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《神》の古具使い  作者: 桃姫
京都編
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103話:魂と転生SIDE.D

 あたしと龍馬と螢馬が車に乗り込む。車は、リムジンだったわ。金持ち臭いわね。でもまあ、ぶっちゃけリムジンなんて二度と乗ることがない……こともなさそうよね?父さんとかめっちゃパーティ行ってるし。


 割りと頻繁に乗れそうだけど、まあ、初体験だからね、ちょっとウキウキするわよね、リムジンって。


 まあ、そんなことはどうでもいいのよ。メタ的に言うなら、きっと修学旅行から帰ったら乗ることになるだろうから。


 しかし、家を潰したら、こうやってリムジンに乗ることも出来なくなりそうだけど、その辺理解してんのかしらね、螢馬って。


 家を無くすとは言え、普通に考えて、あたしが潰したとかならともかく、自分で潰せば、絶対に家が元通りに……なんてことは無いからね。

 いえ、正直に言うと、あたしは、そく家を潰す予定だからそんなことは考えなくてもいいんだけどね?


 と、そんなことを考えている中、グラムが話しかけてきた。


「少しいいか?」


 グラムの慎重な警戒するような声に、あたしは思わず眉根を寄せた。何よ、いつになく真面目な感じね。


(何よ?)


 あたしが念話で問いかける。すると、グラムは、少々言いづらそうにあたしに聞いてきたのよ。


「お前、最近、自分の深想心理に潜っているようだが、大丈夫なのか?」


 ああ、前世の夢のことかしら?あれ、自分の意識で見ているわけじゃないんだけれど。まあ、いいわ、簡単に説明しましょ。


(大丈夫よ。前世の夢を見ているだけだから)


 あたしの言葉に、グラムが停止したわ。なんのよ、人に話を聞いておいて黙るとか失礼すぎない?


「お前、それは本当か?」


 あ、復活した。それにしても本当って何に対して言ってるのかしら?って、まあ前世のことについてでしょうけど。


(本当だけど、何か問題あるかしら?)


 特に何も問題はないと思うんだけど……。前世を認識していることについて疑問に思ってるとか?輝とかはそんな自覚、なさそうだったし。


「問題大有りだ。それが本当だとしたら、お前は人間ではないぞ?」


 ……は?


 人外の化け物に、いきなり人間じゃない認定されたんだけど、どういうことかしら。全身から刃を生やした校舎ばりにデカイ化け物に化け物呼ばわりされるってことは、あたしの体からは何が生えてるのよ?


(いきなり酷いわね)


 憤慨しながら念思でその思いを伝えると、グラムは、あくまで真面目にあたしに返事をする。


「いや、本当のことだ。転生と言ったな。本来、転生などできないのだよ」


 は?いえ、してますが何か。と思わず言ってやりたくなったんだけど、どういうことなのかしら?


(意味が分かんないんだけど、説明してくれるわよね?)


 てか、ここまで言って説明しないわけがないわよね?このまま放置とか……訳が分からん!


「ああ、説明はするが……。その前に、お前は転生と言うものを知っているのか?」


 いや、まあ、一般的な知識程度にはそりゃあるわよ?いわゆる、あれでしょ……輪廻転生ってやつ。


(輪廻転生ってやつよね?)


 人は死んだ後、魂が別の場所へ行って……、みたいなやつ。


「ふむ、まあ、そういう解釈もある。しかし、実際のところ、この世界を含めて、全ての世界で死ぬと冥界か天界に送られる場合もあるし、消滅する場合もある。天界や冥界へ行った魂も《リセット》して……と言うより完全消去され、それを原料に新しい魂を作る。《リサイクル》と言ったほうがいいか?」


 マジで?!そんな仕組みになってんの?初耳だけど。


「ただし、それが適用されない世界もある。まあ、適用される世界では、例えば冥界からは死神が、天界からは戦乙女が迎えに来る……とされるが、迎えに来なかった場合は普通に消滅する」


 へぇ……。その迎えに来る魂と迎えが来ない魂ってどう違うのかしら。運なのか、それとも理由があるのかしら?


(迎えが来ないのってニートとか人間の屑とかなの?)


 そんな魂、あたしが死神なら決して迎えに行かないんだけど……。


「いや、そんなことは無い。ふむ、確か管理局にその辺を数値化していた奴がいたな……。確か、【魂量(こんりょう)数値】、と言ったか。一般人を0.002と換算した魂の器の大きさだ。その器がデカイ者なら迎えが来る」


 なるほどね……。でも器?実際の中身じゃないのかしら?中身が無いなら集めても意味ないじゃないの?


(魂自体の量とか質はいいの?)


