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聖者の行進  作者: mukina
幼少期編
3/3

第二話 ご利用は計画的に

これで打ち切りです。すまねえみんな・・・。

チンピラが帰った後、俺たち3人(俺、フィオ、団長)はとりあえずアルビスおじさんをベッドに寝せて、マイレの手当てを手伝いながら、事情を聞いていた。


「……つまり、農地面積を広げるために借金したら、あのいけすかない軟弱男が取り立てに来るようになったってことだな?」


とまとめたのは団長。


「なんで広げようとしたんだ?」


「私は学がない人間です。字は読めないし、足し算引き算も出来ない。けど、いやだからこそ、マイレには勉強を頑張って欲しいんです。マイレの教育資金の確保と相続させてやれる財産を増やすために金を借りて土地を買おうとしたんですがね。……このザマです。」


「お父さん…。」


アルビスは力なく笑った。


「ゴメンな…マイレ。」


そのセリフにフィオがいきり立つ。


「おじさんは悪くないわ!!あの変態ロリコン男が悪いのよ!!」


「フィオ…品がないよ…。ところでおじさん。」


「なんだい?」


「契約書や、返済計画書やら、それ関連の書類を見せてもらってもいいですか?」


「ああ、そこの棚の中にある。」


俺は小さな桐だんすから書類を取り出す。


「あーやっぱり。」


「何が?」


「おじさん騙されてますよ。こんなメチャクチャな計画、貴族でもなけりゃ返せないです。」


そう、チンピラが取り立ててる時点でおかしいのは分かるが、それにしてもやり取りが変だった。


>「その事はお借りするときに、考慮して返済計画を立てさせてくださいと言ったはずなんですが…。」


>「うるせえ!!ああ言えばこう言いやがって!黙れ!!」


返済できないぐらいの計画?そんなものを立てて何になるというのだろう…。貸した方は返済されてナンボだというのに…。


「おじさん、書類を読めないんですよね。」


「ああ、そうだよ。」


「返済計画はどうやって立てたんですか?」


「あれとは別の男と話し合って、書いてもらったんだ。」


…なるほど。


「家族については何か聞かれましたか?」


「ああ。マイレについて聞かれた。」


つまり…


「初めからマイレを連れて行くのが狙いだったみたいですね。」


「はぁ!?」


と叫んだのはフィオ。


「ちょっと待って。あのチンピラはマイレが家にいることを知らなかったわ。ていうかそもそもなんでマイレは学校休んだの?」


「また父さんが暴力振るわれると思ったから、学校行くふりして、あらかじめ開けておいた窓から戻ったの。でも押し入れに隠れてたら、父さんに見つかっちゃって、怒られたんだけど、ちょうどその時チンピラが来たから、家の中にいなさいって言われて待ってたんだけど、結局飛び出して行っちゃったの。あとは見ての通りよ。」


「その行動を計画立てた男が読んでたんだよ。」


「リィス君、そんなマイレの性格みたいなことまで私はしゃべっていないよ?」


「おそらく…」


「「内通者がいる。」」


団長と俺の声が重なった。


**********


「はぁ…それであなたはすごすごと逃げ帰ってきたというわけですか?」


「……ああ。」


「まったく…使えない人ですねぇ。……あなた、誰に仕えて仕事をしているのか分かっているんですか?」


「俺は金で雇われただけだろうが。」


「なるほど、よーく分かりました。あなたがなにも考えずに生きている人であることが。」


「あぁ?死にてぇのか!?」


「それはこちらのセリフですよ。」


パチン。スーツを着た男が指を鳴らすと、ぞろぞろと黒服の屈強な男たちが扉を開けて入ってきた。


「ちょっオイ!!話が違うじゃねぇか!!」


「さようなら。」


**********


「「「内通者がいる?」」」


しばしの沈黙が流れる。それを破ったのは(やはり)フィオだった。


「……どういうこと?説明してくれないと分からないわ。」


結構分かりやすい…というか単純すぎる話だと思うんだけどな。

俺とおやっさんで三人に説明する。


「第一に、不可能な返済計画。こんなものを立ててる時点で、金を返してほしいわけじゃないと自白しているようなものです。そしてマイレを連れて行く口実にもなります。よく考えれば、貸した土地も差し押さえれば簡単に回収できます。」


