第三十四話 この度行われる作戦の名を考えるなら?
……やっと書けたぞコンチクショ~、皆さんお待たせして本当に申し訳ございません…………orz
前回のあらすじ、なんか……バージョンアップ?したっぽいです。
何やら機能が拡張したらしいのだが、正直言って訳わかんねぇ。そもそも何が原因でそうなった?いました行動と言えば、ただお墓作っただけなんだけど、それが原因か?
……墓作って迷宮がバージョンアップとか、予想の斜め上過ぎるだろう。展開が読めないにも程があるぞ!それに拡張した機能って言ってもなぁ、どう扱えばいいのやら。
……とりあえず、友人に相談してみるか?
「えっとフィア、これ、どうしたらいいと思う?」
「持ち主にも分からないのに私が分かる訳無いじゃない」
ご尤も、返す言葉もございません。
とは言っても、私だってコレの扱いには正直困っているのだ。今後私が生きる為にもコイツの性能は十全に知っておかないといけないのだが、深く考えなかった故に川や巨大樹を召喚してしまった前例もある、迂闊な事をすると何が起こるか分からないのが怖すぎる。
くっ、この取説が無いゲーム機が憎い。一体どうすればよいと言うのだ!
「あぁ、やっぱり空賊さんから情報収集出来なかったのは痛かったなぁ……」
ため息交じりにそんな言葉を呟くと、割と真剣な表情をしたフィアが口を開いた。
「……止めときなさい、アレには係わらない方がいいわ。寧ろこの間の事は幸運だったと思っておきなさい、相手は犯罪者、下手に手を出せばロクな結果にならないわよ」
……やけに危険視しているな、あの空賊さんはそこまでの危険人物だったのか?
そう言えばその空賊さん襲来時にも似たようなこと言ってたな、たしか私と空賊さんを会わせたくないとか、まあその助言も空しく結局遭遇してしまったわけだが。
しかし、どうしてそこまで警戒しているのだろうか。実際に会って見たけど、色々と残念そうな思考をしていたが、決して悪い人には見えなかったんだけどな。
「そう言えばさ、なんでフィアは私とあの空賊さんを会わせたくなかったのさ?そんな害がありそうな感じはしなかったんだけど……」
そんな私の素朴な疑問に対し、呆れと不機嫌が混ざった仏頂面でフィアが声を荒げる。
「アンタねぇ、あの男は迷宮の主なのよ!」
「うん、そりゃ知ってるけど?」
だからこそアイツから色々な情報を聞き出せると思っているんだが、何が不満なんだこの娘は。
「全くもうッ、アイツはアンタと違って二代目の盟主なわけ!それはつまり!あいつはアンタと同じ盟主を一度殺してるってこと!更なる力を求めてアンタを殺しに掛かる事だって十分に有り得るのよ!」
……あぁ成程、確かにそれは有り得たかもしれないな。
私も一応同じ迷宮の主な訳だが全く思いつかなかったなぁ、まあ私はそんなもん要らんのだが。
なにせ私は、迷宮の主はこの場所から出られない、そんな状況下に陥っているのに次の迷宮を欲する意味なんぞ皆無なのだ。まぁあの空賊さんは例外なようだがな、リベラも唯一とか言ってたし飛び回る迷宮は他に存在しないのだろう。
でも、たとえ移動できたとしても、他の迷宮なんざ欲しがるかねぇ?
