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怪我するたびに知らない世界に飛ばされる俺、「あれっ?またどっか行くんか!?」歴史の戦略で現代世界を最強にしてしまう。  作者: じゃれにぁ
第三章 ー自分の足で立つという事ー

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第三十二話  ー 康一の決断と母の涙 ー

静伏の決断から2年余りが経った。

5人はそれぞれの居場所でそれぞれの思いを持ちながら格闘していた。

中学3年生になり11月のある日、進路指導が本格化する中で、康一は美里に向かって一枚の書類を差し出した。


そこには、進学ではなく「就職」の文字が記されていた。

「……康一、本気なん?」

美里の手が、わずかに震え白金色の光が揺れていた。

「あんた、勉強だって法規くんに教わってあんなに伸びとったやんか。拓馬くんや悟くんみたいに、高校へ行って、もっと広い世界を見てほしい。おじいちゃんだって、きっとそれを望んでるわ」


美里は、自分の子供達に清貧の暮らしという類い稀な教育方針で『自分で考える力』や、『ゼロから何かを生み出す工夫』『物を大切にする心』等を備えてきたと自負している。

『どこを間違えたのかしら』不安の色が隠せない。

自分が親にしてもらったように、最高学府までは見守りたいと願っていた。


しかし、康一は真っ直ぐに美里の目を見て、一歩も引かなかった。

「母ちゃん、ごめん。でも、俺はもう決めたんや。上里建設で働かせてもらう」

「どうして……? 働くのは、大人になってからでえんじゃない」

「違うんさ。俺が今、働かなあかん理由があるんさ」


康一は、居間の隅で宿題をしている哲春と、歌の練習をしている美咲の背中をそっと見つめた。

「哲春は2年になったし、ものづくりが好きやり。あいつの才能を伸ばすには、きっと金がかかる。美咲も、中学校に上がってあの歌声をもっと大事にしてほしし。あの子らの、輝かしい未来をやりたいことを諦めてほしくないんさ。……俺が今からしっかり稼いで、家を支える。そうすれば、あいつらは自分の好きな、自由な道を選べるやろ?」


美里は言葉を失った。

康一は、自分の「青春」や「自由」を犠牲にしようとしているのではないのは分かった。

康一がよく言っている「礎」を築くということを、自分の家族という一番小さな、けれど一番大切な場所で実践しようとしている。


「……康一。あんた、いつの間にそんなに大人になったんや」

美里の目から、堰を切ったように涙が溢れました。

「情けないね、お母さんがしっかりしてないから……」


「そんなことない。母ちゃんがこれまで俺らを育ててくれたもんで、今の俺がおるんやで。今度は、俺の番なんさ。……俺がそうしたいと決めたことやから、応援してほしい」


「……康一。あんた、高校に行かんで本当に後悔せんの?」

美里の問いかけに、康一は静かに、けれど確信に満ちた声で答えた。


「後悔なんてせえへんよ。楽しみでいっぱいやで、母ちゃん。俺にとってはな、『働くのやって勉強』なんさ」

美里がハッとして康一の顔を見上げました。


「学校で机に座っとるだけが勉強ちゃぁうんやで。仕事ってさ、しっかり準備して、現場でコンクリートの打ち方覚えて、重機の動かし方見て、どうすれば頑丈な道ができるんか考える……。あの阪神淡路大震災の時にこの海鷲から真っ先に現場に応援に掛けて付けたのが上里建設やったって聞いたんさ。そんな人たちと一緒に仕事ができる。それも全部、生きていくための大事な勉強なんやで。俺は現場で、この町ができた仕組みを直接学び、強い街を作りたいんさ」



忘れようとも忘れることが出来ない。康一は5歳になった翌年に起きた大震災の時、柱に何度も頭をぶつけてわざと気を失った。


”闇に包まれたイザナギ”に会うことが出来たが。

「イザナギのおじちゃん、あんた神さんなんやろ。なんで.....あんなことしたん?いっぱい人が死んだやんか,,,,,」口惜しさと憤りで康一の言葉が震える。

「すまない,,,,康一、俺たちはこの地球という星の地殻には干渉できない。だからだ、だからこそ強い国を作って欲しい。」イザナミの言葉に口を震わせて「なんか方法あったんちゃあうんか。なあ、なあ,,,,,,っうぅぅ,,,,,,」とひとしきり泣いた。



また康一の脳裏には、新聞配達で見た町の不便さや、家康が語った「国の礎」の形が朧げながらも浮かんでいた。

「それに、俺がこうして先に現場で学んで稼げば、哲春や美咲はもっと別の勉強ができる。そうやって、みんなが違うことを学んで持ち寄れば、この家も、この町も、もっとようなる(良くなる)と思うんさ」


『働くのやって勉強』


その言葉は、単に家計を助けるための言い訳ではなく、康一が「一生学び続ける」という覚悟を決めた証だった。

美里は、もう何も言わなかった。

目の前にいるのは、守られるだけの子供ではなく、すでに自分の足で人生の「現場」に立とうとしている一人の男だったのだ。


「……わかった。あんたがそこまで考えとるんやったら、母ちゃん、何も言わん。その代わり、現場の勉強も、一生懸命やらなあかんで」

「おう。当たり前じゃい!」

康一は力強く頷きました。

康一の光沢のある黄金色が、美里を包み込むように温かく、力強く輝いた。


数日後、「康一が自分で決めた道です。よろしくお願いします」と、美里は力強い筆跡で同意書に署名をした。

美里は康一が頼もしく思えて誇らしい反面、自分の手からこぼれ落ちていくような寂しい複雑な気持ちになった。


ふと見上げた空が、今にも泣きそうな重たい雲で満ちていた。


第三章始まります。

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