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第17話:白馬の王子デニス


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挿絵(By みてみん)

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小説本編



「アーレンベルク公爵令嬢。ご無事だったのですね。それにクララ嬢も心配していましたよ。貴女たちを追ってこの屋敷まで来たら地面に落ちて気づけばここに居たのですが、無事でなによりです」

「私もデニス殿下がご無事で嬉しいです」


 クララはそう言いながらも涙を拭いている。


 デニスはそんなクララを、自分に会えた安心から泣いているとでも思っているのか優し気な視線を向けている。知らぬが仏というやつね。


 しばらく泣いていたクララが泣き止むと、白馬の王子デニスは微笑み改めて状況を説明しだした。


「ここに落ちてから、改めて護身用に持っている現在の位置を知ることが出来る魔法具で確認したんだけど、屋敷があった辺りには違いないんだが、この部屋の中でいくら動いても位置が変わらなくてね。ここには魔法がかかっていて妨害されているようだね」


 なるほど。マルセルは知能でシンシチは経験で状況を看破して、デニスにはどっちもないから道具だよりなのね。


「でも君たちに会えたのは良かったよ。後はここをどうやって出るかだね。扉は2つあったんだけどどちらもびくともしなかったんだ。その内の1つは今君たちが入って来た扉なんだけど、君たちだけが開けられるようになっているのかな?」


 デニスはそう言うと私たちが入って来たのと反対側の扉に向かった。そして手をかけたけどやっぱりびくともしない。


「クララ嬢。ちょっと君がやってみてくれないか?」

「あ、はい」


 そうしてクララが扉に手をかけると扉は簡単に開いた。


「やっぱりそうだったんだね。ここにても仕方がないから進もう」


 デニスはそう言って私たちに部屋を出るように促した。そしてデニスは私たちの後に部屋を出たんだけど、歩きながら位置情報が分かる魔法具に目を向けていた。


「部屋を出ると位置情報が変わったよ。やっぱり魔法がかかっているみたいだね」

「その道具凄いですね!」


 クララが感心したように言った。

 凄いのは道具であってデニス自身じゃないと言っているように感じたのは気のせいだろうか。


 そうして歩いているとやっぱり現れる十字路。


「十字路か……。下手に曲がると混乱するかもしれないからここはまっすぐ進んでみるか」

「そうですわね」


 クララはやっぱりこの迷路の秘密をデニスに話すつもりはにないようね。

 まあそういうシナリオなんだろうけど、クララ的には素で説明しないで良いと思っているんだよね。


「ねえ。デニス殿下にこの迷路の秘密を話さなくても良いの?」

「でもデニス殿下には、あの魔法具があるので大丈夫じゃないですか?」


 なるほど。そういう考えなのか。


 というわけでとりあえずデニスの言う通りに進む。デニスは歩きながら魔法具に目を向けていたけど、途中で

「あれ?」

 と声を上げた。


「どうなされたのです?」

「なんだか突然位置が変わったんだ」


 どうした電波が届かなくてGPSが狂ったか?


「さっきまで順調に前に進んでいたんだけど、突然、後ろに位置が後退した。もしかしたら魔法で元の位置に戻されたんじゃないかな」

「まあ、そんなことが」


 そうして進んでいくと十字路に着いた。マルセルみたいに歩数を数えたりシンシチのように印をつけてたりはしてないけど、魔法具のおかげで元の位置に戻ったのは分かったようだ。


