第八話 この状況下で衣服を身に付けるなら?
今回は題名で解ると通り衣服についてです。着替えが無いって、けっこう困りますよね。
前回のあらすじ、妖精さんのおかげで生活感が増してきました。不味い、私、もう妖精さん無しでは生きていけないかもしれない……
そんな紐になりかけている私を尻目に、妖精さんはリスの様に食事を頬張っていた。正直、のどに詰まらせないか気が気ではない。
「いやあ、おんじんさんはりょうりじょうずですね」
うれしい事言ってくれるじゃないの妖精さん、正直設備が整っていない状況での簡素な料理だったのだが、喜んでくれて良かった良かった。
しかしこの妖精、私と同量の食事をとっている筈なのだが、明らかに体積オーバーしてるよね。その身体のどこに蓄積されてるのか非常に気になる。
いやいや、それは置いといて。
「それで妖精さん、ちょっと相談したい事があるんだけど」
食事も終わり、一息ついた所で本題に入る事にする。とりあえず、最初の議題は最も早期解決が必要な事から降ってみようと思う。
「妖精さん」
「はい?」
「新しい服欲しいんだけど、どうにかして手に入らないかなぁ?」
そう、衣類の問題である。
今まで特に語らなかったが、現在の私の装備は就寝用として使用していたTシャツと短パンである。おおよそこんな異空間で着用する物では無い。無論変えの衣服なんぞ存在せず、昨日の朝からそのままの格好である。
なにやらもっと他に有るだろう的な声が聞こえてくるが、汗やら何やらでベッタベタな服をいつまでも着ていられるか。いい加減、コレを脱ぎ去りたい衝動を抑えきれずに全裸になりかねない。
とは言ったが、こんな人が居ない場所で服の入手なんぞ出来るはずもないだろう。妥協点としては、服の代わりになりそうな植物か動物の毛皮だろうか。動物の場合は皮を剥ぎとったり解体したりする必要も出てくるだろう、正直経験も無い私には難しそうだ。
そんなしょうもない悩みも真摯に受け止めてくれるのが、我らがイケメン妖精さん。悩んでいる時のポーズなのか、う~んと唸りながらコロコロと転がりまわっている。実に微笑ましい。
そう言えば悩んでいる姿は初めてみたな、流石に難しいという事か?
そう考えた矢先、妖精さんの回転が収まった。どうやら考えがまとまった様で、トコトコとこちらに歩いて来ている。あの妖精さんが悩みぬいて出す答えだ、どの様な内容なのかも気になる所だ。
「ざいりょうがあればつくりますよ?」
「まさかのオーダーメイド!!?」
ああ、思わず叫んでしまった!
流石の妖精さんクオリティ、驚きの万能ぶりである。そう言えば今更気が付いたけど、この妖精さん服きてるよ。多大な知識とこの技術力、本当に高性能な種族である。
「ただ、おんじんさんのさいずつくったことないです。ちょっとじかんがかかるかも?」
「あ、いやいや、作ってもらえるだけで十分だよ。ありがとう」
なるほど、さっき悩んでいたのはそれに付いてか。そりゃそうだ、形が同じだろうとサイズの企画が十倍以上違う服を易々と作れるはずもない。これは多少の失敗も踏まえながら、材料を提供しなければならないだろう。
さて、それでは私も役目を果たそう。
「“妖精”と“服”で検索」
光明も見えたので、早速検索を開始する。すると該当する項目が一件だけ存在した。
≪ 妖精族の木綿 (自然/植物) コスト:100 ≫
「妖精さん、服の素材だけど、この“妖精族の木綿”っていうので間違いないかな?」
「はい、たぶんだいじょうぶです」
一応確認してもらい、問題無いと解ったので召喚する。そこに現れた奇妙な植物を確認する。木綿と名が付くだけあって、白い綿の様な種子が先に付いていた。
≪ 妖精族の木綿 (自然/植物) コスト:100 ≫
・詳細:妖精が育てたと言われる木綿、上質なコットンが採取出来る。
・効力:素材採取/採取制限(Lv.5)
・生産:エネルギー還元 25
詳細についても問題はなさそうだ。採取制限なるものが付いているようだが、妖精さんなら恐らく仔細無いだろう。詳細にも妖精が育てるとか書いてあるし。
などと考えているうちに、妖精さんが召喚された植物に手を伸ばしていた。そしてほどなく、まるで自ら望んだかの様に柔らかな種子が地面に落ちた。どうやら無事“採取”ができたのであろう。
≪バロメッツウール(素材/植物) コスト:0 ≫
・詳細:妖精族の木綿から採取できる上質なコットン、少量しか取れない。
・効力:衣類素材(魔力耐性付加)
・生産:エネルギー還元 180
魔力耐性付加か、また魔法関係の項目が出てきたな。というか私服作ってもらうのにそんな大それた機能は必要ないのだが。
しかしこの“バロメッツウール”なるもの、本体の倍近いエネルギーを生み出すのか。採取制限とやらをどうにかすれば、エネルギー確保をもっと楽にできるのは?
