プロローグ
俺はこの世界に必然や運命があると思う。
必然、あるべきにしてあること。それはつまり、自分で得た結果
運命、突然としてあること。それはつまり、誰かから与えられた結果
どちらが良いとか悪いとかそいうわけではなく、それは必ず何かによってもたらされたものなのだ。
だから、良いときはその何かに感謝をするべきなのだと思った。
それが自分にできる最大にして、ただ一つのことだから。
そして、忘れてはいけないのだ。
決して…………
この夏、僕が感じたすべてだ。
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七月二日―――俺の入院記念日―――
入院したのは、重い病気に罹ったわけではなく先週の日曜日――サッカー大会の日――に右足を骨折しただけなのだ。
ただ、その理由は誰にも言えないようなことなのだ。
そして、今、後悔しているところだ。
「はっははぁーーー!!そうかそうかワー君、なかなかやるじゃないか。ワー君の大好きな遥ちゃんを横から来たボールから庇ってケガをするなんてっ」
この豪快な喋り方をしている不良医者こと俺の叔母――姉のような存在なのだが――阪井 幹である。
名前とは全く逆の体型にコンプレックスを感じているのはまた別の話だ。
「べっべつにそんなんじゃ…………ていうかそのワー君ていうの止めろって言ってるのに……」
俺の名前、阪井 亘 ワー君と呼ばれる所以なのだ。
ちなみに、遥ちゃんとはサッカー班マネジャー 千葉 遥 は俺の姉貴分みたいなものなのだ。
だから今回のこと――遥を助けようとボールに当たったこと――は後悔していないが、言って後悔するのは別だ。
「いつも言ってるけど、そんなじゃ誰かに愛しの遥ちゃんを取られちゃうわよ」
「うぅるさいな~~」
「まぁ~落ち着きなさいよ。それにしてもど~やったらこんな骨折の仕方するのよ」
確かに、自分でも驚いているぐらいなのだ。幹の言うには、脛骨が筋肉に刺さってるらしい。複雑骨折とはこのことだ。
「この調子だと、夏休み一杯は入院ね。」
「………うっ」
高一の夏休みが病院で過ごすなんて、クラスの笑いものだ。
特に、金次郎には確実に馬鹿にされるのを覚悟しなければ………
空は、曇りのようだ。
同情されたような、憐れまれているような気分がした。
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その後、幹に入院するための手続きを頼んでカップコーヒーを買いに行き自動販売機の前まで来た。
来たのだが、買うにも買えない。
目の前に、黒い髪と黒い目の可愛いというより美しい女の子がいるのだ。
パジャマ服の――入院しているであろう――女の子なのだ。
どこも悪そうにないのに入院している。重い病気なのだろうか。
そんなお節介な同情を考えていたら、女の子がいきなり話しかけてきた。
「これ買って」
「えっ…………」
「あれ……もしかして違う人ですか? ごっごめんなさい」
いきなり声を掛けられて、謝られてしまった。
「いっいや…別にいいけれど…………
君は目が見えないのかい?」
あぁぁぁ突然話しかけられたから、興味本意でとんでもないことをきいてしまった。
どうしようかと悩んでいると、あまり聞きたくない声が――今は天使の囁きのような――聞こえる気がした。
「お~い、ワタル~。そこで、何をしているんだ?
おっ、今度は年下か。全く、いつ見ても話題に事欠かないな~
君、名前は?」
このお調子者こそ、遠山 金次郎だ。
金次郎は、いつも俺をだしにして来るのだ。
しかし今だけは、感謝するぞ。
「おっおい、ちょっと来てくれ、金次郎。」
「なっ何だよ。」
金次郎を引っ張ってその場を去ろうとした。
気のせいだが、女の子が何かを言っている声が聞こえた。
「私は、……。知らないの、だって、…………だから…………」
その言葉の続きを聞いてればよかったと後悔をしたのは、ずっと後のことだった。
これは、運命だろうか。それとも、必然だろうか。
俺は、意味のないこと考えるのだった。
今回、はじめての投稿なので、応援していただけると幸いです。