城の中で
「ラズレック、本当に行くの? 殺されるよ。分かるでしょ。騎士団が全力で止めに来るんだよ」
「殺されはしない。お前たち人間は数百年すら生きられないのに戦争をする。……大事に生きなければならない」
そう言いながら、ラズレックはずんずんと城へ続く階段を上がっていった。
(まずい、まずいよ。
ラズレックの情報は、記録宝石レベルじゃない。殺されては困る)
アヤは何度も、ラズレックを城から遠ざけようとして手を引いた。
だが、ラズレックはびくともしない。
やがて二人は、城内へ通じる巨大な扉の前に立った。
当然のように門番が左右にいる。
豪華な装備に飾り。大きな装飾を施した槍を手にしていた。
「私は巨岩族のラズレックという。城主に会いたいのだが」
槍兵たちは、ラズレックの巨体に目を見張った。
彼らも大柄な男だが、ラズレックはさらに頭ひとつ大きい。
槍兵は扉の前で槍を交差させ、進入を拒んだ。
「本日、来城の予定はない。帰られよ」
その言葉を聞き、アヤはすかさず言った。
「ラズレック、入れないって。帰ろう」
アヤが引っ張っても、ラズレックはやはり動かない。
「では、来客がないのなら話す時間はあるな」
ラズレックは巨大な扉へ手をかけた。
槍兵が即座に叫ぶ。
「無礼者め!」
槍がラズレックの足へ突き刺さる――はずだった。
だが槍は刺さらず、金属が弾かれる音だけが響いた。
ラズレックは何事もなかったかのように扉を押し開けた。
扉の中は高い天井に、自治領の紋章旗が揺れていた。
中には、すでに人が集まっていた。
剣を抜いた騎士もいる。
それでもラズレックは、まるで視界に入っていないかのように進む。
「城主に会いたいのだ。迷惑はかけない」
「かけてる、かけてるよ! ラズレック!
もう逃げよう! 私たち、すでに城内侵入で賞金首だよ!」
ラズレックの身体に剣が振り下ろされ、槍が突き立てられる。
だがすべて弾かれ、キンキンと鉄の音だけが鳴り響く。
アヤは攻撃されてはいない。
だがラズレックが目立ちすぎるため、声が届く程度に距離を取りながらついていった。
「ヤバい……ヤバい……こんなことになるなんて……」
「そう言いながら、ついてきているではないか」
「あー……ラズレック。
私が探索者である限り、君から離れられるわけがない」
そのとき、階段の上に銃を持った者たちが数名現れた。
アヤの方が先に気づいた。
「ラズレック! 銃だ!」
「アヤ。弾は何でできている銃だ」
「弾? 鉄か鉛だよ!」
「ならば、私には砂粒と変わらん。アヤは私の影に隠れろ」
一斉に――ダンッ! と轟音が城内に響いた。
銃弾はすべてラズレックに命中し、
だが次の瞬間、弾は岩の身体に吸い込まれるように消えていった。
同化していたのだ。
ラズレックは進路を変え、一気に銃兵へ向かう。
銃兵は弾を撃ち尽くすまで撃った。
効果はなかった。
「仲間が私を止めようとしている最中に撃つとは何事か。
仲間が死んでしまうではないか」
銃兵は二発目を撃とうとしたが、効果がないと悟ったのか、剣を抜いて立ち向かってきた。
ラズレックはそれらを無視し、銃をむしり取っていく。
騎士たちはラズレックにしがみつく。
背によじ登る者、足に絡みつき引きずられる者――
鎧を着た兵たちが、まるで駄々をこねる子どものようだった。
「アヤ、城主はどこだ」
「知らないよ!
仲間を撃ってでも止めたいってことは、城主は銃兵が出てきた方じゃない?」
「なるほど」
ラズレックは、しがみつく騎士たちを引きずりながら、それでも城主を探す歩みを止めない。
アヤはその背を追いながら、頭を抱えた。
髪をくしゃくしゃにし、これから先を考えるだけで胃が痛くなった。




