城壁都市ガルディナ
商団はドミナスを離れた。
ラズレックたちも食料を購入することができた。
旅に体が慣れてきたのか、ジェスタの愚痴は減り、カティアもエイルーンも疲れを見せなくなってきた。
アヤはそんな様子に安心したのか、歩きながらも商団のあちらこちらに顔を出しては話しかけている。
「次は、貴族が直接治める城壁都市ガルディナらしい。その次が首都フェルグランだ」
とアヤが歩きながら言った。
傭兵たちともすっかり打ち解けている様子だった。
「ガルディナの守護はベルンガルドという貴族らしい。
戦争には積極的ではないようだ。むしろ守りが得意で、攻めは不得手。帝国南方の防衛の要だそうだ。
大きな街だから、ある程度は珍しいものも許容されるだろうが……ラズレックの見た目は目立たぬ方がおかしい。
それに、ミラティス近くの森で中隊を退けた情報が入っていれば厄介だ。
ラズレックは目立たぬよう城壁を抜けて入ってくれ。夜まで隠れていてほしい。
私たちは下手な嘘はつかない。
カティアの護衛の傭兵――女の戦士と魔術師、それに雪豹。目立つが、あり得ない話ではない。
そのまま通す。
商団と共に入れれば、あとは物資を補充して首都へ向かう」
商団は無事、ガルディナに到着した。
ラズレックは、いつの間にか姿を消していた。
先頭から順に城門の検査を受ける。
「お前たち、止まれ」
兵に呼び止められ、アヤは内心やはりなと思う。
「なんでしょう」
「お前たちは何の集まりだ」
「商人ガルド・ヴェスナーの娘カティアを、魔術師の塾へ護衛する傭兵です」
カティアは身分証を差し出した。
「そちらの女も護衛か」
ジェスタを指す。
「はい、魔術師です。傭兵をしております。危険があれば……魔女になることもありますが」
兵は露骨に嫌悪の目を向けた。
「その獣は何だ」
「エルディア峰で懐かれた雪豹です。見世物にもなりますので」
「危険ではないのか」
「猫と変わりません。道化師の獣とは違います」
「……まあいい。通れ。被害が出た場合は責任を負え」
「承知しました」
城壁の内に入ると、人の多さに圧倒された。
見たことのない品も多く、カティアは落ち着かない様子だ。
「三日滞在する。まず宿だ」
アヤが言う。
「ラズレックの合流を考えると個室は避けたい。大部屋が理想だな」
大都市では、商団が入るとすぐに宿の案内人が寄ってくる。
アヤが交渉していると、
「女性でも安心できる大部屋をお探しでしたら、ご案内できます」
一人の女性が声をかけてきた。
「値段は?」
「こちらです」
「安いな」
「中心から外れています。日当たりも悪く、隣の部屋が騒がしい。食事も出ません」
「案内してくれ」
案内された先は街の外れだった。
「ここです」
古びた建物――孤児院と書かれている。
「大部屋はあります。隣は子どもたちの部屋なので騒がしいですが」
中は意外にも清潔で、ベッドも余っていた。
そして何より、城壁に近い。
「あと一人、仲間が来る。それでもこの値段でいいか」
「問題ありません」
「雪豹も入れるか」
「他に客はいませんので」
カティアは嬉しそうだった。
「では三日頼む」
アヤは料金を支払う。
女はほっとした表情を見せた。
「よろしく頼む」
背後から声がした。
女は驚いて振り返る。
「そいつが、巨岩族のラズレックだ。もう一人の仲間さ」




