第二十七話 ー海鷲 夏の終わり、幕開け
8月の第一日曜日。
昨夜の大花火の火薬の匂いが潮風に混じる、輝くような朝が来た。
哲春の「覇者の証」
「兄ちゃん、これ持っていけ。完成したぞ!」
そう言って、弟の哲春が誇らしげに差し出したのは、数日間、作業場にこもって作り上げた特製のメダルと楯だった。
康一の新聞配達について回って拾い集めた、美しい造形の流木や、波に磨かれたシーグラスをあしらったそれは、どこか神秘的な輝きを放っている。
「すごっ……。これ、ほんまにお前が作ったんか?」
「当たり前やん。海鷲の宝物で作ったんや。優勝した奴は、これを一生大事にせなあかんぞ」
哲春のまっすぐな瞳に、康一は「おう、最高やな」と力強く頷いた。
順、美奈江、美咲の「女子軍団」
広場では、順が指揮を執る女子チームが、受付と休憩所の準備をテキパキと進めていた。
「康一、あんたは現場を回ってきなさい! 美奈江さんと美咲、それに私がここは完璧に回しとくから!」
美奈江と美咲も、お揃いの手作りバンダナを巻いて笑っています。美奈江と美咲の描いたポスターは、町中の掲示板で一際目を引いていた。
午前10時。
法規が考え、悟が作った海鷲の歴史と地理を巧みに織り交ぜた「地図」と「暗号」が全員に配られた。
「……これより、第一回『海鷲トレジャーハント』を開始する! 諸君、自らの足でこの町の真実を解き明かしたまえ。スタート!」
法規の合図とともに、参加者たちが一斉に町へ飛び出していった。
「行け行けー!」
美咲が旗を振り、哲春が声を張り上げる。
康一は、じいちゃんの自転車に跨り、拓馬とともに参加者の安全を確認するためにペダルを漕ぎ出した。
坂道を駆け上がる子供たち。
暗号を読み解き、古い祠の彫刻をまじまじと見つめる大人たち。
「こんなところに、こんなええ景色があったんやなぁ」という驚きの声が、あちこちから聞こえてくる。
康一の目には、町全体が生き生きとした色を取り戻していくのが見える。
家康が言った「ばらけさせる」という教えが、今、参加者一人ひとりの足跡となって、海鷲の地図に新しい光の線を引いている。
(見ててくれ、じいちゃん。日吉、家康さん。俺らの『世界の中心』、今からみんなに見せたるわ!)
海鷲の夏の空は終わりを告げるように高く青く、アブラゼミの鳴き声とともにみなぎる陽射しを照りつけていた。




