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《神》の古具使い  作者: 桃姫
クリスマス編 SCENE.one year ago.
135/385

135話:クリスマスSIDE.D

 クリスマス……、クリスマス、ねぇ。あたしは、ふと、空を見上げた。多少曇っているけど、雪なんて降りそうにない空模様。


――はぁ、何でこうなったのかしら。


 あたしは、溜息と共に、辺りを見回す。今考えてみれば、今日はよく分からない一日だった。


 朝は、親友から「今日はトモ君と2人きりでクリスマスパーティを開くんだぁ~」などと言う甘ったるい惚気話を聞かされて辟易する。


 昼は昼で、クラスメイトから「青葉さん、今日、ウチ等クリパすんだけど来ない?」「バッカ、ゴメンね、あのっち、彼氏とかとデートで忙しいよね」などと、彼氏はいないにも関わらず勝手に断言して、あたしの元を去っていくし。


 さっきは、さっきで、急に父さんと母さんから電話がかかってきて「今日はパーティに行くぜ。じゃあな」とそれだけ言って切られるし。


 それでもって、今は、……今、目の前では「ねぇ、嬢ちゃん、こんなクリスマスの日に一人?」とか言うナンパをしてくる男がいる。


 あたしは、溜息交じりに、腕を組んだまま、一蹴した。すると男は、ゴロゴロと転がっていく。道端で寝転がっているなんて、何て邪魔な奴なのかしら。通行の邪魔以外のなんでもないわね……。


――はぁ……、それで、ここ、どこよ。


 どう頑張っても電源1つ入らないスマホを見て、あたしは、溜息が出た。てか、溜息しかでないわ。充電はしっかりしてたんだけどねぇ……。


 ええ、確かに、父さんと母さんから電話がかかってきた時点までは、あたしのスマホは生きていたわ。通話もネットも何でも出来たのよ。充電だって67%とか言う、中途半端だけど、まあ、納得できるくらいの残量でしょ?


 そ、れ、が、何で、一体、どうして、いつの間に、電源すら、点かなく、なってんのよぉ!


 バンバンと、思考にあわせてスマホを壁にたたきつける。もう既に、画面はバキバキ。それでもフレームがまだ見えてる辺り、最近のスマホって強度高いわよね。


 はぁ……、もう、今日は一体何なのよ。学校の帰りに妙な視線を感じるわ、レンガが落ちてくるわ、スマホは壊れるわ、何、あたし、誰かに狙われてんの?


 あ~、もう、ウザったいわねぇ。おそらく、鷹之町市内なのは間違いないんでしょうけど、結局どこなのかは分からないし。


 コンビニとか……、あ、電柱捜せばいいのよ。それか公衆電話。どっちとも、市と地区と番地と番号があるから、それで大体の位置はわかるわよね。


 ……ないわね。


 これが進んだ文明の失点かしら。電柱は全部地面の下だし、公衆電話なんて過去の遺物だったわ。


 ……普通にコンビニ捜して、そこで聞きましょうか。それが一番早いわよね。


 そう思って、周囲を見回すと、コンビニをやっと見つけたわ。あの家族マートよ。えっと……店名は……。


――八鷹(やつたか)()(きた)店。


 八鷹市と言うと、鷹之町市の南側にあって、北側は西瓜が、南側は落花生が有名な市なのよね。三鷹丘市とも隣接しているわ。


 まあ、さほど離れていなかったけど、鷹之町市じゃなかったわね……。でも、ここからだったら充分歩いて帰れるわ。









 歩くこと30分ほどで、見覚えのある景色が見えてきたわ。もう、ここまでくれば、家までは簡単に辿り着けるわね。


 ……あら?


 何だって、門のところに、プレゼントの箱みたいなのが置いてあるのかしら。どっかの配送業者が横着(おうちゃく)でもしてるのかしら?


