第二十五話 ー海鷲おもっしょいことしょうらい(面白い事をしようぜ)計画ー
もうすぐ夏休みになるという市役所からの通達から数日の日曜日の夕方
康一達は、懲りもせず海鷲のいい面・問題のある面に向き合っていた。
「俺さ、市役所の人とか大人の人らぁと、モメとうはないんさ。あの人らぁも海鷲におってくれとるやんか。それとなぁ、問題点ばっかり見とったら、なんか町が暗く見えてくるやん?」
康一は、5人で書き込んだ付箋だらけの地図を眺めながら続けて言った。
「若い人らぁが出ていくんは、ここが『不便で何もない場所』やと思っとるからやんか。でも、俺らは知っとるやん。ここには、都会の新聞に載ってないおもっしょいもんがいっぱいある。それを、みんなが忘れる前に……心に刻めるような『遊び』を考えよらい」
康一の言葉に、皆の瞳に光が宿る。
みんなが楽しめる面白い事について、ああでもないこうでもないと考えはじめ、なかなかいい案が出ない中
順がパッと顔を輝かせて大声で言った。
「わたし”おもっしょいこと”思いついた。『海鷲トレジャーハント』はどう? 宝探し!」
「宝探し?」と拓馬が聞き返す。
「そう! 康一が言った『ばらけとるいい所』をチェックポイントにするんさ。例えば、あの崖の上の絶景ポイントとか、おばあちゃんが焼いとる秘密の美味しい団子屋さんとか。そこを謎解きしながら巡るツアーにするんさ。ただ歩くだけじゃのうて、ゲームにしたら絶対おもっしょいって」
順の突拍子もない、けれど夢のある提案に、他の4人もすぐに乗り出した。
役割はこうだ。
順(企画担当)
「参加者はチーム戦にして、最後に一番お宝(海鷲の特産品)を集めたチームが優勝ってことで!個人での参加も出来るようにせんとあかんなぁ。おじちゃんやおばちゃん版も作った方がええよな。ゴールはどこにしょうかなゴールには椅子を並べてみんなで感想言いあい今度はこうしたほうが”おもっしょいで”とかまさに”おもっしょい会議”エンディングはどうしょっかな…..ポスターは?….う〜ん。誰かに相談したいなぁ!」
法規(シナリオ・謎解き担当)
「ふむ……ただのスタンプラリーでは知的好奇心が満たされない。海鷲の歴史や地学的な特徴を織り交ぜた『暗号』を作成しよう。解けた瞬間に、その場所の価値がわかるような仕組みだ。」
悟(デザイン・マッピング担当)
「僕は、みんなが持ち歩きたくなるような、おしゃれな『トレジャーマップ』を描くよ。学校の美術室の機材、貸してもらえるかな」
拓馬(コース・安全担当)
「自転車で回るなら、ブレーキが効きにくい急坂は避けたほうがええな。俺が実際に走って、安全で最高に気持ちええルートを引いてやる!」
康一(プロデューサー・現場監督という名の使いっ走り)
「これってお金かからんようにせえなあかん。絶対にな。それはさ、また来年も再来年もできるようにせえな、忘れられるやん。俺は、配達のついでに町の人らに『今度こんなことやるで!』って触れ回ってくるわ。協力してくれる『お宝スポット』を増やさなあかんしな。そうやって考えると昔からどこにでもある祭りってもともとこうやって生まれてきたんと違うやろかなぁ。」
動き出す「世界の中心」
「これ、成功したら……」
悟が少し遠くを見るような目で言う。
「都会へ行ってしまう人らぁも、『海鷲ってあんなに面白いことやっとったなぁ』って、たまに思い出してくれるんかいなぁ」
康一は力強くうなずく。
「そうなってくれたらええよなぁ。出ていくのうを止められんでも、帰ってきぃたい場所やと思わせたら勝負は勝ちとまでいかんけど負けっぱなしでじゃなくてちょい負けぐらいまで持って行けるんちゃあうん。ここにおる人らぁにとっては、ここが世界の中心なんやから!」
康一の「光沢のある黄金色」が、順の桃色、悟の翠、拓馬の赤茶色、法規の漆黒と混ざり合い、夕暮れの海鷲を鮮やかに彩り始めた。
かつて日吉丸が「何でも食べてみる、誰とでも話してみる」と言ったように。
かつて家康が「寂れた場所にこそ光を」と願ったように。
この日の5人の少年少女は、夕日を背に海を眺めながら、自分たちの手で町に新しい「命」を吹き込もうとしていた。




