第五話 この小さな友人に可能性を見付けるなら?
ここにきてメインの相方が登場します。いやぁ、長かった。今まで独り言しか喋らせる事が出来なくて大変でした。
前回のあらすじ、もう少しで殺人未遂を起こす所でした。そしてそれを防ぐために大量のエネルギーを消費して現在に至る。だがエネルギーの件については今更後悔はしていない、あれはそれなりの覚悟をしてからの結論だった。
だからそこは良い、問題は別にある。
あの時、私は妖精を助ける為に“魔壊樹”とう大袈裟な名前の木を召喚することになった。しかし消費するエネルギーの量から御大層な代物が出て来るのは明らか、大きさもそれなりにスゴイ物が出て来るだろうと私もある程度予想していたのだ。
そう、それなりに、だ……
「……どう見ても直径一km超えてるだろ」
予想外、いや、むしろ規格外と言った方が相応しい。
現れたのは市民球場並の馬鹿けた太さを誇る幹、森の中を思わせる程に生い茂り光を遮る枝葉、周囲の地面をひっくり返しながら張り付く岩の様に力強い樹根、それら全てを揃えた常識外れの大木だった。
この樹がたった一本生えただけで辺りは別世界、根に至っては周囲の地盤は愚か、私が召喚した河川さえも巻き込んでしまっている。無数に存在する根の隙間が疑似的な水路を築き、まるで渓流を思わせるほど見事な出来栄えだった。正に自然が作り出した芸術品、と言いたいが今回の場合も該当するかは正直微妙である。
それまで私の周囲にあったベッドや竈は突如現れた根によってひっくり返ってしまい、現在私が座っているこの場所もヤツの根っこである。
「流石にコレほどの物は考え付かなかったわぁ」
ぼやいて額に手を当てる。今日一日で何度溜息を付いた事か、そろそろ頭痛か胃痛が始まっても可笑しくない気がする。
「おんじんさん、あたまいたいのですか?」
そんなマイナス思考を続けている時、私の足元から舌っ足らずの癒し系ボイスが放たれる。
「だめですよ、したばかりみているとしやがせばまるうえしせいがまがります」
発音は子供っぽいが、どこか実家のバーサンを思わせる発言をしたソレは、私の膝の上までよじ登ってきた。その人形の様な物体は、私を励ますように大げさに手を振り動かしていた。
そう、コイツが例の木妖精である。
この樹を呼び出した後、ものの数秒で復活したこの小動物は、私と周囲の状況を確認して直ぐに「ありがとうございます」などと声をかけてきた。なにやら私以上に現状を把握できている気がする。それから奴は私の周りをくるくる回ったり、時折身体によじ登ってきたりと、先ほど倒れていたのが嘘のように動き回っている。詳細で状態も確認したが問題も見られない、この樹はしっかりと役割を果たしてくれた様だ。
助けてもらったという認識があるからか、木妖精は私に積極的なコミュニケーションを図ってくる。自分の身体を遊び場の様に使われている気がするが、悪意かないのでそのまま放置している。
「心配ありがとな、ちょっと調べものするから静かにしててくれ。」
そう言って、この樹についての詳細を再び表示する。
≪ 魔壊樹 (自然/植物) コスト:5000≫
・詳細:世界最大の大樹、周囲から大量の魔素を吸収し、何処までも雄大に育つ。
・効力:魔素吸引/魔術破壊/魔力放出/魔晶生成
・生産:エネルギー還元 1250
情報を再度確認しながら、妖しげなフレーズを見ながら乾いた笑いを浮かべる。魔術に魔力、ついでに魔素などと余りにも胡散臭い用語の応酬に再び溜息が出そうになる。しかし、何時の間にやら私の頭の上で寛いでる妖精さんが居る現実を鑑みるに、やはり魔法的な物が存在しているという事なのだろう。
まあ、魔法云々は今は置いておく。それより今は、この無駄にデカイ樹について考えねば。5000ものエネルギーを使って呼び出したのだ、これで何かしらの利益を生み出さねば、私の今後の生活がとんでもない事になる。今この樹に付いて解っているのは、妖精さんを元気にする力が有る事だけだ。それがこの木妖精限定の物か、今は姿を見せていない水妖精にも効果は出ているのかも解っていないし、その力が四つ有る効力の内、どれに該当するのかも解っていない。
他の三つの能力についても調べなければならないが、どうやって行えば良いのだろうか。残りのエネルギーが少ない以上、何度もゲーム機に頼る訳にもいかないのだ。
「ああぁあ~、この樹いったい何なんだよぉ」
誰に対してでも無く、質問を投げかける。どう考えても八方塞、こらえていた筈の溜息も結局付いてしまう始末である。
「まきさんがどうしたんですか?」
ここに来て意外な所から声が上がった。
髪の毛をつたって、私の肩に降りてきた妖精さんがこちらを見ていた。というか……
「まきさんって誰の事?」
「まきさんはまきさんです」
そう言い放ちながら、小さな指先を前方に向ける。そこに立っているのは、現在処遇に困っている我が家の問題児、末っ子の“魔壊樹”さんでした。
「まきさん?」
「はい、まのきのまきさんです」
妖精さんのネーミングセンスはこの際置いといて、この樹に付いてしっている!?
「コレの事知ってるの!?」
「はい、めずらしいけどゆうめいですよ」
この生物、知性の欠片も感じられない愛らしい容姿している癖に、私より知識に溢れている様だ。だがこれはうれしい誤算だ、この樹についての情報を聞き出せれば何かしらの解決策が生まれるかもしれない。
この樹が持つ四つの効力が一つでも解れば御の字、少なくとも彼らに影響を与えている効果の事は何か知っているだろう。
ここでの新情報、絶対に逃してはならない。
そう思った矢先、妖精さんは肩から飛び降り、木の幹の方に走って行った。
「まあそのはなしはおいておきましょう」
「えぇ!!?」
後生だから置いておかないでください!
ここで妖精さんを見失っては一大事、逃してなるものかと必死に追いかけた。しかし、それは杞憂に終わる。妖精さんは幹の前で止まり、手を当ててなにやら呟いていた。
それが終わったかと思うと、妖精さんはピン球くらいの大きさをした綺麗なガラス玉を抱えていた。こんなでかい樹と川しかない場所で、一体何処から取り出したと言うのか。
「おんじんさんにぷれぜんと、たすけてくれたおれいです」
そういって、抱えていたソレを私の掌に乗せてきた。多少混乱しながら手渡された物体を詳細説明で確認する。
≪ 魔晶 (自然/鉱物) コスト:0 ≫
・詳細:魔素を吸収する性質をもった物質や生物から採取出来る結晶、魔力の塊。
・効力:魔術強化/魔力消費軽減/潜在魔力増幅
・生産:エネルギー還元 3000
……何やらトンデモナイ代物を渡されてしまいました。
妖精さん妖精さん、殺しかけたのも目の前にいるソイツですよ。まぁそれは言わぬが花だったか。次回、樹について詳しく説明します。