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このダンジョンに銘を付けるなら?  作者: ふれんどりーふぁいやー
第二章 名を捨てて実を取る
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第二十八話 このダンジョンの主を怒らせたなら?

タイトルから解る通り、ついにキレます。普段あんまり怒らない人程キレたら怖いものです、何故ならどう動くのか予想が付かないからです。

 



 前回のあらすじ、超展開過ぎて付いてけないっす。これってどこまで行くの?収拾って付くの?もうどう反応をすればいいのかも解らず、ただ空に浮かんでいる巨大な城を眺めていることしかできなかった。


 ……そんなただ見ているだけの私に対して、来訪者である兵士たちは即座にリアクションを取っていた。





――――――な、なにぃッ!!“追風の舟”だと!?バカな!?ありえない!!


――――――なぜ空賊一門がここに!!?……いや、それよりも問題なのは……


――――――奴が……攻撃を仕掛けている……だと!?


――――――もうおしまいだぁ!!


――――――うろたえるんじゃあないッ!聖騎士団はうろたえないッ!









 ……なんか、私だけ、盛大に置いてけぼりされている。


 いや、さびしいとかそういう事では無いんだけどね。ただ一人だけ驚く事も出来ずにいると、私が空気を読めない人みたいで、なんか微妙な心境だというか……





「おいウァリィよ、もう少し下がれ」


「?どうし……」





――――――ッドゴォォンッ!!!!――――――





 私の言葉はリベラへ返される前に爆音でかき消された。





「ッうぁ!!?な……なに!?」


「“追風の舟”からの砲撃よ!アンタ何ぼさっとしてんの!?こっち来なさい!!」




 フィアに誘われるがままにリベラの後方へと下がる、どうやら先程の砲撃はリベラの赤い糸で防がれている様だ、あんなに細いのに驚くほど丈夫だな。しかし大砲普通に有るんですね、てっきりバリスタとかが主流だと思っていたが、この世界には魔法だけでなく科学技術もしっかり築かれているようだ。


 安全な位置に移動し上空の城を観察する、すると城の底の部分に大量の砲門を発見した。どうやらあそこから大量に射出している様だ、ドカドカと地表を吹き飛ばす様は砲撃と言うよりも爆撃を思わせた。


 成程、そりゃあこんだけぶっ放せば地震も起こるか、ただ今は無差別に打ち込んでいる様で、此方には偶々飛んできただけの様だ。ただ射程範囲がかなり広い、現状このダンジョンの半分くらい弾幕で覆われている、後数分もすれば全てに届く位置まで移動してくるだろう。





「いッいかん!全兵に告げる!!これより“追風の舟”の射線から外れる事を優先する!魔壊樹の影に隠れやり過ごすぞ!!斥候班は先に行け!残りの兵は姫様を護衛!必ず死守せよ!!斥候が戻り次第即移動だ!準備を怠るな!!」


「「「「「「「「「ハッ!!!」」」」」」」」」



 おぉ!先程までうろたえていた兵士さん達が復活している!さすがはプロフェッショナル、指示してから動くまでの対応が早い。あの大声を上げたオジサンが隊長なのかな?と言う事は今駆けだして行っているのが斥候という事か。


 感心しながら見守っていると、そこで予想外の事が起こった。私の目に斥候の一人が花が咲いている付近を進んでいるのが視界に入る、その風景に何となく違和感を覚え凝視していると……





――――――――――――ッキシャァァァァッッ!!!!!!!!





 突如、その場から謎の絶叫が響いた。


 私の耳にダメージを与えたそれは、先程走りだした斥候の居る辺りで鳴ったらしく、直に聞いた彼らは泡を吹いて倒れていた。


 何事かとその場にいる全員が注目する中、声の主は姿を表した。それは地面に生えた小さな花を起点にゆっくりと這い出て来る、そして私は違和感の正体に気付く、この迷宮に花なんか咲いて無かった、そして私自身も植えた覚えなど無い事を。 



 そこから這い出てきたのはワニと見違えるほどの巨大なトカゲだった。



 ……何あのトカゲ?あれも外から入ってきたのか?あんなデカくてノッソリしている奴がこの辺うろついたなら直ぐ気がつくと思うんだけどなぁ。まぁ調べて見るか、アイツなら“詳細”で調べられるだろう。そう結論付けて、さっさかゲーム機を起動させる。





 ≪ リザードマンドレイク (自然/植物) コスト:1    ≫

 ・詳細:トカゲ形の根を持つ花、根を踏むと絶叫し、聞いた者は最悪死亡する。

 ・効力:潜伏(Lv.5)/超音波(Lv.3)

 ・奪取:エネルギー還元 0 





 ……え?植物?動物じゃなくて?いやそれよりも、最悪死亡!?


