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第9話:魔王登場イベント(下)

20ページを超えていて、以降のページが見えてなかったので分割しました。

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挿絵(By みてみん)

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小説本編


 そして、空中に雷が落ちる! というありえない現象の後、その雷が落ちた空中に現れる漆黒の魔王!


(ぷぷっ)

 あ、思わず笑っちゃった。誰だよ? この演出考えたの。もうちょっと普通に現れれば良いでしょうに。


「あ、あれは、まさか!」


 え? いつの間に?

 かなり後ろに居たはずのシンシチが、私のすぐ傍で叫んだ。


 叫んだあと、ぜぇぜぇと荒い息遣いが聞こえる。

 軍人のシンシチが息を荒くするほど全力疾走したのか。


 生徒の50メートル後ろに居るはずのシンシチに、魔王が出現した瞬間、生徒の近くで台詞を言わせるのはちょっと無理があったね。

(シナリオライター……もうちょっと考えてやれよ)


「誰ですの? アーレンベルク公爵令嬢たる、このアーデルハイドを見下ろすなど身の程をわきまえなさい!」


 え? 誰?

「と、アーレンベルク公爵令嬢様がおっしゃっています!」

 コテンパン! お前か!


 取り巻きの2人がいないし、誰が私の台詞のアテレコをするのかと思っていたら、まさかコテンパンだったとは。


「ぷっ。俺は魔王! 魔王シュバルツ・ライゼガング。まさか、この名を知らぬ者はおらぬだろうな」


 お前、今、笑っただろう。


 まてよ? 魔王は自分の台詞は自分で言えるんだ? まあ何度もやり直しているから覚えたんだろうね。もし、魔王も自分の台詞を言わなかったら、今いるモブの誰かが魔王の代役をしてたのかな?


「魔王ですって! と、アーレンベルク公爵令嬢様がおっしゃっています!」


 がんばれコテンパン。取り巻きの2人が居ない今、君だけが頼りだ。


「クララ! 下がれ!」

 と、叫んだ第一王子のカミルが一瞬はっとした表情をした。


 今まで少し興味がある程度だったヒロインへの気持ちが、本物の恋心だったと気づいた……という演出らしい。


「おいおい。俺はその娘に用事があって来たんだ。相手してくれよ」

「なんだと!」

 と、カミルが魔王とクララの間に立ちふさがった。


「ふっ」

 と、魔王が腕を一振りすると、雷がカミルの目の前に落ちてカミルが吹き飛ばされた。

 魔王は、吹き飛んだカミルには目もくれずクララに向かって降りてきた。


「気になる力の波動を感じてきてみれば、まさかこんな小娘が発していたとはな」

「あ、ああ……」


 クララは怯えて言葉にならない。


「く、くそ……」

 よろよろと立ち上がったカミルが構えた。


「赤龍破!!」


 カミルの固有スキルの大火力攻撃魔法。十数メートルは離れている私のところまで熱風がくる超高温の炎の砲撃だ。


 だけど、

「はっ」

 と、笑い交じりの気合の声とともに魔王が右腕を一振りすると、簡単に弾かれ彼方の方角に飛んでいく。


「この俺に歯向かうとは身の程を知らぬ奴だな。まあ、死ね」


 もう一度、魔王が右腕を一振りすると虚空から雷が一閃、カミルに向かって進む。だけど、カミルに直撃する寸前でかき消される。


「ほう」

 と、魔王が視線を向けた先でクララが両手を前に突き出している。よく見るとカミルの周囲が淡く光っている。どうやらクララが間一髪、聖魔法の結界を張ったらしい。


「手を抜いていたとはいえ、まさか俺の攻撃を防ぐとはな。だが……、とても俺の攻撃を防げるような魔力の結界とも思えぬが……。やはり、何か魔力の波動が他の者と違うか……」


 魔王は何やら考えるように顎に手をやった。

 こいつ、役になりきっているけど演技の練習でもしてるのか? まあ、普段暇そうだしな。


「せっかく来たんだし、連れて帰って調べるか」

 と、魔王がクララへ歩を進めた。


「うぉぉぉっ!!」


 雄たけびとともに、護衛のシンシチが今更ながら突っ込んできた。

 クララが防がなきゃ第一王子死んでて、貴方、首だったからね。まあシナリオ通りの行動なんだろうけど。


「おいごとやれ!!」

 シンシチは、そう叫びながら魔王に飛びついた。


 おい? ああ、「俺」の方言ね。シンシチごと魔王をやればいいのね。


 と思って、シンシチもろとも魔王に向かって魔法を撃とうとしていると、シンシチがさらに

「逃げろ!!」

 と、叫んだ。


 やるの? 逃げるの? どっち!?


「シンシチ先生の固有スキル”おいごとやれ”は、相手の動きを封じる拘束技! たとえ魔王といえど固有スキルからは逃れられないはず!」


 モブ! 説明ありがとう! 固有スキルで魔王を拘束しているから、その間に逃げろってことね。


 見ると、カミルがクララの手を引いてさっさと逃げ出している。


「で、でも」

「”おいごとやれ”発動中に拘束対象に攻撃すると、シンシチにまで同等のダメージを与えてしまう。今はシンシチのいう通り、逃げるしかない!」


 カミル! 説明ありがとう!


「逃げるわよ!」

 と、私も腰を抜かしていたコテンパンの手を引き、駆け出した。


「アーレンベルク公爵令嬢様! ありがとうございます!」

「はいはい。大丈夫だから逃げましょうね」


 魔王がここで誰かを傷つけたりしないはずだしね。


「あ、あの……。これからは、お姉さまって呼んで……いいですか?」

 コテンパンは私に手を引かれながらなぜか顔を赤らめている。


「あ、う、うん。いいけど……」


 その後、他のモブたちもそれぞれ逃げ出し、シンシチもうまく離脱したようだ。


 これで魔王とヒロインの第一回目の遭遇イベントは無事に済んだのかな?



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