表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怪我するたびに知らない世界に飛ばされる俺、「あれっ?またどっか行くんか!?」歴史の戦略で現代世界を最強にしてしまう。  作者: じゃれにぁ
第二章  未来の英雄達との出会い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/50

第五話 ー気づかぬ強さ”と“海の底の声”ー

いよいよ小学生。彼の登場です。少しだけ前に進むのかなぁ。

康一が小学校に上がった頃、家の暮らしは相変わらず楽ではなかった。

けれど、康一は気にしていない。

いや、気づいていないと言った方が近い。


朝は新聞配達。

学校が終われば海へ向かい、テトラポットの隙間に引っかかったテグスを拾い、市場でもらった雑魚を餌にして釣りをする。

釣り竿は自作。

リールは壊れかけ。


でも、康一の手にかかれば、どんな道具でも魚は寄ってきた。

「こうちゃん、また釣れとるんか。ほんま器用な子やな」

市場のおばちゃんは笑って頭を撫でる。

康一は照れくさそうに笑う。

「家で食べる分だけでええんや。売るほどはいらんで」

その言葉に、おばちゃんは胸がきゅっとなる。

―この子は、ほんまに気づいてへんのやな。


学校では、康一のぼんやりした優しさが、時にからかわれる原因になった。

ランドセルを隠されても、「どこ置いたんやろ」と本気で探す。

机に落書きをされても、「誰か間違えて描いたんかな」と笑う。

それがまた、子どもたちの“いたずら心”を刺激してしまう。


けれど康一は、誰かを恨むことも、悲しむこともなかった。

胸の奥に、いつも“黄金色の気配”があるからだ。


――大丈夫や。

――見ているで。

じいちゃんの声のような、もっと古い誰かの声のような、温かいものが、いつも康一を包んでいた。


順はそんな康一を見て、何度も歯を食いしばった。

「……康一、なんで怒らんのや。なんで泣かんのや……」


康一は首をかしげる。

「怒るほどのこと、あったか……?」

順は言葉を失う。

――この子は、ほんまに“強い”んや。

そう思った。


■海──

その日も、康一は海へ向かった。

夕暮れの潮風は冷たく、テトラポットの影が長く伸びている。

「今日はアジ、釣れるかなぁ……」

鼻歌まじりにテグスを結び直し、餌の雑魚をつける。


海は静かだった。

けれど、どこか“ざわついて”もいた。

波の音の奥に、かすかな声が混じっている。


―おいで。

康一は首をかしげる。

「……じいちゃん?」

違う。

もっと深く、もっと古い声。

―おいで。

―あなたは、もう知っているでしょう。


胸の奥が、黄金色に揺れた。

その瞬間、足元のテトラポットが濡れて滑った。

「あっ……」

視界が傾き、空と海が反転する。

冷たい水が近づく。

風の音が遠ざかる。

けれど康一は、不思議と怖くなかった。


――ああ、またどっかへやん。


そんな感覚だけがあった。

意識がふっと軽くなる。

海の底から、白金色の光がゆらりと浮かび上がる。

―康一。

―あなたは“巡り人”の子。


その声を聞いた瞬間、

康一の意識は、静かに、深く沈んでいった。


■海の底──

意識が沈んでいく。「また変な夢か」海の冷たさは感じない。

ただ、光と闇がゆっくりと入れ替わるような、不思議な静けさだけがあった。

康一。

呼ばれた気がして、目を開ける。


そこは海ではなかった。

砂も水もなく、ただ果てしない“青黒い空間”が広がっている。

遠くに、巨大な影が立っていた。

人の形をしている。

だが、普通の人ではない。

その影が、ゆっくりと近づいてくる。


「……誰なんや……?」

康一の声は震えていない。

怖さよりも、“知っている気がする”感覚が勝っていた。

影が光の中へ入る。


そこにいたのは。

黒い衣をまとい、鋭い眼光を持つ男。

体全体を被う漆黒の乾いた力強い黒。嫌な感じはしない。

その背後には、無数の兵の影が揺れている。

男は康一を見下ろし、低く、響く声で言った。

「小さき巡り人よ。よくぞここまで来た」


康一は息を呑む。

「……あんた、誰なん……?」

男はゆっくりと名乗った。

「余は、嬴政。後に“始皇帝”と呼ばれる者だ」


康一の胸の奥で、黄金色が強く脈打つ。

「……なんで、俺の前に……?」

始皇帝は目を細める。

「お前の中にある“光”が、余を呼んだ。

巡り人の力は、時を越え、魂を越え、必要とする者を繋ぐ」


康一は理解できない。

けれど、胸の奥の光が言っている。

この人は、敵ではない。


始皇帝は続けた。

「余もまた、かつて“声”を聞いた。

国をまとめるため、争いを終わらせるため、人の世を越えた力に触れた」


康一は目を見開く。

「……あんたも、めぐり人なんか……?」


始皇帝は首を振る。

「違う。余は“選ばれなかった者”だ。

だが、光の気配を知っている。

だからこそ分かる」

そして、康一をまっすぐ見つめた。

「お前は、強い。

だが、その強さに気づいていない。

それが、いずれ大きな試練を呼ぶ」


康一は黙って聞く。

始皇帝は続けた。

「覚えておけ。

“優しさ”は時に、最も残酷な武器となる」


康一は胸が痛くなる。

「……俺、誰も傷つけたない……」


始皇帝は微かに笑った。

「だからこそ、お前は巡り人なのだ」


その瞬間、空間が揺れた。


遠くから、美里の声が聞こえる。

康一!戻ってきなさい!


光が差し込み、始皇帝の姿が薄れていく。

「待って!まだ聞きたいこと……!」

始皇帝は最後に言った。

「いずれまた会おう。“光の子”よ」


そして、世界が白く弾けた。

現実にもどされた。

三日月が微笑んでいるように見えた。

康一の鈍感力。これが原点です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