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ジェスタの悲歌

ラズレックは動かず、ヴァルグリムを見ていた。


「突っ込め! 奴は武器を持っていない!

押し倒して圧殺しろ!」


ヴァルグリムが叫ぶ。


兵が一斉にラズレックへと手を伸ばした。


その瞬間。


ラズレックが、すっと手を上げる。


大地が一瞬で盛り上がった。


ラズレックを掴もうとした兵は、逆向きに跳ね上げられる。


盛り上がりは波のように四方へ広がり、兵たちは立つことすらできなかった。


ラズレックが一気に手を下ろす。


――大地が弾けた。


土と泥が舞い上がり、兵たちに降り注ぐ。


兵たちが泥を払うと、鎧の一部まで一緒に崩れ落ちた。


あちこちで叫び声が上がる。


土や泥が、剣や銃、兜や鎧を腐食させ、ぼろぼろにしていく。


ラズレックが再び手を上げる。


また、大地の波が生まれる。


下ろす。


弾ける。


兵たちは逃げ惑う。


ヴァルグリムが叫ぶ。


「慌てるな! お前たちは腐らぬ!

鉄だけが使い物にならなくなっただけだ!


後方の武器持ちと交代しろ!

土の魔術兵、波を抑えろ!」


武器を失った兵は後退し、まだ無事な兵が前へ出る。


魔術兵が構える。


だが――ラズレックからは魔術の気配がない。


ラズレックが肘をわずかに曲げた。


その直前に、深い谷が現れる。


突進してきた兵は、そのまま落ちていった。


ラズレックは言う。


「ヴァルグリム。お前の負けだ。

私は皇帝に会いに行く」


両手を上げる。


ゆっくりと下ろす。


地面が柔らかくなり、兵たちは沈んでいく。


谷に落ちた者は、首だけが地上に残る。


他の者も、肩まで埋まり、やがて首だけになった。


何百もの生首が並ぶかのような光景。


埋まった者たちの恐怖が、波のように広がる。


ヴァルグリムは恐怖を浮かべながらも問う。


「……どうするつもりだ」


「数人は埋めていない。

いずれ助けられるだろう。


だが、私とジェスタは進ませてもらう」


ラズレックが人差し指を上げる。


ジェスタが大地から現れた。


「なに、この光景。

あんた、殺したの?」


「全員生きている。

私は死が好かぬ」


ジェスタは埋まった兵たちを見る。


「この光景を互いに見て、発狂する者が出るわね。

かわいそうだから、眠らせてあげるわ」


ジェスタが歌い出した。


歌声が広がる。


兵たちの目が閉じていく。


ラズレックとジェスタは、商団を追って歩き出した。

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