 な、なにやら危険な地雷生物が私の近所に蔓延っとる。それに良く見ると、あのトカゲの頭に有るのと同じ花が其処ら中に生えてる。可笑しい、あの花トカゲが動き回れるとしても多過ぎる!幾ら私でもこれ程の量が入ってきて気が付かない筈がない、この異常発生には何か他の要因が……





「おぉ、もうここまで成長したか、さすが魔壊樹!奇形の成長が早い!!」


「って!またお前かリベラ!!またお前の仕業なのか!!!」


「うむ、我の仕業だ!!」





 自信満々に言い返しやがった!?





「アレらは前日に撒いた種がこの土地に合わせ変異した異常種よ!魔壊樹の影響を受け変質た土壌で育つ事で、従来とは全く異なる特性を手に入れたのだ!どうだ凄かろう!!」





 ドヤっとした顔で此方を見るリベラ、うん……殴りてぇ。


 しかし凄いな魔壊樹、こんなとんでも進化まで引き起こすのか、まぁその為には種から育てなきゃならんみたいだが。でもこれ、下手したら私も死に目に会うのでは……?





「なッ何だあの生物は!?おい!大丈夫か!!」


「まッ待てッ!迂闊に動くなッ!!」





 その声にふと目を移す、どうやら兵士たちに動きがあったようだ、気絶した斥候達を救出する為か兵士の何名かが彼らに近づく。すると……





「……おい!お前達大丈b―――――バスンッ!!!!――――――」




 斥候に駆け寄った兵士が叫びも上げず消える、代わりに現れたのは人間の倍の大きさは有ろうかという巨大な植物だった。





 ≪ ネペンテス・ベリード (自然/植物) コスト:1    ≫

 ・詳細:地中に潜む食獣植物、取り込んだ生物を約一月かけて消化する。

 ・効力:潜伏(Lv.6)/捕獲(Lv.7)/溶解(Lv.1)

 ・奪取:エネルギー還元 0 





 即座に“詳細”を確認する、食獣植物……食虫植物の獣版か、ということはあの兵士は消されたんでは無く、あの植物に食べられたって事か。形的にもウツボカズラに似てる気がするし、あれほどの大きさなら獣も……てッ!そんな悠長に構えている場合じゃない!





「リベラッ!何考えてるんだ!?あの人も早く助けださないと!!」


「心配するな、来訪者に怪我は負わせないと言うのだろう?無論そなたの要望を含めて比較的危険の少ない植物を選んでいる。それにアレが人間を溶かしきるには一ヵ月は掛かるのでな、そう簡単には溶けはせぬよ」





 ……少し意外な言葉が返ってきた。たしかにあのトカゲも兵士たちを気絶させはしたが、それ以外に外傷を与えた様子は無い。もしかしたらあの植物達は、私が思うより危険が少ないのかもしれない。


 リベラは、私が思うより他人の事を考えて……





「まあ大抵の生物は脱出が出来ず、その中で溺死するがな」


「うぉい!?やっぱりだめじゃん!!ビースト、助けてやって!!」





 ……いなかった様だ。


 私の願いを聞き入れ、ビーストの爪が植物を両断する。デロっとした液体と共に気絶した兵隊さんが出て来る、口らか大量に吐き出してるし、恐らく命は大丈夫だろう。一応リベラの言うとおり、殺傷能力はあまり高くなさそうだ。


 ……というかこの罠、たしかに陸上生物には効果抜群みたいだけど、肝心の空中迷宮にはまるで効果が無い。今はあまり関係が無い兵士さん方がどんどん被害を被っている。いや、そもそも対空手段が必要になる、だなんて夢にも思わなかったんだけどね。



 さっきらか弾幕落としまくっている空中の建造物、さらに迷宮周辺へ散らばっている植物の罠、これ等をどうすれば良いのか全く分からず頭を抱える。途方に暮れかけたそんな時、不意に腕を掴まれた。





「ウァリィぼさっとしない!今のうちに隠れるわよ!」





 隣にいたフィアが静かに急かす、どうやら腕を引っ張ったのは彼女の様だ、いきなりの事に驚きながら彼女の言動の意味を確認する。





「え?隠れるって?」


「大馬鹿!政務達の目的はアンタを殺す事、ならアンタがこの場に居なければ一先ずは収まるわ。アレでも国の重鎮だし、そう長い間は此処に留まれ無い筈よ。それに今何よりもまずいのは、“追風の舟”の盟主にアンタの事を知られる事なの!!」





 ……成程、政務達の事は分かった、だが迷宮の主に見つかるなと言う理由が解らない。だが彼女からすればその問答すら時間の消費と考えるだろう、ここは大人しくしたがって、安全な場所で説明を受けるか。





「分かった、一端隠れよう。とりあえずは我が家ヤナギの中で良いかな?」


「……まぁ少なくとも政務達に気が付かれはしないか、行きましょう!」


「む?移動するのか?」





 植物と格闘を続けている兵隊方の目を盗み、私達は我が家(三代目)の傍まで移動する。この中に入れば大丈夫だろう、もうさっきから解らない事だらけだ、魔導師の事とかあの迷宮の事こか、フィアとリベラにゆっくり時間を掛けて教えて貰おう。



