ラズレックの充足
ヴァルグリムの後ろから三人の騎士が馬を降り、すっと前に出た。
ジェスタはラズレックから距離を取る。
三人はラズレックを囲むように近づいた。
ラズレックは構えない。
騎士の一人が剣を抜き、間合いも測らず突きを放つ。
――カンッ
金属音が響いた。
ラズレックは避けず、ただ弾いた。
三人は一瞬で理解した。
剣は効かない。
騎士たちはヴァルグリムへ合図を送る。
ヴァルグリムが手を上げると、三人はすぐに退いた。
そして、振り下ろす。
――バーンッ
銃声が響いた。
ラズレックの頭がわずかに横へ揺れる。
弾は砕け、地面に落ちた。
再び手が上がる。
――別の角度から銃声。
額に命中。
だが、首がわずかに反るだけで、弾は弾かれた。
周囲の兵からどよめきが上がる。
ヴァルグリムはジェスタを見る。
「この者……巨岩族ではありませんな」
「では、何だと思う」
「あなたが作り出した魔術の存在」
ジェスタは鼻で笑った。
「お前は小さいな」
そして問う。
「で、どうするんだい」
ヴァルグリムは静かに言った。
「あなたを殺せば、この者は止まる」
「結局そこか。どちらにせよ、わしが邪魔か」
「あなたがいたから今の帝国がある。
だが、これからの帝国には不要だ」
「皇帝の権威が揺らぐからか」
「その通りです」
ヴァルグリムが再び手を上げる。
だが――
その腕は途中で止まった。
ラズレックが掴んでいた。
いつ近づいたのか、誰にも分からなかった。
ラズレックは言う。
「お前たちの争いに興味はない。
私は皇帝に会う」
そして、静かに続けた。
「障害が、お前なのだろう」
ジェスタに目を向ける。
「ジェスタ。しばらく黙っていてもらおう。」
ジェスタの足元が沈む。
笑みを浮かべたまま、地面へと埋まっていった。
ヴァルグリムは動けない。
命令が出せない。
ラズレックが言う。
「私はラズレック。
戦争を止めるために皇帝に会う者だ
私を倒せば、ジェスタは二度と地上に戻らぬ」
一歩前へ出る。
「さあ、私を倒してみよ」
「私は遠慮せぬ」
ラズレックはヴァルグリムの腕を掴み、
三人の騎士へと投げた。
ヴァルグリムはすぐに立ち上がる。
「この者は魔女の産物だ!
全身が岩だ、剣も銃も通じん!」
命令が飛ぶ。
「魔術兵!火と水で拘束しろ!魔女と対応は同じだ!
何もさせるな!雷撃の衝撃で叩き潰せ!」
手が振り下ろされる。
水がラズレックの足に絡みつく。
炎がその周囲を包む。
そして――
四方から雷が落ちた。
――轟音。
アヤは振り返った。
草原が一瞬、昼のように明るくなる。
カティアが後ろを振り返った。
「雷。なんで雨も降ってないのに」カティアが不安げに言う。
アヤは低く言った。
「おそらく、雷撃を使ったのだろう。
しかも、この大きさの音、複数の雷撃を」
「ふたりは無事でしょうか」
アヤが 「ラズレックに、『雷撃』は最悪だ・・・」
というと カティアがアヤを心配そうに見上げる。
「ラズレックの相手が最悪なのよ」
雷撃のすさまじい光と音の中の後、
その中心に立っていたのは――
白く輝くラズレックだった。
全身が神々しく光っている。
瞳は緑に発光していた。
「これほどのエネルギーは久しぶりだ」
静かに言う。
「礼を言おう」




