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広がる新飼料米

JAの会議室。長机を囲む大規模農家たち。壁の窓から午後の光が差し込み、書類や資料が机上に広がる。


田中は資料を手に、座席に着く。斎藤課長も後方に立っている。


田中

(資料を広げながら)

「待て。今回の制度は違う。平時は飼料用として確実に引き取ってもらえる。非常時は業務用や主食用に転用できる。そのまま飼料用でもいい。出口は3本ある。」


農家A(60代・ベテラン)

「そう言うけど、実際に管理できるのか?

人間が食える水準で保つってのは、乾燥も保管も別物だぞ。」


斎藤

「そこは制度側が担保します。乾燥、保管、サンプル検査、切り替え判定までは指定機関がやる。

農家に“二重管理”はさせません。JAも乾燥機を入れる予定です。」


農家B

「でも、契約解除や非常時の判断は国次第だろ? それって結局、運任せじゃないか。」


田中

(腕組みして)

「違う。“非常時の宣言”は国だが、“今年の米を何に出すか”は農家が決める。

主食に回すか、業務用にするか、飼料にするか。売り先は、俺たちが選べる。」


農家C

「……なるほど。それならリスクは確実に下がるな。」


農家A

「でも、土地も人手も必要だろう? 田中はそこまでやれるのか?」


田中

(窓の外の田んぼを見つめて)

「増やすさ。少しずつ、人も土地も。この制度なら、守りながら広げられる。賭けじゃない。安定だ。」


農家B

(少し考え込む)

「……じゃあ、参加するかどうか、各自で検討して、次回までに意思表明するってことだな。」


斎藤

「はい。募集開始時には書類を用意します。農家の皆さんが安心して作れるよう、現場で調整します。」


農家C

(軽く頷き)

「……俺も、やってみるか。出口が保証されてるなら、無理して主食米作る必要もない。」


田中

(静かに微笑む)

「それでいい。

一人じゃ制度は回らない。

仲間が増えれば、安定は“仕組み”になる。」


外では風が吹き、稲穂が揺れる。

会議室には、静かだが確かな決意の空気が漂った。

田中は資料を整理しながら、次の計画を思い描く。




夜、倉庫の小さな事務スペース。

机の上には田中の手書きの作付計画、農地マップ、収穫データ、そしてJAからもらった補助金一覧表が広がる。

外はまだ薄明るく、稲の香りが微かに漂う。


田中はペンを持ち、地図に赤い線を引きながらつぶやく。


ペンを止め、資料を見比べる。

人手、トラクター、倉庫容量、乾燥機の稼働率。


田中

「まず、人手か…。作業員は足りない。夏の収穫期だけ臨時で雇うか、契約社員か…いや、AI管理と作業機械の組み合わせで効率化した方がいい。」


彼は手元の計算表に数字を書き込みながら、声に出す。


田中

「今の田んぼで最大何トン取れる? ミズホチカラ、アキヒカリ…品質維持を考えると、1人で管理できるのは25haまでか。次の年はもう5ha増やせるな。」


机の角に置いたスマートフォンを手に取り、AI農業管理アプリを確認する。

田中

「灌漑や乾燥のタイミングを自動化すれば、人手は半分で済む。管理費も補助でカバーできる。」


地図の隅に赤丸で囲った空き農地を見る。

田中

「問題は土地だな…空き家・離農地を少しずつ借りるしかない。地主に声をかけて、来年度の契約をまとめる。」


深く息をつく。

窓の外、夕暮れの田んぼが金色に揺れる。

田中は静かに目を細め、地図と数字を交互に見つめる。


田中

「人も、土地も、少しずつ増やす。守りながら拡大する。俺たちの力で安定を作る…これが答えだ。」


彼はペンを握り直し、計画を地図に書き込む。

机の上の数字と赤い線が、未来の農業を描く。


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