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《神》の古具使い  作者: 桃姫
京都編
121/385

121話:市原SIDE.GOD

 さて、と俺は、まだ、ヒリヒリと痛む頬を擦りながら、5人の後をついていく。この5人とは、先頭に照れてるんだか拗ねてるんだかよく分からないカノンちゃん、次に姉さんに負けた裕太、その次にまだ微妙に青色の抜けていない髪を弄る姉さん、その次に由梨果と結衣さんが談笑しながら歩いている、この5人のことだ。


 最初にこの家を訪れたときもそうだったが、どうしてか、この家での並び順に置いて、俺は一番最後になるらしい。


 さて、しかして、どうなるのやら……。市原と言う家は、どうにも不審な点があるが、彼等の待遇がどうなるかがは分からないな。


 そうして、再び裕蔵と相見える。裕蔵は、厳しい顔をしていた。どうやら、勝敗は、既に分かっているらしい。


「どうだった、やはり、手も足も出なかっただろう?」


 苦笑と言うより嘲笑。息子や娘を嘲笑う。しかし、俺には、どこか、自分をも(わら)っているように見える。


「やはり、血筋と言う奴か」


 静かにそう呟くのが、俺に聞こえた。おそらく、姉さんにも聞こえていただろう。しかし、血筋。劣等の血筋だとでも言うのか?


「もう少し、僅かに少しでも結音に似ていればよかったものを」


 その言葉は、呟きではなく語りかけだった。しかし、それが、意味することを俺は理解する。劣等の血筋は、裕蔵の血なのだ、と言うことに。


「【桃色の覇王】……姫野(ひめの)結音(ゆいね)対幽賊害蟲部隊(ネメシス)極東(エー)支部のエースにして、若くしてSランカーとして一線で活躍していた。後に、この世界で言うところのアメリカ大陸に当たるG支部に移動。そこで俺と会ったのさ」


 この世界で言うアメリカ大陸、と言うことは、異世界で出会ったってことだよな?


「極東支部……G支部……。漆黒の剣天……いえ、紫天の剣光」


 漆黒の剣天……?


 はて、姉さんの呟いたその名前に、どこか聞き覚えがあるような気がする。しかも、つい、最近のことのように思うのだが……?


「ほぅ、知っているか、紫雨(むらさめ)零士(れいじ)支部長を」


 むらさめ……れいじ……。レイジ。……ああ、そうだ、七星佳奈に聞いたんだよ。マリア・ルーンヘクサがかつて、漆黒の剣天の姉として生まれ妹として死んだ、って。


「植野が死に、結音と共に、異世界に落ちた……正確には帰って来たというのが正解か?

 市原の人間であった私と、姫野……朱野宮の血縁だった彼女。2人は、再びこの世界に戻り、子を()した。そうして生まれたのがお前等だ」


 植野……?仲間か何かだろうか。


植野(うえの)瑠治(りゅうじ)。《真紅(しんく)武神(ぶしん)》ね」


 おそらくグラムと対話しながらだと思われる姉さん。グラムは相変わらず、よく知っているらしいな。


「Sランクだった結音とは違って、俺はBランク相当だ」


 ランク分けを言われてもピンとこないんだが……。俺は、姉さんの方をうかがった。すると、姉さんは肩をすくめる。


「Bもあれば充分じゃない?Sは元より、Aでも出世街道まっしぐら、Bでも安泰って言われてる世界だし」


 姉さんがそういうからにはそうなのだろう。しかし、確か市原家はどちらも《古具》持ちだったはずだ。


「詳しいな。その通りだ。しかし、いくら出世しようと、G支部では関係の無いことだしな。《古具》も結音のものとは比べ物にならないくらい役に立たないものだ」


 そう苦笑する裕蔵。その話を、どこか信じられず、狐につままれたような顔で聞いている裕太、結衣さん、カノンちゃん。


「その点、裕音は、一番、結音の力を継いで生まれてきた。あれは、天性の才があった。だから、私は、あいつの思うようにさせているのだ」


 そういえば、ユノン先輩は家を出て行った。勘当当然かどうかは分からないが、それでも戻らないつもりで家を出たはずだ。なのに、それが分かっているはずの裕蔵は、部屋をそのまま残していた。

 つまり、追い出したわけでも、嫌っているわけでもないってことだろう。


「俺達は、この家をどうこうしようとも思っていない。《古具》使いへの攻撃がなくなればそれで構わないんだが。1つ言わせてほしい」


 俺は、そう言って、思ったことを……


「《古具》が全てでもなければ、血も全てじゃないわ。才能が全てってわけでもない。何でも決め付けないことよ」


 ドヤァと、俺の台詞を横取りした姉さん。……何故横取りしたし。そこは俺がドヤ顔で言うところじゃないの?

 まあ、姉さんのでしゃばりは今に始まったことでは無いので、俺は微妙な気分になりながらも、何も言わなかった。


「……血筋が絶対ではないが、遺伝はする。受け継いでもらえなかったものもあれば、受け継がせてしまったものもある」


 悲しそうに裕蔵が言った。そりゃ、遺伝はするかもしれない。しかし、それが全て遺伝によるものではない、と言うこともある。


「子供はね、親を選べないし、遺伝子も選べない。だから、どんな子供が生まれても、それでも親はキチンと愛してあげるだけでいい。責任を感じる必要なんてまったくないのよ」


 姉さんがそう言った。まるで、子供を育てた実感があるようなそんな口ぶりに、裕蔵はいぶかしんだ。

 俺は、姉さんが前世で子育ての経験があるのがなんとなく分かった。ちなみに、俺も経験はある。なぜなら、静葉は、基本的に英司との家に居た。だから、俺は、(しん)を男手一つで育てていたのだ。まあ、静葉もたまに来て面倒見てたけど。