「じゃあ次は左に行ってみようか」

「そうですわね」

 とクララも従う。


 そうして進むと当然現れる十字路。


「今度は元の位置に戻らずに進めたみたいだね。とりあえずどっちに進んでも元の位置に戻されるという状況ではないようだ」

「まあ、そうなのですね」


 いや、お前それ分かってるはずだろ。

 そう思った私はクララに耳打ちする。


「ねえクララ。今デニス殿下が言ったことって知ってるよね?」

「はい。ですけどせっかくデニス殿下が自分で発見したと喜んでいらっしゃるのですから、知らなかったことにしておいた方が良いのかと思いまして」


 うっ。ある意味できた女なのかも。

 男はこういう女にやられるのか。


「じゃあ次も左に曲がってみようか」

「そうですね」


 クララ。あんた次は前って知ってるだろ。まあ良いけどさ。


 しかし当然間違っているので元の位置に戻される。廊下を進んでいる途中で

「あれ? 突然、位置がかなり前に戻ったぞ」

 とデニスが声を上げる。


「まあ大変。どうしましょう」

 と両手で頬を包むようにして驚いた表情をするクララ。


 こえ~~。この女こえ~~。

 全部分かっているのに、いけしゃあしゃあと。

 ゲームに出てくる、シナリオの都合で知っているはずのことに驚くヒロインの思考が現実になったら、こんな女になるのか。


「どうやら間違えたところからじゃなくて、間違えると一からやり直しのようだね」

「まあそうなんですね」


 なんかもう良いや。頑張れ。


「とにかく正しい方向に進まないと行けないのは分かった。クララ嬢。僕は魔法具を見ているからどちらに進むかは君が決めてくれないか?」

「私がですか? はい。分かりました」


 というわけでやっとデニスイベントの導入部が終わり、ここからクララが選択するパートね。


 まあ□△□〇だったから左前左右だね。


 というわけでとっとと左前左右と進んで扉の前にたどり着いた。


「どうやらここまでのようだね」


 デニスはそう言って扉を開けた。そしてみんなで中に入った。


「特に何もないようだけど……」


 デニスはそう言いながら部屋の中に進む。


「あ。デニス殿下。1人で進むと危ないですよ」


 クララはそう言ってデニスに近づいた。


 するとデニスだけを落とそうとしていたのにタイミングが合わなかったのか、地面に開いた穴にデニスもろともクララも落ちる。と思われたが、デニスが穴の淵に左手をかけて何とかぶら下がり、右手でクララの手首をつかんで何とか落ちるのを阻止した。


「クララ! 少しだけ我慢してくれ!」


 いつもの優し気な物言いと違い、強い口調のデニス。

 掴んでいたクララの手首をさらに強く握り苦痛にクララの顔が歪むけど、それにかまわずデニスは力を振り絞り、決して体格が良いとは思えないデニスがなんとクララを右腕一本で引き上げる。


「ぐぐぅっ」

 と呻きながらデニスは、小柄とはいえ同世代の女性であるクララを右腕一本で引き上げ切ったのだ。


 しかしそれで力尽きたのか何とか左手一本でぶら下がっている状態だ。その間、私は何をしてたかというと手を出しかねていた。

 魔王からイベントには手を出さないで良いと言われてたのもあるけど、下手に手を出したら余計邪魔になりそうなのよね。


 でもデニスに助けられたクララは、デニスを助け返そうと必死になり、ぶら下がるデニスの左手に手をかける。


 いやデニスを引き上げられるだけの力があるなら引っ張たら良いけど、デニスもカミルほどじゃないけど長身の部類。私とクララの2人がかりでも引き上げるのは無理だ。


 にもかかわらずデニスの手を引っ張っても、ぶら下がっているのの邪魔にしかならない。このままじゃむしろデニスを落とすことになってしまう。


 デニス自身にもそれが分かったのか苦笑を浮かべた。


「ふっ仕方がないな……」


 そう言うとクララを引き上げて疲労困憊になっていたと思われた右手を振りかぶって、なんと自分の左手を掴んでいるクララの手に手刀を浴びせたのだ。


「いたっ」

 と思わず手を放すクララ。そして苦笑を浮かべたまま穴の奥に落ちていくデニスの姿。


 クララに責任を感じさせないために自分で落ちたか。


 こうやって考えるとデニスも、さっきのシンシチやマルセルも基本的にはいい奴なんだよね。

 私を殺そうとするのだけが唯一の欠点だ。


「お姉さま……。デニス……殿下が……」

「クララ……」


 私はクララを優しく抱きしめた。

 私の胸の中でクララは泣き続ける。


 そしてひとしきり泣いた後クララが呟くように口を開く。


「お姉さま。私……私……。カミル殿下とライアー様だったらカミル殿下が嫌いです……」

「クララ……。もう良いのよ」


 いや迷路パートはこれで終わりだから、本当にもう良いんだけどね。

 っていうか夏祭りイベントでライマーはごぼう抜きでトップになってたのか。本当にみんな好感度は僅差なんだね。


 そうして地面の穴が閉じると入って来た扉がある壁とは反対側の壁に向かって進んだ。

 すると扉が1つあった。


「あれ? 次は扉は2じゃないんですか?」

「どうやら選ぶのはもう終わりのようね」


「え? そうだったんですね……。せっかく白状したのに……」


 まあ確かにわざわざカミルが嫌いって言う必要はなかったね。


 そうして一つしかない扉を潜って先に進むと、大きな広間のようなところにたどり着いた。とはいえ明かりはない。でもその割にうっすらとは見えるという不思議な感じで、部屋が広いのは分かるけど奥の方までは見えない。という状態だ。


「あれ? さっきまでの部屋と違いますね」

 とクララがきょろきょろしていると部屋の奥から

「良くたどり着いたな」

 と声が聞こえた。


 それと当時に壁に掛けてあったらしい数多くの松明が一斉に灯り部屋が一気に明るくなる。


 そして部屋の奥の一段高くなったところに玉座らしき物に足を組んで座る魔王の姿があった。


「ようこそクララ。そして呼んでもないのについて着たお嬢さん」


 シナリオ通りの台詞なんだろうけどムカつくな。後でシメよう。



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