「しかも複数犯ときてやがる。あのチンピラはバカそうだったから、返済計画をたてた方が黒幕かもしくは黒幕と直接つながっていそうだな。」


「そして極めつけは、さっき言った通り内通者がマイレの行動を完全に読んでいるということ。マイレの近くにいる人でなければ、そんなことは不可能です。」


「アルビスの代わりに計画を立てたヤツじゃねえのは確かだな。もしそうだったら会った時点でアルビスが気づいてるだろうからな。そしてもちろんあのチンピラでもない。」


「となると、残る可能性は謎の三人目、つまりマイレと親しい内通者だけというわけです。」


「「「なるほど~。」」」


三人は声をそろえて納得した表情を見せた。だが、直後にマイレが不思議そうな表情を浮かべる。


「でも、私なんか連れて行ってどうするの?こんな普通の女の子に大した価値があるとは思えないんだけど。」


「ある程度推測はできるけど、証拠がないからまだ言えないな。」


「じゃあ探しに行きましょうよ!」


「え?何を?」


「決まってるじゃない!証拠よ!」


***********


「やあ、いらっしゃい、マイレちゃん。」


「お邪魔します、おじさん。いえ、副村長。」


「やだなぁ、そんな他人行儀な呼び方。おじさんでいいよ。さあ、中にお入り。お茶を淹れよう。」


マイレはゆっくりとこの村の副村長であり、同時にアルビスの兄弟である人物の自宅に入った。すすめられた椅子に座り、またゆっくりと叔父の顔を見る。本当に自分の父に似ていない。年も離れていて、かなり若い。異母兄弟なのだろうか。


「今日はどうしたの?」


マイレは音もなく息を呑む。少し緊張した面持ちで、言葉を放つ。


「私と父を助けてほしいんです。叔父さんも誰かから聞いているのでは?父が高利貸しからお金を借りてしまい、困っていると。」


「うん。聞いているよ。大変そうだね。でも、僕ができることは無いんじゃないかな?兄弟だし、僕は兄さんにお金を貸してもいいけど、兄さんがそれを良しとしないんじゃないかな?」


「いえ、そうではないんです。」


「?どういうことだい?」


「高利貸しとの契約書を、見せてください。」


空気が、凍った気がした。


「どういう、ことかな?」


「高利貸しと借金取りの協力者は、あなたですよね?叔父さん。」


一拍置いて、マイレの叔父である男は答えた。


「そんな物は無いし、協力もしていないよ。疑うなら調べてみればいい。」


「だってさ。すごいわねリィス。アンタの言った通りの展開じゃないの。」


「ま、こんなもんだよ。ね、お父さん。言ったとおりでしょ?」


突然、男の家に入ってきたのはフィオとリィス。そして村長のロキだった。


「なッ……村長!?」


「やあ、副村長。最近羽振りがいいみたいじゃないか。アルビスとは対照的にねぇ?君が自分の畑の水路に設置した水車や新しく購入した農具の資金はどこから用意したのかな?」


「そッ・・・それは・・・。」


「証拠は無いと思ってたみたいだけど、村の出納帳にバッチリ書いてあるんだよね?誰かさんが急に多額の入金をして、それを使って施設の拡張をしたのもね。」


「ぐッ・・・クソッ!」


頭がまわらない。反論が出来ない。白。すべてが真っ白だ。どうしてこうなった?完璧な計画ではなかったのか。こんなはずではない!馬鹿な、馬鹿な、馬鹿な馬鹿な馬鹿な!


「と、いうわけで、おとなしく捕まってくれる?死刑にはならないから安心してあきらめな。」


**********



副村長を摘発した後、村長の権限でおじさんの借金はちゃんとした利率に計算し直された。貸した側が裁判を起こせばまたややこしくなるが、今のところそんなそぶりは見せていない。アルビスおじさんが病気であまり働けない分、マイレも働いて稼いでいるようだ。もちろん学校に通いながら。本末転倒では?と思ったが、マイレは好成績を修めているので問題ないようだ。子守りの仕事らしいが、楽しんでいるようでなによりだ。


だが、いい事ばかりが続くわけじゃない。


その年は近年稀にみる凶作で、我が家の食糧も足りなくなっていた。だからフィオを奉公に出すことになった。・・・工業派の貴族の家らしい。もちろん俺は反対したが、無力な子供の力ではどうすることもできなかった。


別れの朝。


「「・・・。」」


玄関で向かい合う俺とフィオ。母が別れの言葉を促すが、声が、言葉が、・・・出てこない。


「大丈夫よ、生きていればまた・・・・・いつかどこかで会えるわ。きっと。」


母の声が震える。その言葉が気休めでしかないことを知っているからだ。普通の人間は、領地の間を行き来することなど無い。ましてやうちは農民。自分の土地を離れるなどありえない。


「リィ、ちゃんとご飯食べるんだよ?もう私のためにご飯を」


何を言えばいい。最後だぞオイ・・・。動けよ俺の頭・・・!そう念じても、頭が真っ白で、なにも出てこない。


「じゃあ、元気でね!」


何も言わない俺を見て、

・・・様々な感情が混ざり合っていて、言葉では表しきれない表情だ。

両親と共に、家の前まで迎えに来ている馬車に乗る彼女を見ても、いまだに俺は呆然としていた。

馬車が動き始める。窓から、

それを見て、ようやく俺の体が動いた。

弾丸のような勢いで、すでに加速を始めた馬車に向かって走る。


「絶対、会いに行くから!!!大人になったら必ず、キミに会いに行く!!!それまでは・・・!」





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