「ふん、子供を産んだことも無い生娘が戯れた事を」


 されど、裕蔵は、姉さんの言葉を信じなかったようで、そう言葉を返した。それを聞いた、姉さんの髪が、一瞬で蒼に染め戻る。せっかく元の茶色に戻りかけてたのに。


「あら、失礼ね……」


 そう言った姉さんは、どこか姉さんと違う雰囲気を身に纏わせていた。つまりは、姉さんの前世が表立っているということか。


「キチンと産んで育てたわよ」


 肩をすくめ、飄々とした感じこそ、姉さんにそっくりだが、言い回しの所作が微妙に姉さんとは異なる。


「何だと?」


 その差異など分かるはずも無い裕蔵が眉を寄せ上げ、おかしなことを言うものを見る目で見ていた。無論、裕太、結衣さん、カノンちゃん、由梨果も同様の眼で見ていた。

 由梨果が、声を潜め、俺の耳元で、俺に対して疑問を投げかけてきた。


「どういうことでしょうか?

 本当に出産の経験があって、育てた経験があるのだとしたら16歳前後でお産みですよね。あり無いことでありませんが」


 本当にそうなのか、と問いかける由梨果に、俺は、一笑して、姉さんの方を見た。いや、姉さんでは、無いかもしれないが。


「事実、この身体、そして、青葉紳司や青葉清二、青葉王司、青葉(ひじり)、青葉聖蘭(せいらん)と言った存在があたしが子供を産んだことの証明だしね」


 自分のことを「この身体」、俺のことを「弟」ではなく「青葉紳司」と、じいちゃんを「青葉清二」と、父さんを「青葉王司」と言った。やはり姉さんではない、と言える。

 なお、(ひじり)さんとは、じいちゃんの妹……つまり大叔母(おおおば)にあたる。聖蘭さんは曾祖母に当たる。


「そうね、自己紹介からするとしたら、あたしは、八斗神(やとがみ)闇音(あんね)。『闇色の剣客』と恐れられた女よ」


 姉さん……もとい、闇音さんがそう言った。割りとはっきりとした境界存在しているらしいな。俺と信司と言う存在は、もはや統合されつつあるんだが……。


「まあ、かく言う俺も子育て経験はあるしな」


 俺の発言に、もはや、疑問でいっぱいいっぱいの他の面子がさらに疑問符を浮かべたが、俺達2人は気にしない。


「……名前は?」


 その闇音さんの問いかけは、俺の前世での名前を聞いているのだろう。別に隠すものではないし、現に紫炎の家では名乗ったし、普通に名乗る。


六花(りっか)信司(しんじ)。鍛冶師だ」


 俺の名乗りに、少し驚いた様な顔をした闇音さん。どうかしたのだろうか。紳以降の家系はどうなったかは知らないが、少なくとも俺と紳の世代では青葉……蒼刃とは関わりがないはずだ。


 ……ってあれ、八斗神って青葉の関係じゃないのか?


「六花……(しゅん)叔父さんの家系ね」


 竣……?ああ、ウチの孫だな。紳が五威堂(ごいどう)弓歌(きゅうか)ちゃんと結婚して、間に生まれたのが竣。しかし、叔父ってことは、竣は、蒼刃と結婚したのか。


 しかし、ウチの家系は青葉の血縁が色濃いな……。無論、ウチ、と言うのは六花信司の家系のことだ。

 静葉、その子である紳、その子の竣とその妻、その子、と色濃い「蒼」の力が……。そこで、俺は、はた、と思い出す。


 そういえば、ウチの家系は、いずれ、「蒼紅(あおべに)」と「レファリス」と言う蒼の家系へと至ったのだと。


剣兎(けんと)深黎(みれい)深兎(みと)深子(みこ)魔兎(まと)深魔(みま)深紅(みく)、ミララ、龍麻(りゅうま)瑠菜(りゅうな)


 一昨昨日(さきおととい)、久々に抜いた【神刀(しんとう)桜砕(おうさい)】が言っていた名前だ。おそらく、彼等、彼女等こそ、俺の一族であり、剣帝にして、蒼き一族なのだろう。


「意味は分からないが、本当に子を育てたことがあるというのか?」


 裕蔵の問いかけに、俺と闇音さんは頷いた。本当に子育て経験はあるからな……。何故かカノンちゃんが凄い睨んでるんだが、それは置いておくとしよう。


「では、それもまた、経験談と言うやつか」


 裕蔵が言った、その言葉に、闇音さんは返す。


「それも成人どころから結婚までやって、孫の顔を見た世代の人間の、よ」


 俺も頷いた。つまり、俺たちの方が、断然経験豊富ってことだよな。まあ、一日の長ってことで。


「フハッ、なるほど。私は間違っているのかも知れないな。だが、考えを改める気はない。だが、どうしても改めさせたいというのなら……少し、まともな研究成果を出して見ろ」


 くだらない研究と言っていた裕蔵が、成果を出せば認めてやるという趣旨の発言をしたのだ。冷たいように聞こえるかもしれないが、まあ、ようするにツンデレだな。「べ、別に認めたわけじゃないんだからねっ!し、仕方ないから研究成果出したら認めてあげないことも無いんだからねっ!」と言うことである。

 オッサンツンデレとか需要なさすぎだろ、誰得だ?

 え~、テストも終わったので投稿を。

 しかし、書いていて、えと、桜砕を抜いたのっていつだったかしら?

 ……3日前?!

 なんてことになりましたね。何十話も書いてると作中の日付感覚が分からなくなるという……。しかも実際書いてるのは3ヶ月くらいかかってますしね。

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