もう一つ迷宮を手に入れた所で何が変わると言うのか、最悪さらに変な制約を課せられるかも知れないと言うのに。それにもし本当に欲しがっているのであれば、他にも六つも迷宮があるんだからそっちを狙えば良かったのだ、今更になって狙う理由が分からない。
一昨日実際に話した時も迷宮を奪うみたいな話題は無かった、だからやっぱりフィアの予想は外れてると思うんだけどなぁ……
「とッにッかッくッ!!アンタは金輪際迂闊な行動禁止!何かやる際には私と要相談!数時間の作戦会議の後に数度の検証実験を踏まえた後、私の許可を得て初めて行動しなさい!良いわね!!」
物凄い勢いで私の行動に無茶な制限を掛けて来る彼女を前に、アンタの考え外れてるよ?なんて恐ろしくて言える筈が無い。とりあえずほとぼりが冷めるまで適当に相槌を打っていよう、その方がお互いの為になるだろう。
それにフィアの言っている事は全て的外れと言う訳ではない、あの空賊が私の命を狙う可能性が少しでもあるのなら、警戒を強めて損する事は無い筈だ。
……ま、ここに居ない人に意識を傾けたって仕方が無いし、今は目の前にある新展開について考えよう。
「……取り敢えず、空賊さんの事はもう良いよ、今はゲーム機について考えよう。これって要は機能が増えたって事で良いんだよね?……構造物創製は多分“召喚”の事だろうけど、じゃあこの支配領域ウンヌンは?」
「……単純に考えて、迷宮の領域を広くできるって事じゃないの?第一迷宮は超大型の迷宮だって聞いたことがあるし、盟主の意思で拡大できるならそれも肯けるわ」
……ふむ、やはりフィアもそう思うか、実際にそれらしい話もある様だし間違いないだろう、だが一番の問題はそれをどのように行うかだ。相も変わらず説明不足なゲーム機を見ながら、どうした物かと考えながら最早癖に成りつつある溜息を吐いた。
……ん?いや待てよ、今までの事を思い返してみよう。このゲーム機、魔導師の遺産は大体私の声に反応して事を起こしてきたではないか。……まあ一部例外もあったが、概ねそうだった。それに“権限譲渡”との記載もある、つまり支配空間を広げる権限は私に一任されている……と思う。
えっと、つまり何が言いたいかと言うと……、深く考えず案外声に出すだけでいいのではないか?まぁ声を出して命令するだけだし、仮に失敗しても何かが減る事は無いだろう、……ちょっと寒い空気には成るかも知れんが。
「……よし、試してみるか」
「ちょっと、何する気?ちゃんと説明しなさい」
何はともあれ行動あるのみ、何かが起きなければ現状は変わりようが無いのだ、だったら自分がソレを起こしてやろうじゃないか。
現在私は迷宮の地下、その一番外側である大地の壁の前にいた。相変わらず高く聳えるそれは、非常に圧迫感があり見る者を圧倒させた。
さて今回の実験を始めよう、因みに何故地下で行うかと言うと、上で試すより効果が分かり易いからだ。土という物理的な隔壁があるここならば、うごける空間が広がった際一目で解るのだから。
よし、一応の準備は整った。あとは実践あるのみだ、逸る気を抑えながら事前の計画通りに言葉を放った。
「えっと、私の前方より……高さ三メートル・横幅五メートル・奥行き十メートル程、フィールドを拡大!」
一時の沈黙が続く、…………失敗か?
そう思った瞬間手元のゲーム機が駆動音を掻き鳴らす。
一瞬そちらに目を移しそうになるが、目の前の壁に変化が起こり、その行動は中止された。
その変化とは、目の前の壁に青白い線が網目状に広がっていたのだ。……なんか似たような光をSF映画とかで見た様な気がする。
そのSF光は私の前方、縦横の幅が先程私が述べたサイズと同じ位の大きさに伸びていた。
そしてしばらくした後、網目の壁は発光が終わると同時に消えていった、そして残ったのは私の要望通りに切り開かれた大きな穴だった。
…………実験は成功だ!
「おぉ!出来た出来た!いやぁ、なんでもやってみるもんだね!」
思わず声に出して喜ぶ、正直ここまで思い通りに事が運ぶとは思っていなかったな。では次はこの力を使って何をするかを考えなければ、いっそ此処に新たな住居を作ってみるか?でもこの場所と魔壊樹って結構離れてるしなぁ、あそこは迷宮の中心地だし拠点にするならあの木の下が良いのだが……
この穴あけ機能をどう活用するか考えていると、後ろで控えていたフィアが声を掛けてきた。
「…………アンタ今何したの?」
フィアからの質問、それに反応して振り返り彼女を見ると、その表情はあり得ない物を見た!っと分かり易く読み取れた。そう言えば事前に説明して無かったな、まぁ出来る確証も無かったから発言を控えてたんだけどね。
「ああ、ちょっと実験をね、私の意思で空間を広げる事が出来るかを試してみたのさ。それにこうやって部分的に広げれば変化が分かりやすいと思ってさ、試しに命じて見た」
「……え?そんなこと、出来るの?」
……いや出来るも何も、たった今実行してみましたが?そんなに変な事したのか?そもそもフィアが前例あるみたいな事を言ったから試したんですけども……
「いや、他の迷宮だって大きくなるんでしょう?そんなに変な事した?」
「当り前よ!もし……そんな部分的な拡大が実行されてたなら!エウラシアの主要都市は今頃陥落されてるわよ!!」
…………え?部分的には出来ないの?…………いや待て、私自身が現在やってのけたではないか、ちゃんと出来てるよ。
つまり他の迷宮、少なくともフィアが知っている迷宮はこんな部分的な迷宮の拡大はしていないと言う事だろう。でも他の迷宮でも思い付かない事ないと思うんだけどなぁ、そんなに常識はずれな行動だったか?