 心に余裕が出来て安堵している私の頭上を、黒い塊が通り過ぎて行った。


 それが何かを確認するより早く眼前で爆煙が立ち上る、何が起こったのか理解が及ばずただ立ち尽くす、煙が張れると私の家(三代目)が根元から盛大に折れ曲っていた。





「…………わッ我が家がぁァァァァッッッッ!!!!!!!!」









 それを認識したとたん、私の中で何かが切れる音がした。









「……………………い…か……に…ろ…」





「?……えっと、ウァリィ?」


「?どうしたウァリィ?なにやら震えておるぞ?」





 意味が解らない、突然押し掛けてきた兵士たちも、周りの植物も、イキナリ喧嘩した妖精達も、リベラだってそうだ、もう全部意味が解らない、そもそも何で私は此処にいる?何で私がこんな目にあっている?それいぜんに誰が私をこんな目にあわせている?結局魔導師ってなんだ?このダンジョンってなんだ?わからない、わからない、……全く解らんわぁッッ!!!!


 そんで今飛んでるヤツ!お前が一番意味が解らん!!突然現れたかと思ったら無差別広範囲に攻撃してきやがって、そのおかげで、私の三代目が!!三代目がぁ!!!





「…………いい加減にッしろぉォォッ!!!!!!!!」


「ふぁッ!!?」「むぉ!?」





 決めた、あそこに居るであろう迷宮の主、一回泣かす。私の家を壊した事を大地に額を擦りつけて詫びさせた後、このダンジョン全て治すまでこき使ってやる。あとついでに知ってる事全て吐いて貰う。


 さて、では具体的にどうするか決めようか……まずは人員を確保する、対象は……





「リぃベぇラぁちゃぁ~ん!」


「ッッ!?……な、なんだ?」





 うろたえながらも返事をするリベラ、なぜか警戒心タップリな表情で此方を窺っている、どうしたと言うのだ?私はただ、お願いがしたいだけなんだがな。





「この騒動さぁ~、大半がアンタの所為なんだよねぇ~?つう事だから、勿論何とかしてくれるよねぇ!……助言とか援護とかでなく、直接的にさぁ!!?」


「ふぇ!?……うッうむ!この私に掛かればぁ……そなたら二人を守る事は容易だぞ?」





 ……若干目が泳いでる、それに迷宮を追い払うとか打ちのめすとか言ってこない所を見ると、彼女だけでは容易ではないと言う事なのだろう。普段自信満々な彼女が言葉を濁すのだ、間違いないだろう。


 だか最初からリベラに全て任せる気など毛頭無い、あの色んな意味で浮いているのに、私は私の持っているモノを総動員する所存だ。そうしないと、私の気が収まらない。


 私の持てる全て、それは知恵、根性、迷宮の遺産、そして……人脈。





「妖精さん!!!」


「はい?」





 煮えたぎりそうな此方のテンションとは対象的に、普段通りのほほんとしている妖精さんが足元から声を出す。この状況でも余裕のあり過ぎる友人に突っ込みを入れたくもなったが、今は置いておこう。私がど突きたいのは妖精さんじゃぁない。


 私は一発殴ると決めた相手を今一度見上げ、頼りになる相棒を眼前まで持ち上げた。





「あの飛んでるの、引き摺り落すから……手伝って!!」

 

「……はぁッ!!?ちッちょっと待ちなさいウァリィ!!アレを落とすって何言ってるか分かってるの!!?」





 声を上げたのは妖精さんでは無くフィア、私の発言を聞いた途端、驚愕の表情を見せながら私に考え直せと捲し立てる。


 分かっている、アレは此処と同じ迷宮、攻略不可能と言われている魔導師の遺産が眠る危険地帯だ。しかもついこの前に此処へ来た私と違って迷宮の設備は充実、さらに此方が仕掛けて来そうな事は全て予測が可能だろう。


 つまり、私が圧倒的に不利なのだ。





「あと仮に落としたとして!どうなるか解ってる!?あの大質量が落ちるのよ!?そんなことしららこの場にいる全員押しつぶされる!!真上に落ちなくても衝撃波で消し飛ばされるわよ!!!」





 言うとおり問題は山積み、彼女の懸念は尤もだ、だが心配は要らない……





「……そんな事しないよ、言ったろ?引き摺り落とすって。……ただ強制的にこの場へ降りて貰うだけだから、心配しないで、良いよ?」





 出来る限りニコヤカに答える、フィアは何か言いたげだったが、私の顔を見ながら引きつった表情で言葉を閉ざした。どうしたのだろうか、言いたい事があれば言ってくれた方がいいんだけど…… 


 まぁ、もう何を言われても止まる気は無いけどね、私はいい加減頭に来たんだよ。





「……このバカ騒ぎ!私が強制的に終わらせる!!!!」




もう聖騎士団の皆さんがただの可哀想な人達になっている気がする。頑張れ!まだ出番あるから!次回、ダンジョン攻略します!?

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