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怪我するたびに知らない世界に飛ばされる俺、「あれっ?またどっか行くんか!?」歴史の戦略で現代世界を最強にしてしまう。  作者: じゃれにぁ
第三章 ー自分の足で立つという事ー

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第四十五話 ー雪の峠と出会いー

康一は取ったばかりの免許と相棒のトラックで、現場と会社を何往復もして資材の搬入という仕事を繰り返した。


ついにその日がやってきた。

康一は、上里建設の平ボディトラックに、津の資材置き場まで届ける型枠と鉄筋を積み込んだ。準備は万端だ。

午前8時、海鷲を出発する時は冷たい雨だった。


鎌田課長は「荷坂は雪やぞ。チェーン持ったか」と短く一言。

「ハイっ」と短く返事し気を引き締めてハンドルを握る。


国道42号線を北上し、紀伊長島に入ったあたりから、フロントガラスに当たる音が「ビチャッ」という重い音に変わりだした。進むにつれ、雨は牡丹雪へと姿を変え、視界を白く塗り潰していく。

(……きたな。順もこの寒さの中、走っとるんや。俺も負けられんにゃあ)


峠の勾配に差し掛かった瞬間、トラックの後輪がズルリと真横に流れた。

「おっと……!」

ヒヤッと心臓が凍るような感覚。

いつもの現場への道のりでも、決して味わうことのなかった、数トンの鉄塊が制御を離れる恐怖。


康一は震える手で退避所に車を停め、荷台からあの重く冷たいタイヤチェーンを引きずり出しました。

「くそっ、指が……動かん……」


氷点下の吹雪。かじかんだ指先は感覚を失い、雪に濡れたチェーンは蛇のようにのたうち回って、思うようにタイヤに掛からない。

かれこれ1時間、無理に引っ張れば鎖が絡まり、焦れば焦るほど雪が体温を奪っていく。


その時だった。

背後から、地響きのようなエンジンの音が近づき、一台の大型トラックが停車した。

青い車体に、力強く描かれた一羽の鷲。大鷲急便


「おい、にいちゃん。そんなに力んどったら、鎖も言うことを聞かへんじょ」

笑いながら降りてきたのは、真っ黒な顔に深い刻みのあるベテランのドライバー。

彼は康一の隣に膝をつくと、素手で雪を払い、魔法のような手つきでチェーンをタイヤに這わせた。


「チェーンは『巻く』んじゃない。タイヤに『着せる』んやで。お前、上里の新人か。ええ目ぇしとる。あの会社には、いいガッツの男もおるようやな。ほれ、自分でやってみぃま」

その男は、上里建設のことをよく知った口ぶりで、康一の肩を叩いて丁寧にやり方を教えてくれた。


「行け。この峠を越えたら、お前はもう昨日の自分じゃないじょ」

大鷲のトラックが、何事もなかったかのように雪煙を上げて去っていくのを、康一は頭を下げ呆然と見送った。


ガチャガチャとチェーンが雪道を走る音を響かせながら、康一はついに峠を越え、津の街へと辿り着いた。

荷下ろしを終え、コンビニの駐車場の端に止め、冷え切った手に持ってきたお茶のコップを当てていると、偶然にも、予備校の帰りらしい悟の姿を見つけた。


「康一!? お前、そのどぎたない格好、どしたんどれ」

驚く悟に、康一は鼻の頭の汚れを拭いながら、少しだけ誇らしげに笑った。

「雪の荷坂を越えてきた。順も頑張っとる。俺らも、ここで立ち止まっとる暇はないんじゃれ」


悟は笑みを浮かべながら、康一の背後に停まっている雪と泥にまみれたトラックをじっと見つめ、小さく頷いた。

「おう……お前のその『現場』の重み、俺がいつか数字にして世界に突きつけてやるわさ」


雪の峠を越えた康一の手には、もはや「新米」という甘えはなかった。


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