ちいさな子
「食料の減りが早い」とアヤが言う。
「誰が食べているのかしら?」とジェスタが、アヤに微笑みながら返した。
「ジェスタ、案外よく食べるよな。」
「そうよ。アヤには勝てないけど。」
アヤは「確かに」と頷いた。
「さて、当面は旅をしながら食料を手に入れないとな。」
「お金はあるわよ。歌ってあげるとくれるのよね。」
「私も金はあるんだが、食料がないのだ。」
「深刻だわ。」
ラズレックは食事をしない。
しかし、ラズレックの周りにはいつのまにか人が集まる。
そのラズレックが、突然すくっと立ち上がった。
辺りを見渡すと、獣に囲まれていた。
旅団の者たちは松明に火をつけた。
獣を近寄らせないためだ。
「あぶねえよ!」と声が飛ぶが、ラズレックは意に介さず歩き出す。
木々の中へ姿が消える。
やがて、二、三度「ギャン」という鳴き声が響き、獣たちが走り去っていった。
ラズレックが木々の間から現れたとき、
その腕の中には、一歳にも満たないであろう赤子が抱かれていた。
アヤはぎょっとして言う。
「ラズレック……拾い物にしては、とんでもないものを。」
「獣に襲われ、親は死んでいた。この子は籠の中に入れられていた。」
ジェスタは目を細めた。
「あら、かわいい。ラズレック、この子育てるの?」
ラズレックは顎に手をやり、真剣に考える。
「子育ての経験があるか、アヤ、ジェスタ。」
アヤは即答した。
「さすがにないな。」
ジェスタは肩をすくめる。
「もう少し大きい子なら相手したことあるけど。赤ちゃんはないわ。」
ラズレックは旅団の中に赤子を連れた家族を見つけた。
事情を話し、引き取ってもらえないか頼む。
「今の生活でやっとでね。この旅が終わるまでは面倒を見るけど……」
ラズレックはうなずいた。
「その間に、子育てを教えてほしい。」
アヤは苦笑する。
「本気か、ラズレック。……まあ、本気なんだろうな。」
「私も手伝うよ」と、観念したように言った。
ジェスタは楽しそうに言う。
「じゃあ、『巨岩族の子育て』って歌を作ってあげる。」
「こら、逃げずに手伝え。ジェスタ。」
赤子が元気に泣き出した。
いつのまにか獣の気配は消え、夜は少し明るくなっていた。
その小さな泣き声が、静かな旅路に響いていた。




