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怪我するたびに知らない世界に飛ばされる俺、「あれっ?またどっか行くんか!?」歴史の戦略で現代世界を最強にしてしまう。  作者: じゃれにぁ
第三章 ー自分の足で立つという事ー

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第四十三話 ―若者への投資ー

秋になった。まだ暑さが残る10月25日


世間では、100年に一度の金融危機とも言われる、9月15日アーマンブラザーズの倒産から端を発した経済の混乱がこの海鷲にも波及していた。

上里建設も例外ではなく、公共事業の受注以外は皆無に等しかった。


その日康一は出勤し、考え事をしながら朝一の準備をしていた。

(前から気になっとんたんやけど、『社長』と呼ばれる人や頂点に立つ人の色はみんな黒やな。それでも黒にも色々あって、うまくいっとる人の黒とそうじゃない人の黒は、濃さといい、深みといい、大きさも全然違うげな。)


そうしていると鎌田さんに怒鳴られた。

「こっらぁ康一、仕事をする上で一番大事な事は準備やって、いっつも言うとるやないかれ。わかっとんかこらぁ。段取り8分って言うやろ。段取りで仕事の出来が8割決まるって言う意味や」

康一は目を丸くして「すみません。間違えてました。段取りは8割ぐらい集中すればええと思っていました。」

「アホか、こらぁ。はぁ…お前には敵わんにゃ……朝から社長がお前の事呼んどった。早よ行ってこい!」


事務所に行くと社長は笑顔で分厚い一通の封筒を康一に渡した。

「康一、これで今日から仕事終わりに自動車教習所に通うんやじょ。申し込みは済ませてあるでな」

中身を確認すると現金30万円。康一は戸惑いながらも

「これってぇ、前借マエガリですか?」と聞くと


社長は「あほなこと言うなよ、これはお前への投資や。いつまでも助手席ではあかんやろ。12月で18歳になるんやろ、ちょっとどんくさいお前でも今からやったらおっそうない。ちょうどええはずじゃれ」


すると横で鎌田さんが笑いながら「それでよう取らなんだら、給与から天引きな」事務所が笑いに包まれる。

康一は深く頭を下げて礼を言う「絶対に取ってきます。ありがとうございます」


(と言うたはええけど、すごい景気悪いって言うのにええんかいな)と気持ちは複雑だった。

それでも気持ちを切り替えその日から土日も含め教習所に通い、仮免、卒験と無事終わることが出来た。


そして年が明けて1月15日海鷲駅で朝5:46の始発の鈍行(普通列車)に乗り三重県運転免許センターに向かう。

「何でもかんでも、津にあるよな。でっかい建物もあるし」と康一は列車に揺られながら、考えていた。


津駅でバスの乗り場を探していると、ばったりと悟に出くわす。

「おー悟。どしたんどれ、制服着てないやんかぁ。休みか?」

「よー康一。又一回りでっかなったんちゃあうか。今から京都いくんさ。センター試験明日からやでな」

「そっかー。京帝大目指すんやったな、俺は今から免許取りに行くんさ」

「そっかそっか、じゃお互い頑張ろらい」とグータッチした。


(明日からか。みんな、頑張っとるんやろな。)

悟を見送り、免許センター行のバスに乗り、現地に到着した。

「なんだかんだで3時間以上かかるな」と口にした。

その後、何とか無事合格し免許証をもらい、海鷲駅についたのは、17:00過ぎだった。


自転車に乗って上里建設に行き社長に報告する。

「そうか、ようやったな。そしたら明日から投資の回収やにゃ」って笑って祝ってくれた。

それから社長は急な真面目な顔になり

「でもな康一。これからはハンドルを持つその両手にはおっきな責任が乗ってくるんやじょ。絶対に忘れんなよ」

どこか優しくもあり、厳しい目線で念を押すように一言付け足した。


鎌田さんに後から聞いた話では、社長は従業員の各種資格取得には必ず会社がその費用を負担し取りに行かせてくれる。それは、若者が将来自立したり、万が一この会社が倒産するようなことがあったとしても、困らないようにと社長の親心なのだそうだ。

それを聞いて康一は『一生頭上らんな』と改めて尊敬する事となる。


そして家族にも報告。美里はまだ帰って来てなかったが、哲春や美咲に免許証を見せる。

「兄ちゃん、まあ一人で車に乗れるん?ええなぁ」と哲春。

「兄ちゃん、これ髪型変やな」と美咲が突っ込む。

「えー、そこかーい」と笑いが家を包み込む。


「うん、これは社長が俺に投資してくれてもらえたものなんさ。しっかり返さんとな」と康一は明日からの仕事に向けて気合を入れ直した。

窓際で傷だらけの両拳を見ながら、『おっきな責任か』とつぶやいた。


康一の家を照らすオリオン座が凛としていつもより輝いていた。




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