「と言うか私言ったわよね!何かやる際には私と要相談!数時間の作戦会議の後に数度の検証実験を踏まえた後、私の許可を得て初めて行動しなさいって言ったわよね!!なんでそれを今日のうちに破ってるのよ!!あんた真面目に話聞いてた!!?」
え!?あれマジだったの!?そっちの方がビックリだよ!!思わず否定しようとするが、ものすっごい剣幕で説教をするフィアに気押されて、一向に口をはさめない。
……ま、まあ今はいいわ、暫くは聞き流していよう。
しかしこの新機能はどうした物か、というか部分的に拡大出来たとしても、それが何に使えるのか。ぱっと考え付くものと言えば区画整理に便利かな?程度のものだ、他にも何かしらに使えるだろうが今は思いつかないな。
まあ暫くは様子見かな?適当に穴を開けてどうなるかって話だ、トンネルの向こうに町でもない限り全く意味は無いだろう。
…………町?…………!!?
「そうだッ!!!」
「うわぁッ!?っちょッちょっと何よ!?私の話はまだ終わってないわよ!!?」
説教を遮ってまで発せられた大声に驚き、彼女も思わず声を収めた。何事かとこちらを窺う彼女をに向かって、私の考えを公表する。
「町だよ町!この迷宮から町に向かって穴をあけるんだ!そうすればやっとここの人たちと交流できるし、前から考えていた人を招き入れるのも積極的に行える!!フィア!この辺から一番近い町は何処にある!?」
「は、はいぃ!?」
私の勢いに若干圧倒されているのか、変な声を上げるフィア。だがそんな事は意に介さず、彼女の言葉を待つことにした。
「え、えっと?一番近くて大きいのはアフィリシアの聖都「あ、すみません、政務が居ない所でお願いします」……はぁ、じゃあエウラシア王連国所属の小さな農村があったはずよ、近いと言っても確か山向こうだったと思うけど」
ふむ山か、本来ならそれを超えるだけで膨大な時間がかかりそうだな、だが問題ない!なぜならこのまま地下から穴を開けていけばよいのだから!村周辺についてから上に行けばいいだけの事だ!
良いじゃないか地下道!いっそ将来的には世界中の都市部を地下から行き来するようにできれば凄いことになるぞ!上と違って猛獣もいないから安全だし、山等の地形に影響されずに移動できるのは大いにプラスの筈だ!そして私の迷宮をその地下道の中枢交流拠点としてしまえば、以前から私が考えていた人を集めるという目的に一役も二役も買う筈だ!!
いける!いけるぞ!ここに来て一番テンションあがってきた!!最終的にはこの世界すべての国と交流を持つようにして行けば私の計画は成就する筈!!
「……よっし!“なかよしトンネル大作戦”開始だ!!」
「っちょッ!だから私にも説明しなさいよ!!!」
……この時の私は全く自覚は無いのだが、この発想自体が後に大波乱を起こす事になる。
柾さん……それ、世界中を自分のダンジョンにするって事だよ?……ある意味世界征服だからね。
さて、なんだかんだで三十話超えましたが、ようやく柾さんが世界へ羽ばたきます!迷宮モノでこの展開はどうなんだろうかとも思わなくは無いですが、前々から考えていた事なのでこの超展開にもお付き合いして頂けると幸いです。