 そう思って、辺りを見回すと、紳司がいた。何やってるのかしら、と思って目を凝らすと、何か、どっかのホームパーティ会場から抜け出してきたのか、はたまた、ケーキを売る店の売り子か、ミニスカサンタなんていうハデな格好の女と一緒にいたわ。

 どうやら、そのビッチっぽいミニスカサンタがプレゼントを門のところに置いていっているみたいね。紳司はそれを手伝ってるみたいだし。


 こりゃ、紳司の帰りは遅くなりそうね。


 そう思った、あたしは、商店街の方にケーキと晩御飯を買いに行くことにしたわ。どうせ、寂しい姉弟のクリスマスなのだから、七面鳥とまでは言わないもののフライドチキンとケーキくらいは揃えておきたいじゃない?


 あたしは、そう思って、ちゃっちゃと買い物を済ませようと、多少早足で歩く。すると、目の前を変な女が通り過ぎていった。


――え、今の何?


 あたしは、その目を疑ったわ。何せ、この寒い中でもミニスカサンタなら、まだクリスマスなので納得できるけど、流石に、――ビキニアーマーはないでしょ。

 え、なに、コスプレ?それとも罰ゲームかしら。でも、むっちゃ堂々としてたわよ、今の。


――え、そういう性癖の人なの?


 いやいやいや、え、マジで、聖夜にビキニアーマーで町を徘徊(はいかい)するような変態がいるの?


 何、聖夜だから、特別な日だからってちょっとはしゃいじゃってる系の変態さんがいるのかしら?


 あたしは、思わず、その変態とも言えるビキニアーマーの女を追いかける。後から見た感じ、プロポーションは悪くないわね。うん、そこそこ……いえ、それどころか、かなりいい方かも知れないわね。


 背中の肉付きを見ると、全然無駄な「はみ肉(はみ出た肉)」がないもの。ちょっと、前に回って、プロポーションを見せてもらいたいんだけど……。

 と言うわけで、ちょこっと先回りして、前から、その引きにアーマーの女を見てみたけど……。

 染めたわけでもカツラでもない、素であると思われるピンク髪。うん、だって、睫毛も眉毛もピンクよ?地毛としか思えないわ。

 それに、銀で縁取った青色のビキニアーマー。露出度大。てか、ほぼ丸見えだし、露出狂の気があるといわれるあたしですら、この時期にその格好でそとには出んわ。寒いし。


 え、寒くなかったら出るのかって、別に、寒くなかったら外に出てもいいと思うわよ。特に問題はないし。


 しかし、何なのかしらね。一般人じゃないわよね。何か、勇者的な何かなのかしらねぇ。いやいや、まあ、この現代に、超能力があるわけでもあるまいし、何言ってんだって話だけど、でも、勇者としか思えないじゃない?


 そういえば、父さんも剣を振ってるとかどうとか母さんが言っていたことがあったけど、あんな感じの格好をしてるのかな。いえ、ビキニアーマーではなく、普通にプレートでもフルプレートでもいいんだけど。


 いい年した大人が、あんなん着てるとイタいにも程があるけどね。まあ、父さんも父さんでおかしなところはいっぱいあるからねぇ。よく「相棒が言ってんだから」とか「うるせぇよ、相棒」とか言っているし、ドラマの話じゃないわよ?


 まあ、その話は、置いておきましょうか。しかし、何だって、こんなところにビキニアーマーでいるのよ。勇者、ってよりも、女戦士ってことなのかしらね。でも、世界には、ドラゴンもモンスターも居ないのよ?


――ムッ、邪神の気配がっ!


 なんて感じに、ビキニアーマーがどこからとも無く剣をを抜いたんだけど、え、今、ほんとにどこから出したのかしら?

 どこにも剣を持てそうなものは持っていないんだけど。別に鞘に入っていたわけでも鞘を持っているわけでもないし。え、マジなファンタジーなのかしら。


「そこにいるのは分かっている。大人しく出て来い邪神の(しもべ)よ」


 だれが僕だってぇ?あたしのこと言ってんのかしら?あたしが誰かの下で大人しくするようなタイプに見えんのかしら?


