消防士、サラリーマン、簿記の達人、心理カウンセラー
シーン:JA北海道支部・会議室、午後
部屋には斎藤課長、若手職員の高橋、ベテラン職員の佐々木、事務員の田村が座っている。机の上には備蓄米制度変更と特区制度に関する資料が散らばっている。
斎藤
「皆さん、今日の議題は去年始まった備蓄米の飼料米転換と来年から始まる耕作放棄地の無償譲渡、さらに3年後…と言われているサラリーマン型農業だ。うちの地区は特区外だけど、2〜3年後には全道に波及すると予想している。」
佐々木
「波及…って、津波レベルでしょ」
高橋
「特区制度…正直、給与320万保証で週休2日、退職金まで付くって話ですよね。農家からしたら夢の制度じゃないですか。」
斎藤
「夢だろうな。でも現場の俺たちは、夢と現実の落差で胃が痛くなるだけだ。」
田村
「胃が痛くなるって、もうサプリで対応ですかね?」
斎藤
「サプリじゃ効かん。農地管理、補助金処理、作付確認、すべて増えるんだ。しかも備蓄米制度まで変える。平時は飼料、非常時は主食…。俺たち、サラリーマン兼消防士になった気分だ。」
高橋
「え、消防士ですか?」
斎藤
「そうだ。農家から頼まれれば火事のようなトラブルも処理しろってことだ。」
佐々木
「斎藤課長、火事…じゃなくて、非常時米の切り替えの話ですね。」
斎藤
「正確にはその通り。でも、作付、在庫、緊急出荷、補助金申請、すべて重なる。理解している大規模だけだからマシだと思うが」
田村
「非常時米の切り替えってやるかやらないか農家判断ですよね。9月中に判断してくれたらマシですけど値上がり待ちでダマで抱え込んだりされたら大変ですよ」
斎藤
「そういうこと。だから会議はユーモアを交えないとやってられん。」
高橋
「ところで特区が道全体に広がる頃には、うちの給料上がりますよね?」
斎藤
「残業代は間違いなく増える。月万6万はかたいな。おれは残業代ないけど。ボーナスはもっと増える。退職金DC、月5000円積立、公費負担。所得控除もある。制度としては優秀だが…職員の仕事量が倍になる。」
佐々木
「年収100万アップですか?それで胃が痛くなるとは…皮肉ですね。」
斎藤
「皮肉というより現実だ。俺たちは帳簿と格闘しながら、農家の夢を現実に落とし込む職人になる。」
田村
「職人…というよりスーパーヒーローっぽい響きですね。」
斎藤
「ヒーロー扱いされるのは災害が起きた時だけだ。普段はただの書類職人。」
高橋
「でも、備蓄米の切り替えだけでも大変なのに、給与保証の農業までセットで来るとは…。」
斎藤
「俺も思う。しかも企業特区、外資やスーパーが入ってくる。地域の農業に見えないプレッシャーまで付いてくる。」
佐々木
「部長…いや課長、そうなると俺たち、現場監督だけでなく心理カウンセラーも兼任ですか?」
斎藤
「その通り。農家の不安、職員の不満、補助金の申請、全部見なきゃならん。現場会議は毎回、精神トレーニングも兼ねてると思え。」
田村
「じゃあ、ユーモアは必須ですね。会議中に笑わないと精神が持たない。」
斎藤
「そうだ、高橋、覚えておけ。笑いは現場の防衛策だ。農家の顔を見るときも、笑顔で対応できるように練習しておけ。」
高橋
「笑顔で火事のような業務に立ち向かう…ですか。」
斎藤
「まさにその通り。俺たちは裏方の消防士、サラリーマン、簿記の達人、心理カウンセラーだ。特区制度が全道に来る頃には、俺たちもスーパー公務員になっているかもしれん。」
会議室は笑いとため息が入り混じる。斎藤課長は資料を整理し、窓の外の雪景色を眺める。
斎藤
「まあ、現実は大変だが、逃げても仕方ない。俺たちがやるしかない。それに…面白いじゃないか、こんな挑戦。」
部下たちは小さく笑いながらも、各自の頭の中では数年後の特区制度の混乱と、備蓄米の切り替えのイメージを描いていた。




