第二十六話 ー海鷲の夏。少年達の企てー
8月の第一日曜日、海鷲が最も熱くなる「花火大会」の翌日に、その祭りの熱量をそのまま引き継ぐ形で『海鷲トレジャーハント』の開催が決まった。
日付が決まってからの海鷲の町は、まるで一つの大きな生き物のように動き出した。
当初は「子供の遊び」と見ていた大人たちも、康一が新聞配達のついでに熱心に語る姿や、5人の真剣な顔つきを見るうちに、一人、また一人と腕をまくり始めたのだった。
「康一、いならぁおもっしよいこと思いついたな。わしも一肌脱いだるわ!」
そう言って声を上げてくれたのは、あの大杉だった。
「哲春連れてこい、あいつは器用なええ面持っとるでな、わしが海鷲の流木と貝殻、それに古い大漁旗を組み合わせて、世界に一つしかない『覇者の盾』を作らしたる。」
大杉の職人気質に火がつき、作業場からは夜遅くまでトンカチとノミの音が響くようになった。
一方、順の行動力も爆発していた。
「あんたら男所帯じゃ、華がないんさな!」と、近所のお姉さん的存在、美奈江に相談を持ちかけ、妹の美咲を半ば強引に巻き込んだ。
「女子チームは『おもてなし』担当ね。チェックポイントで出す冷やし飴の準備と、SNS(まだ走りですが、口コミの力)での宣伝! 美奈ちゃん、ポスターのデザイン手伝って!」
美奈江も苦笑を浮かべつつ「順ちゃんの頼みならいいよ」と言い、美咲と一緒にノリノリで可愛い案内状を作り始めた。
準備の真っ最中、悟の家の前で地図を広げていた5人の前を、悟の父が通りかかった。
「悟、目立つな、人前に出るなとあれほど、伝えたつもりだったんだが」
悟が「いつまでも子供じゃなんだ、自分で町のことを考えて行動しているんだ。」と反論すると、悟の父は滅多に見せない険しい顔で鼻で言い捨てた。
「いいか。俺の顔に泥を塗るんじゃない、家のお立場をわきまえろ」
すると康一はとびきりの笑顔で応えた。
「おじちゃん、見とってよ。ここが『成功』の場所になるんやから」
悟の父は、顔を真っ赤にしてなにも言わずに通り過ぎていった。
悟は救われたような気持ちになり、「まぁ康一やからな」と笑い出し5人の空気が明るく弾けた。




