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貴族アルディオン

商団は首都へ向けて出発した。


何事もなく、二日目も過ぎた。


明日には首都に着く――

そう話していた時だった。


完全武装の大隊が現れ、商団を止めた。


五百人はいるであろう大隊だった。


「この商団にヴェルミナ様はいらっしゃるか」


商団の者たちは顔を見合わせた。


ジェスタが、やむを得ないといった様子で手を挙げる。


「わしよ」


兵たちが一斉に視線を向けた。


「……違うな。もっと歳を経た方のはずだ」


ジェスタは鼻で笑った。


「失礼な。お前たちが探している『ドミトリアン・ノーディア』を幼い頃から知っている者よ」


その言葉に、空気が一瞬で張り詰めた。


ジェスタは続ける。


「わし以外は先に行かせた方がいいのではないか?」


豪華な鎧をまとった男が前に出る。

白髪交じりだが、隙のない体つきだった。


「……よかろう。他の者は通せ」


商団はそのまま進んでいった。


だが――

ラズレックだけが、その場に残っていた。


アヤはカティアの手を引き、無理やり商団とともに進んだ。


男は名乗る。


「私はこの国の貴族、ヴァルグリム・アルディオン」


ジェスタは笑った。


「久しぶりね、ヴァルグリム。ずいぶん歳をとったじゃないか」


アルディオンは目を細める。


「私の知るヴェルミナ様は、もっと年嵩の方でしたな。

 あなたは……若すぎる」


ジェスタは肩をすくめた。


「お前たちが私を棟に閉じ込めたからさ。体を子どもにして、体力を温存するすべを見つけた。そしたら、実際の年齢よりだいぶ若返ってしまったわ。」


アルディオンは苦笑する。


「相変わらず、冗談か本気か分からぬことを言われる。

 だが、その物言い――確かにヴェルミナ様かもしれぬ」


そして、ラズレックを見る。


「本物か偽物かは問わぬ。

 いずれにせよ――ここで引き返していただく。国の外まで。

 さもなくば、ここで死んでもらう」


ラズレックにも視線を向けた。


「お前も同じだ」


ジェスタは口元を歪める。


「引き返すわけなかろう。

 わしも、この巨岩族も、ドミトリアンに用がある」


アルディオンはラズレックに問う。


「お前は何のために皇帝に会う」


ラズレックは迷いなく答えた。


「戦争を止めろと言いに行く」


アルディオンは笑った。


「なるほど。死ぬ理由には十分だな」


ジェスタが言う。


「できるのか? お前に」


アルディオンは静かに告げた。


「すでに我が大隊の包囲は完成している。

 周囲には帝国魔術師も配置されている。

 『死の歌』を歌う前に、お前は撃たれる。」


ジェスタは眉をひそめる。


「失礼な。眠りの魔術だ。死の歌ではない」


「戦場で強制的に眠らされる――

 一方的な惨殺。陰惨な戦い。敵も味方も、震えあがった。

 故に、おぞましい存在になったあなたを殺すことも恐ろしかった。

 呪われそうでね。だから、われらは閉じ込めて自然に死ぬのを待ったのですよ」


ジェスタは肩をすくめた。


「よく言う。

 利用するだけ利用して、不要になれば封じたくせに」


ジェスタは少しだけ空を見上げる。


「……まあ、今はそれなりに楽しくやっておる。

 ここで命を賭けるほどでもないか」


そしてラズレックを見る。


「帰るか?」


ラズレックは首を振った。


「帰らぬ。

 私は戦争を止めねばならぬ。

 人の死が嫌いなのだ」


ジェスタは小さく笑った。


「だそうだ、アルディオン」


一歩前に出る。


「この巨岩族に勝てたら、わしは引き返そう。

 国外追放を受け入れよう。戦闘でも構わぬがね。」


アルディオンが問う。


「この者を倒せばよいのだな」


ジェスタは答える。


「ラズレックは強いぞ。

 この者に勝てるなら、わしなど容易く倒せるほどにな」


そして、周囲を見渡した。

ジェスタは言い放った。

「単騎などと言わぬ。

 この場の全兵でラズレックに挑むがよい」

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