孤児院
孤児院が宿となり、子どもがちょくちょく覗きにくる。
目立つラズレックは部屋に残し、アヤたちは夕食に出た。
ラズレックがぽつんと一人で部屋にいると、ゆっくりとドアが開き、子どもたちが次々と顔を出した。
「なにか用事があるのか」
と聞くと、
「どうして、食事にいかないの?」
とひとりの子が言った。
「食事がいらないからだ」
ラズレックが答えると、
「どうして、食事がいらないの?」
「どうして、その体なの?」
「どうして、お腹がすかないの?」
「お金がないの?」
「水は飲めるの?」
矢継ぎ早に質問が飛んできた。
「聞き取れぬ。何人いるのだ」
「十一人。シスターを入れると十二人」
ラズレックは手招きをして、
「入ってこい」
と言ったが、
「シスターが絶対入っちゃダメだって」
「では、私がそちらへ行こう」
ラズレックは立ち上がり、子どもたちの部屋へ入った。
ベッドが密集している。部屋は清潔だった。この部屋は石壁がむき出しであった。
壁際の小さな棚には、畳まれた着替えが並んでいる。
「狭いな」
と言うと、
「お金のためだって。シスターが……あっ、これ言っちゃダメだった」
ラズレックは、
「すまんな。三日世話になる」
そう言って、子どもたちの頭を撫でた。
「この部屋、寒いんだ。穴が空いてるんだ」
「どこだ」
子どもたちが上を指差す。
ラズレックが右手を伸ばすと、子どもたちの倍以上の高さに達した。
「すげえ、でけえ」
ラズレックは、手に風が流れ込むのを感じた。
「ここに穴があるのは良くないな」
「こんな穴、いくらでもあるぞ」
ラズレックは壁に手を当てる。
(建物が歪んでいる)
「今日はシスターはどうした」
「仕事に行った」
ラズレックは言った。
「今から大きな音がするが、気にするな」
ゴゴッ、と建物が揺れた。
子どもたちは「おおっ」と声を上げる。
何度か揺れた後、
(歪みは取れた)
ラズレックは、穴の場所を子どもたちに聞きながら、一つずつ塞いでいった。
子どもたちとラズレックは、建物の中を回りながら補修を進めた。
一通り終わったころ、アヤたちが帰ってきた。
「差し入れを買ってきた。シスターはいるか」
「仕事にいった」
それなら仕方ない、と子どもたちに渡し、
「シスターの分、ちゃんと残しておくのよ」
とジェスタが言った。
アヤは首をかしげる。
「なんか、部屋の感じが違うのよね。ラズレック、何かした?」
「建物の歪みを取った」
カティアが窓を開ける。
「窓、開けやすくなってる」
ジェスタがラズレックに言う。
「そういうこともできるの。でも建物の歪みって、一時的じゃないでしょ。材料はどこから持ってきたの?」
「ここは、すぐ外にある」
アヤは少し頭を抱えて、
「城壁削ったね」




