表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怪我するたびに知らない世界に飛ばされる俺、「あれっ?またどっか行くんか!?」歴史の戦略で現代世界を最強にしてしまう。  作者: じゃれにぁ
第二章  未来の英雄達との出会い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/50

第三十話 ー嵐の市役所と5人の沈黙ー

SNSの喧騒から距離を置き、5人が「静伏」を決めたその裏で、海鷲市役所は開庁以来の大パニックに陥っていました。

▪️嵐の市役所と、5人の「沈黙」

市役所の電話は鳴り止まず、交換台はパンク寸前でした。

「はい、海鷲市役所です!……いえ、トレジャーハントは市の主催ではなく……はい、中学生の自主的な活動で……」


全国の自治体からは「地域活性化の成功事例として視察したい」という問い合わせが殺到し、玄関には大手新聞社やテレビ局のクルーが陣取っています。たった5人の中学生が起こした地殻変動が、海鷲という小さな町を、今や日本中の「注目の的」へと変えてしまっていたのだ。


そんな熱狂の渦中、市長公室に5人が呼び出された。

重厚な革張りのソファに座る康一、法規、悟、順、拓馬。

目の前には、眉間に深い皺を刻んだ加藤市長が、身を乗り出すようにして座っていた。

「……君たち、これだけの反響をどう考えている?」


加藤市長の声は震えていました。それは怒りではなく、千載一遇のチャンスを逃したくないという、政治家としての焦燥に近い興奮でした。

「市はこの『トレジャーハント』を公式事業として格上げしたいと考えている。予算もつけよう。君たちにはアドバイザーとして、これからもこのムーブメントの象徴でいてほしい。……どうかね? 次の展開を一緒に考えようじゃないか」


並んでいた秘書や職員たちが、期待の眼差しで5人を見つめる。しかし、康一は視線を逸らさず、静かに、けれど揺るぎない声で答えた。

「加藤市長。ありがとうございます。でも、俺ら……もう、何もしないことに決めたんです」


「……な、何だと?」市長が絶句しました。

「俺らがやりたかったのは、行政の事業にすることやないんです」

康一は、自分たちを包む「それぞれの色の光」が、外からの期待という不純物に侵されないよう、言葉を丁寧に選びました。


「この町が面白いってことを、自分たちの足で確かめたかっただけなんです。これ以上騒ぎを大きくしたら、町が壊れてまう気がする。……すいませんけど、俺らは今日で『引退』します」

「もったいない! これがどれだけの経済効果を生むと思っているんだ!」


市長の引き止めに、今度は法規が冷静に付け加えた。

「市長。ブームというものは消費される宿命にあります。我々の活動が『消費』の対象になった瞬間、海鷲の真の価値は損なわれる。……我々は、この町をこれ以上『見世物』にするつもりはありません」


悟も、順も、拓馬も、静かに頷いた。

潮が引くように

「君たちの決意は、本気なのか……?」

市長の問いに、5人は立ち上がり、揃って深く一礼した。

「はい。本気です」

公室を出て、市役所の長い廊下を歩く5人の背中を、職員たちが呆然と見送っていた。

玄関の外では、なおも大勢の記者たちが待ち構え、中には「中学生のリーダーは誰だ!」と声を荒らげてる者もいる。

康一たちは、そんなカメラの放列を、まるでただの通りすがりの生徒のようにすり抜けていった。

誰一人として、振り返る者はいなかった。

表舞台から消えることで、自分たちが生み出した「熱」を、本当の意味で町のものにする。

それは、中学生という未熟な肩書きを脱ぎ捨て、一人の「海鷲の住人」として生きることを選んだ、彼らなりの究極の誠実さだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