第七話 三人と一人の兄?姉?─小さな輪が動き出す
■順──幼なじみの少女、“兄のように”康一を守る子
順は康一と同い年。
家も近く、物心ついた頃からずっと一緒に遊んできた。
気が強くて、
口も悪くて、
でも誰より優しい。
康一にとっては、
「兄みたいな存在」でもあり、
「姉みたいな存在」でもあり、
「友達」でもある。
順は康一を守るためなら、
大人にも噛みつく子だった。
■順と悟──“似てないのに気が合う”
悟は順を見た瞬間、
「この子、めんどくさそうやな」と思った。
順も悟を見た瞬間、
「この子、なんかムカつく」と思った。
でも、康一の話になると、
二人は妙に意気投合する。
ある日の放課後。
康一が海で釣りをしている間、
順と悟はテトラポットに座って話していた。
「悟、あんた康一のこと、どう思っとるん?」
「どうって……まあ、放っとけんやつやな」
「それ、分かるわ」
順は膝を抱えて海を見つめる。
「康一、いじめられとるのに気づいてへん。
あんなん、普通泣くやり」
悟は肩をすくめる。
「泣かんのがあいつの強ささ
でも……強さってのは、時々危なっかしんさ」
順は悟を見た。
「悟、あんた……康一のこと好きなん?」
悟は顔をそむける。
「別に。
ただ……あいつは俺の初めての友達やでな」
順はふっと笑った。
「ほんなら、あたしと一緒やな」
悟は驚く。
「順、お前も……?」
順は頷く。
「康一は、あたしの大事な幼なじみやで。
守りたいって思うんは、当たり前やり」
悟は少しだけ照れたように笑った。
「……変な子やな、お前」
「悟に言われたないわ!」
二人の声が海に響く。
康一は振り返り、
「何笑いよん?」と首をかしげた。
悟と順は顔を見合わせ、
同時にため息をついた。
「……あいつ、ほんま鈍いな」
■拓馬──順にだけは勝てない
拓馬は順が苦手だった。
順は拓馬の“いじめ”を見たら、
すぐに飛んでくる。
「拓馬! 康一に何しいよんじゃ」
「な、何もしてないわれ!」
「嘘つけ! 顔に書いてあるわ!」
拓馬は順にだけは勝てない。
順は拓馬の胸ぐらをつかむ。
「康一にちょっかい出すんやったら、
まずあたしが相手したるで」
拓馬は震えながら言う。
「お、お前……なんでそんなに康一のこと……」
順は言い返す。
「大事な幼なじみやからに決まっとるやろ!」
拓馬はその言葉に、
なぜか胸がチクリとした。
――俺には、そんな風に言ってくれるやつ、おらん。
その日から、
拓馬は順の前では康一に手を出さなくなった。
そして少しずつ、
康一と話す時間が増えていく。
「康一、今日も釣り行くんか?」
「行くで。拓馬も来る?」
「……べ、別に行ってもええけど!」
順は笑う。
「素直やないなぁ拓馬は」
拓馬は真っ赤になる。
■四人の輪──“康一を中心に”
悟は頭脳。
順は心。
拓馬は力。
三人は気づかないうちに、
康一を守る“輪”になっていた。
康一はまだ知らない。
自分の“巡り人”としての光が、
人の心を変え、
仲間を引き寄せ、
未来を動かしていることを。
ただ、胸の奥で
小さな光が揺れていた。
――めぐりびとって、なんやろ。
その問いは、
これからの物語を大きく動かしていく。