まぁそんな事より今は服だ、一日でも早く作って頂けるよう、全力で妖精さんのサポートをせねば。
「どう?妖精さん、あと何がどのくらい必要かな?」
詳細に少量しか取れないとある為、やはりこれだけでは作れないだろう。それに木綿の他にも糸や染料、裁縫道具なんかも必要になるかもしれない。まぁあまりに大量に要求されると困るけど。
そんなこっちの事情を察したのか、妖精さんは再びコロコロしはじめた。……うん、確かに可愛いが、ここまで来ると、最早あざといと言わざるを得ない。
「う~ん、これがじゅっこくらいあれば、いっちゃくつくれます?」
そこ疑問形で言われても困るわぁ。まあ妖精さんも初めてなんだろうし、発言に自信が持てないのだろう。10個と言ってはいるが、少し多めに呼び出した方がよさそうだな。
「わかった、“妖精族の木綿”11本を召喚!」
私の声に応じて、新たに白い綿毛達が咲き誇る。最初に出したのを含めて12本、合わせて1200ものエネルギーを消費した事になる。一気に懐がさむくなるなぁ……
「ありがとうです、おんじんさんはさわらないようにきおつけてください」
そういって採取を開始する妖精さん、事前に触るなと念を押しているあたり、私が触ると採取が出来なくなってしまうのだろう。採取制限というのは私が思っているより厄介者の様だ。
「できました」
「って速いなぁ!?」
数秒考えている内に完成とかどういう事だ!?というか針や糸は必要無かったのか?既に持っていたとかか?それ以前に私、寸法とか図られて無いんですが??
非常に疑問は多いが、とりあえず確認してみよう。
≪バロメッツシャツ(衣類/外着) コスト:0 ≫
・詳細:妖精族の加護が宿るシャツ、魔術への耐性を持つ。
・効力:物理耐性10%/魔力耐性20%
・生産:エネルギー還元 1890
「……強くね?」
見た目真っ白なTシャツなんだか、効力を見る限りとてつもなく優良な装備だ。作成の際の消費を考えれば、何気に還元値も上昇している様だ。妖精さんスペック高いにも程があるだろ。これからの事全て、妖精さんに頼めば全部解決してくれそうだ。楽が出来て嬉しい半面、自分の役に立たなさが恨めしい。
「どうですか?」
「あっ、ああ、ありがとう。……うんサイズも問題ないよ」
妖精さんに声をかけられ、再び品を確認する。意外と厚手でしっかりした作り、その上肌触りもよい、知識は無くてもこの服が良い品だというのは私でも見て取れた。
しかし、エネルギー生産方法って結構あるものだな。最初は魔晶だけが頼りだと思っていたのだが、もっとよく探せばまだまだ見つかりそうだ。とはいえ、全て妖精さんが関わっているからこその結果だ。今後どうなるか解らないし、いつまでも頼りっぱなしになる訳にもいかないだろう。
なにか、探さなければならないか、私一人でも可能な生産法を。
「おんじんさんおんじんさん、ざいりょがすこしあまったのでこれもつくってみました」
と、ここで妖精さんから声が上がる。どうやら衣服の材料は十分足りていたようで、おまけを作る余裕すらあったらしい。
「ほんと!ありがとう。何を作ってくれたのかな?」
「これです」
≪バロメッツショーツ(衣類/下着) コスト:0 ≫
・詳細:妖精族の加護が宿るパンツ、魔術への耐性を持つ。
・効力:物理耐性5%/魔力耐性10%
・生産:エネルギー還元 395
「……下着っすか」
……まさか下着まで作ってくれるとは思わなかった。
嬉しいんだけど、なんか、すげぇ、ハズイです。
「?おんじんさん、かぜですか?」
…………察してください。
この服、10%の攻撃軽減が付いているとか何気に優秀ですね、まぁ着用しているのが一般人なのでほとんど意味無しですが。次回、新たなエネルギー生産方法を探します。