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《神》の古具使い  作者: 桃姫
京都編
113/385

113話:メイドSIDE.GOD

 夕方に姉さんに、メッセージを送って、由梨果を連れて行くことを伝えておいた。既読になっていたから、既に目を通したんだろう。


 はてさて、もうじき、約束していた午後10時となる。俺は、朝からずっと一緒に居た由梨果を連れて、ロビーにやってきていた。


 俺は、姉さんを待ちながら、ロビーを見渡す。もはや、部屋の外へ出ることの出来る時間をオーバーしているので生徒の姿は見られない。いるのは、従業員と、監督役の教師だ。なお、今日は、こそこそしていないで、ロビーで待っているのは、教師である由梨果を連れて行くから、教師と一緒ならばとがめられないから、と言う理由である。


 秋世よりも数段信用度が高い由梨果なら、確実に何も言われないのである。いや、よかったよかった。秋世よりも由梨果だな、これは。


 まあ、かといって、秋世がダメなわけではない。何せ、可愛いしな。そして、何より、タクシーとして便利だ。


 ……俺の中の秋世の好感度って、一体どうなっているんだろうな。高いのか、低いのか、いまいち分からんな。


 まあ、秋世の話はどうでもいいから置いておこう。それよりも、姉さんは中々来ないな。何かあったのだろうか。


 そう思って待っていると、欠伸をしながら姉さんがやってきた。緊張感ねぇな。まあ、別に変に緊張しろとは言わないけどさ、もうちょっと、こうピリピリした雰囲気でもいいんじゃないの?


「ふぁあ、眠いわね」


 どうやら少し眠いらしい。まあ、姉さんらしいと言えば姉さんらしいな。大方、友だちと盛り上がって、はしゃぎ過ぎて、疲れが眠気となって襲ってきたんだろう。……いや、姉さんがはしゃいだ程度で疲れるか?


「では、とりあえず、先に外へ出ましょうか。紳司様」


 小声で、俺の耳元に囁く由梨果。別に囁かんでもいいだろうに。……まあ、いいか。それで、まあ、とっとと移動するにしても、姉さんがな。


「何、移動すんの?」


 あ、聞こえてた?それとも勘か。相変わらずだな。








 俺達は、とりあえず外に出た。まず、姉さんと由梨果は初対面だからな。互いに紹介しあわないとならないだろう。

 と、言うわけで、両方を知っている俺が間を取り持って紹介することにした。まあ、これが一番正しい対応だと思う。


「えと、こちらは、俺の姉の青葉暗音姉さん。鷹之町第二高校の2年だ」


 俺が紹介すると、姉さんは微妙な顔を浮かべていた。どうかしたのだろうか、何か、自分がやったことをそっくりそのままやられてなんと言っていいか分からないって表情のようにも見える。


「で、こっちが、桜麻由梨果先生。俺の元担任で、現在は副担任だ」


 そして由梨果を紹介する。由梨果は、ぺこりとスカートの裾を摘みながらお辞儀をする。、元メイドだからか、むちゃくちゃ礼儀正しいよな。いや、これが礼儀としてあってるのかはわからんが。


「へぇ、あっと、今、紹介にあったように、姉の暗音よ」


 俺の紹介の後に、自ら、改めて自己紹介する姉さん。


「自分は、桜麻由梨果と申します。紳司様とは、今後とも永い付き合いとなると思いますので、暗音様もよろしくお願いします」


 姉さんは、そのものいいや「様」付けに一瞬疑問を覚えたようだが、流れと雰囲気で、理解したようだ。


「貴方、前にメイドでもやってたの?」


 ズバリと指摘する姉さん。やっぱり、流石だな。あの動作と言動だけで、正解に辿り着く辺り、常人離れした思考力だ。


「師はスーパーメイドです」


 その言葉に、姉さんが眉根を寄せた。何だ、知ってるのか?