 あたしの問いかけにグラムはちょっと悩んだ様な声を漏らした。無論、キンキンと音を立てながら。


「難しい話だが、例えば、烈火の元三門……ああ、まあ、凄く強いと言われているやつですら【魂量(こんりょう)数値】は52程度だ。その【魂量(こんりょう)数値】の半分くらいが魂の大きさだな。

 しかし、考えてもみろ。転生、何て馬鹿げたことをするのは、そうじてその【魂量(こんりょう)数値】が大きい奴だが、転生しようにも一般人の器が0.002程度だ。魂を移し変えれば当然オーバーフローだ。

 無論、【魂量(こんりょう)数値】が低ければ転生できるというわけではない。【魂量(こんりょう)数値】が低ければ、死した瞬間に、その魂が消滅する。だから、死神も迎えには来ないということだ」


 へぇ、ってことは、あたしは【魂量(こんりょう)数値】がそこそこ高かった上に、この生まれてきた暗音の魂が前世以上に大きかったからこうなったってこと?


「だが、な。転生したところで、2つの魂をその身に宿して、その状態を維持し続けることはできない。魂の質も量も多少は増減する。

 例えばの話だがAという少女が生まれる。その【魂量(こんりょう)数値】は200だとしよう。そこに生前【魂量(こんりょう)数値】が100だった魂が入るとする。200のうち100は自分の魂、50くらいはもう1つの魂が占拠する。しかし、【魂量(こんりょう)数値】の半分程度が魂の量とはいえ、それも変動する。器の限界まで膨れ上がることも……ないことはない。では、自分の器を自分の魂で満たそうとしても、邪魔する50くらいの魂があったらどうなる?」


 は?えっと、邪魔になる魂は追い出すか、それとも統合するか、ってことじゃないの?じゃなかったら、自分の魂の増える分を放出するか。


「統合は不可能だ。それこそ、兄弟や姉妹、親子なんかだったら話は別だが、あまりにも別人があると人格が崩壊する。それを自我が処理しきれず、大抵死ぬ。死ななくとも植物人間だ」


 人格の統合に耐え切れないのは、それこそ兄弟や姉妹、親子なんかも同じでしょ?何で、大丈夫なのよ?


(血縁があるなしの問題じゃないと思うけど、どういう意味なの、それは)


 あたしの疑問に、グラムは答える。


「魂の質、と言えばいいか。性格と言うものは育った環境で似たり寄ったりになる。その質と性格が近ければ近いほど統合したときのダメージは少ない。まあ、尤も、稀にすごく離れた先祖や親戚ではあるが血のつながってないはずの人間と、魂の質や性格が似ることがある。そう言った場合は不可能ではないかもしれない。

 あとは、よほど前世の魂の意識が強い場合か。その場合は、宿主の魂を自身の物に塗り替えることがあるな」


 なるほど、例えば、輝なんかは光と性格が似てたから転生できた、みたいな話なんかな?でも、割りとあたしも輝も紳司も父さんも母さんもってなってくると、そんな人外って言われるほど難しい話じゃない気がするわよね?


(で、何が人外なのよ)


 人を人外呼ばわりした理由を教えてもらおうかしら?


「少なくとも、お前の周りの人間はほとんどが健在だろう。祖父母の代までな。そうなると、転生できて、魂の統合できる可能性があるものはいない、はずだ。少なくとも数代前の人間と統合できる可能性は皆無に近い。他人ならもっとだ」


 なぁ~るほど。つまりあたしはイレギュラーってわけね。通常じゃありえない転生をはたした。


「いや、……三神の、それも篠宮の血筋ならありえないこともない、か。しかし、お前は蒼刃の血筋だ」


 ちょっと、待った。篠宮の血筋ならありえないこともないってどういうこと?


「転生をやる上で、全ての魂の意思を保っている存在が1つだけある。それが……天辰流篠之宮神あまたつるしののみやのかみだ。初代は、自分の死をトリガーに発動する契約を交わしていた。それが、自分の固有能力【絆】によって、その魂の器を固定し、それをより大きな器に移していく転生システムだ。それが神としての、奴の能力だったんだよ。

 その転生システムにより転生した者は全ての自我を保っているという。まあ、俺が知っているのは2人目までだがな」


 へぇ、凄いじゃない、神様。普通なら出来ないことをしてるんだから。でも、じゃあ、あたしが転生できる理由はなんなのかしら?


「だから、お前の転生話が与太であるか、本当に転生しているとしたら極僅かな可能性をその身に体現しているか、のどちらかだな」


 そんなもん、決まってるじゃない。後者よ、後者。なんたってあたしなんだもん。


「しかし、そんなお前の前世は、どんな人間なんだ?無論、転生していると仮定して、だが」


 そんな失礼なことをグラムが言う。ったく、本当に、失礼ね。あたしは正真正銘、転生してるっての。


(あたしは……八斗神(やとがみ)闇音(あんね)。【闇色の剣客】と呼ばれた殺し屋よ)


 グラムはキンキンと音を立て笑った。その笑いの意味が分からずあたしは眉根を寄せたわ。


「ハッハッハッハ!なるほど。もう、魂の統合も始まっているようだな、その様子から察するに。信じよう、お前の与太話。

 それにしても、よりによって八斗神(やとがみ)闇音(あんね)とはな。俺の牙の剣を使っていた奴の転生体にこの身を宿すとは、随分と数奇なめぐり合わせだ」


 あたしは、悟ったわ。今、あたしはグラムに対して「あたしは……八斗神(やとがみ)闇音(あんね)」と言った。それが、つまり、魂の統合を示しているってことを。

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