 ちょこっと頭にきたあたしは、堂々とビキニアーマーの前方に現れてやったわ。すると、女は、あたしに思いっきり剣を向けて叫ぶ。


「ム?誰だ、貴様。邪神の僕ではないのか?」


 ふざけんなっての。もう、何、中二なの、ガチなの。とりあえず、あたしは、何の能力もない、身体能力高めの女子高生なのよ?


 流石に刃物を持った奴、相手にどうにかするのはキツイ気がするんだけど。まあ、とりあえず気合一発、頑張るとしますか。


「邪神とか意味わかんないんだけど」


 とりあえず、邪神について知らないのはガチよ。ええ、てか、何よ、邪神って。ゲームの話ですかってのよ。ああ、でも最近、ラノベとかって言うか、ウェブノ(ウェブノベルの略称)とかでも多いよね。ああ、一般的にはオンライン小説とか言うんだったかしら?


「だが、確かに、お前からは邪なる神の気配を感じる。とりあえず、脅威となる前に……死ねっ!」


――うわっ?!


 いきなり切りかかってきたわよ、コイツ。しかも割りとマジで威力高いみたいで、あたしが避けたことで、コンクリートの塀が犠牲になってしまったわ。まあ、剣て、「切断」よりも「殴打」の方に主力があって、半ば鈍器みたいなもんだったって言うし、この威力も納得なんだけど。


「ハッハッハ!」


 そして、戦いが続くと思われたこの場に別の声が響いた。その馬鹿のような笑い声に、ビキニアーマーもあたしも、そちらを見た。


「戦士グラッデェよっ!お前は、どうやら道を間違えたようだなっ!」


 なんで、コイツは一々叫んでるのよ?てか何者なのかしら。その男は、妙ないでたちをしていた。

 漆黒のローブと腕にはガントレット。そして、妙にデカイ、変身ベルトのようなベルトが特徴の奇妙な男。


「俺はっ!こうして間違った転移で世界の流れに悪影響を生じさせないようにする者っ!その名を!(てん)(がん)(じょう)(きょ)(うた)!だっ!」


 天岩上虚唄……?妙な名前ね。それこそ、漫画かラノベの主人公みたいな名前じゃないの。それに、間違った転移で世界の流れに悪影響を生じさせないようにする者ですって?


 てことは、このビキニアーマーは間違ってこの世界に来てしまった=異世界が存在するってことじゃないのよ?!


「ナンバー12っ!またの名を(てん)(がん)(じょう)(きょ)(うた)!だっ!」


――しつこいわっ!


「戦士グラッデェは俺が預かろうっ!さらばだっ!刃神の少女よっ!」


 意味不明な言葉を残しながらダッシュでビキニアーマー女を抱えて、ダッシュで走り去った虚唄と言う男を見て、呆気に取られるあたし。


「あ、そうだ、チキンとケーキを買いに行かなきゃ」


 理解不能なものは、脳が理解しようとしないし、目の前のことよりも別のことを優先させようとするってことで、あたしは、買い物に行くことにしたわ。まあ、その、何かしら、聖夜の奇跡ってやつよ。


――嫌な奇跡もあったもんね。

 え~、鷹之町市=成田、三鷹丘市=酒々井+佐倉、八鷹市=富里+八街みたいな感じです。はい。


 え~、次章予告


 その少女は、かつて暴虐の四つの武器を造り上げた男の孫だった。

 聖なる剣に貫かれ、黙示録の櫓でその生涯を終えた男……

 その名を――ダリオス・ヘンミー。

 《死古具――ダリオス・アーティファクト――》の創造主にして、人の身で偉大なる蒼き神へと手を伸ばし、あと一歩のところまで至った男。

 そして、その孫には、彼と同じ《死古具》が宿っていた。彼女が率いる、かつて彼が率いていた集団は、魔なる剣を持って動き出す。


 《神》の古具使い――魔剣編SIDE.GOD――

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