「スーパーメイド……。シュピード・オルレアナ?」


 シュピード・オルレアナ。それが、由梨果の師のスーパーメイドだってのか?てか、姉さんは、それをどこできいたんだよ。


「知っているのですか?」


 由梨果も流石に驚いたのだろう、目を丸くして姉さんに問いかけた。姉さんはと言うと、肩を竦めて言う。


「あたしの中のグラムが言ってたのよ。新しい主人を見つけたとかどうとかってね」


 グラム……グラムファリオか。姉さんの中にいるって言うそいつも中々に謎な存在だよな。


「そうですか。自分の元を去った後、どうしているのかは聞いていませんでしたので、それが聞けただけでも嬉しい知らせですね」


 なるほど、シュピード・オルレアナね。…………シュピード?シュピード・オルレアナ?!


「待て、シュピード・オルレアナって、あの、シュピードか?

 ライア・デュースのメイドにして、最強のメイドと名高いシュピード・オルレアナ?!」


 その言葉に、姉さんも由梨果も目を丸くした。しかし、まさかとは思うが、あのシュピードか?一瞬、マジで気づかなかったぜ。


「紳司様もご存知なのですか?」


「あら、あたし、ライアって名前も喋ったっけ?」


 由梨果、姉さんの順で疑問の声を上げる。しかし、懐かしい名前を聞いたものだな。異世界の辺境貴族とそのメイドが、今も生きてるとは信じがたいが、あのメイドならそもありなんか。


「シュピード……。死ね」


 嫌な思い出を思い出しちまった。あの女、いつか殺すぞ、マジで。


「ああ、あの馬鹿の話は、今はいい。思い出したくねぇよ。そろそろ、あいつ等も来ることだろう」


 あいつ等ってのはもちろん市原家の3人のことだ。なお、シュピード・オルレアナと俺の因縁については、前世の話なので、少しだけ簡単に回想すると……。








 俺の前世、六花紳司は、刀鍛冶をやっていた。その交友関係は幅広く、世界広しと言えど、どの大陸にも、俺の知り合いがいた。


 その例として挙げられるのが、勇者レル・フレール=ヴィスカンテや魔王ヴェノーチェ・ヴァンデムだ。

 そして、その他にもレン・オオミやナオト・カガヤなんて刀鍛冶も挙げられるわけだが、そんな知り合いの中に、辺境の貴族ライア・デュースがいた。


 デュース家は、昔から、さほど大きな家柄ではないし、王族であるわけでもなかった。しかし、そんなデュース家の家柄を大きく広め、魔物などがはびこる辺境を支配した当主がいた。それがライア・デュースだ。


 彼自身も強かった。月光神紅なんて名前で呼ばれるくらいにはな。そして、そのメイドはもっと強かった。


 カオス・オブ・レッドムーン、月龍天紅、混沌に塗れた紅の月などと恐れられた女メイド、それがシュピード・オルレアナだったのだ。


 俺は、ライアに依頼を受けた。その依頼は、刀を打って欲しいというものだった。まあ、刀鍛冶への依頼なのだから当然だろうか。


 しかし、俺は、彼へ刀を打ちたくなかった。そして、断ったら、ボコボコにされたんだよ、シュピードに。何だかんだで、刀を打ってやったし、そうこうしているうちに仲良くはなったけどな。


 だが、未だに、あいつと、そして静葉が組んで、俺に悪戯をするときは、真面目に死にかける。


 寝てたら上空からパラシュートなしでスカイダイビングとか、気がついたら縄で縛られて踏みつけられてるとか、思い出したくは無い。


 まあ、あいつらがどうなったかの顛末は全く持って聞いていないんだよな。しかし、未だに生きてるってことは、普通のメイドじゃなかったんだな。

 まあ、素手で龍血種とやりあうだけで化け物だよな。


 化け物で思い出したが、同じように龍種と戦った馬鹿が俺の打った刀を使ってるんだよな。正確には俺が打ちなおした、だけどな。

 甲龍王(こうりゅうおう)アルシャリグノス。最上龍種と言われるそれと刀で戦った剣士……侍と呼ぶべきか?

 【血塗れの月(ブラッディー・ムーン)】と呼ばれた女、雨月(あまつき)時雨(しぐれ)。最強と名高い女だったが、シュピードと比べると、若干あれな気がするな。





 とまあ、少し関係ない話もあったが、そんな嫌な思い出があるわけだ。

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