」


 デリ子ことデリオラ(♂)が恥ずかしそうに女々しく挨拶をする。女の子にしか見えないけど、男よ。


「へぇ、そうかい。俺様は、龍ヶ浜崎(りゅうがはまざき)将院(しょういん)。No.16でも通じるがな」


 ナンバー……?一体何のことなのかしら?とにかく、かなり強いことと、《破壊の鎚(ブレイク・ハンマー)》を持っていることだけは分かったわ。


「そんで、お前等、俺の目的とは何の関係も無いわけだけど、何のようだぁ?」


 彼には何か目的があるのかしら。もしかして、彼は、目的を果たすためにスイスにいるんじゃ。だとしたら、どうやってもついてきてくれなさそうよね。


「貴方の目的と言うのは?」


 わたしは、彼に聞いてみる。しかし、彼は肩をすくめて、わたしを可哀想なものを見る目で見てくる。


「おいおい、質問してんのぁ、俺様だぜぇ?」


 ぐっ……尤もなことを……。仕方が無いわね。わたしたちの用事っていっても、単なる勧誘活動以外の何でもないんだけれどね。


「単刀直入に言うけれど、貴方、わたしたちの仲間にならない?」


 わたしの言葉を、ショウインは鼻で笑った。何か無茶苦茶ムカつく奴なんだけど、本当にコイツを仲間に引き入れるのかしら。


「嫌だねっ。第一、んなことしたら師匠……液梨(つゆり)姐御(あねご)に文字通り一刀両断されちまうっつーの。五星剣(ごぜい)は伊達じゃねぇーからなぁ」


 なにやら凄い人が師匠のようね。文字通り一刀両断って人体切断技術を持っている人間がいるってことなのよね。恐ろしすぎるっ!


「どんな師なのですか、相当な腕の持ち主と見受けられますが」


 ランスロットは剣を使うだけあって、一刀両断とかの言葉に弱い傾向がある。今回もその例に漏れず気になったようね。


「あぁん?別に俺様が習ってるわけじゃぁねぇよ。あだ名ってやつさ。No.4は剣術師範役も担ってるから師匠って呼ぼうぜって、ユーリーの奴が決めただけさ」


 何か知らない名前がいっぱい出てるんだけど関係ないってことでいいのかしら?しかし、何か組織的なものを感じるわね。ナンバーとか言ってるし。


「それで、こっちの用事を言ったのだから、わたしの質問にも答えてくれるわよね?」


 わたしはショウインに問いかける。すると、ショウインは面倒なものを見るような目で見てきたわ。酷いわね、貴方も十分に面倒だってのよ。


「しゃぁねぇ。俺様はナナホシ=カナと言う存在を追ってるんだよ。あいつに関しちゃ、どういう因果をたどってるか分かんねぇからそれを解明しなきゃなんねぇんだよ。ったく、元はと言えば、この世界担当の虚唄(きょうた)がサボってるからこんなことになんだよ、チッ」


 ナナホシ=カナ……。それって確か《殲滅の斧ジェノサイド・ラプリュス》の使い手で、今は日本にいるというナナホシ=カナのことかしら。


「日本の三鷹丘で捕捉されているわよ?」


 わたしの言葉に、ショウインは目を丸くした。何よ、知らなかったの?こんなところで寝てるから、そうなるのよ?


「それに、丁度、わたしたちの目的地も三鷹丘なのよ。仲間になれ、とは言わないけど一緒に行動しない?」


 わたしの提案に、ショウインは仕方がなさそうに頷いた。どうやら、一緒に行動するのはいいらしいわね。しかし、それにしても《破壊の鎚(ブレイク・ハンマー)》って凄い力よね。


「《破壊の鎚(ブレイク・ハンマー)》の使い手なんでしょ。凄いわよね、さっきの」


 わたしがそう言うと、ショウインは「はぁ?」とでも言いたげな顔をしてわたしの方を見てくる。何よ、褒めてんじゃないのよ。


「あんなモン、使わなくてもできるだろぉがよぉ?」


 そういいながら片手を振り上げる。その瞬間、再び集まりつつあった雲が一瞬で散った。その後に吹き荒れる風は、振り上げた衝撃などだと、吹き飛ばされそうになるのに堪えているときに気がついた。


 コイツ、化け物……。


 わたしは、そんな感想を抱きつつ、このショウインと言う男をいかに仲間に引き込むかを模索するのであった。


 一方の、ランスロットとディセルはと言うと……


「俺様キャラですね」


「俺様キャラだね。日本進んでんなぁ……」


 とよく分からない会話をしていたのだった。それをデリ子(♂)が小首を傾げて眺めていて、ついでにショウインが一言。


「日本っつーかオタクが進んでんだ。一括りにすんじゃねぇよ!」





 こうして、わたしたちは、因縁の地である三鷹丘へと行くことを決めたのよ。ショウインは……龍ヶ浜崎(りゅうがはまざき)将院(しょういん)と言う人間は……力を持っている。


 その力は……


――かつて、わたしの祖父は、4つの力を生み出した……。


――そして……その1つ持つ彼は、ナナホシ=カナを倒すために行動している。

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