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怪我するたびに知らない世界に飛ばされる俺、「あれっ?またどっか行くんか!?」歴史の戦略で現代世界を最強にしてしまう。  作者: じゃれにぁ
第三章 ー自分の足で立つという事ー

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第三十八話 ー新たな一歩ー

康一が上里建設の門を叩いてから、一年が過ぎた。

現場の土にまみれ、冬の寒風にも夏の酷暑にも耐え抜いた康一の体は、一回りも二回りも逞しくなっていた。


そしてこの春、佐藤家に大きな喜びが舞い込む。弟の哲春が、地元の県立海鷲高校にトップの成績で合格したのだ。

入学式を数日後に控えた夜。佐藤家の食卓には、里美が腕を振るった尾鷲の海の幸が並んでいた。

「哲春、聞いたぞ。新入生代表の挨拶やるんやって? 大したもんやな

康一が麦茶を喉に流し込みながら言うと、哲春は少し照れくさそうに、けれど誇らしげに頷いた。

「まあな。でも、勉強だけじゃなくて、高校ではもっと新しいことやりたいんや」

「新しいこと? 道具作りか?」

「それもそうやけど……もっとこう、仕組みそのものを作るっていうか」


そんな会話の最中、康一が「あ、そうや」と立ち上がり、奥の部屋から少し大きめの段ボール箱を抱えてきた。

「はい、これ。合格祝いや」

「え、何これ、重い……。……えっ! パソコンやん! 兄ちゃん、これ、嘘やろ!?」

段ボールを開けた哲春の目が、こぼれ落ちそうになる。


佐藤家にはテレビもエアコンもない。最新の家電とは無縁の生活だったが、そこにあるのは間違いなく、最新のノートパソコンだった。

「そんなに高いもんやないけどな。中古の出物を鎌田さんに教えてもらったんや。仕事で使うやつやから、丈夫やぞ」


「兄ちゃん……ありがとう。これ、欲しかったんや……!」

哲春の手が、震えながらキーボードをなぞる。


「康一、あんた……いつの間にこんなお金……」

美里が驚いて口を覆うと、康一は笑って首を振った。

「去年のボーナスと、残業代をコツコツ貯めたんさ。哲春が『ものづくり』を続けるなら、これからはデジタルも必要やり。俺が現場で図面引くのを見てても思たんさ。これからはシステムが大事になるって」


すると、美里がニコッと笑って一枚の書類をテーブルに置いた。

「お母さんもね、準備してたの。明日、工事の人が来るわよ。無線LANを引く手続き、済ませておいたから」


哲春が「ええっ、母ちゃんまで!」

康一が「母ちゃん知っとんたんやん」

美咲が手を叩いて喜ぶ。


「哲春の成績が一位なら、お母さんも奮発しなきゃね。そのパソコンで、世界中の知恵を吸収しなさい」


哲春は、画面に映る青い光をじっと見つめていた。

「兄ちゃん。俺、決めたわ。俺、これからは『システムエンジニア』を目指す。物理的な道具を作るのも面白いけど、その裏側で動く仕組みを作れたら、この町をもっと便利にできる。……兄ちゃんが現場で汗流して作ってくれた道や建物を、俺の作るシステムで繋ぎたいんや」


「システム……エンジニアか。難しいことはわからんけど、格好ええな」

康一は哲春の肩を力強く叩いた。

「俺は下から支える。お前は上から繋げ。そうすれば、佐藤家は無敵やな」


テレビもエアコンもない、古い家。

けれど、そこには康一が現場で稼いできた「誇り」と、哲春が未来へと踏み出すための「翼」が、確かに存在していた。

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