大地の声を聞く者
三人はノーディア帝国へ向かって歩いていた。
奇妙な三人組であった。
アヤは新調した革ブーツの具合を確かめながら、先頭に立っている。
「ノーディア帝国への通行許可証はミューレンからもらったけど、ジェスタが賞金首になってて捕まるとかないのよね。」
ジェスタは笑って言う。
「姿が変わってるから大丈夫よ。それより問題はラズレックだわ。国境でラズレックを何者って説明するの?」
アヤが肩をすくめた。
「ラズレックは正面から行くと問題を起こすから、壁から抜けてもらう。むしろ問題は旅の途中だ。ノーディア帝国までは距離があるし、帝国に入ってから首都までも遠い。食べ物の調達とか宿屋とかでラズレックをどう説明するかな。」
「今まではどうしてたの?」とジェスタ。
「よくも悪くもヴァル=ノーデン自治領では、ラズレックはちょっとした有名人でな。さすがにセフィラ街まで来ると、知らないやつの方が多かったけど。」
「何をやらかしたのよ。」
「城主と喧嘩した。」
ジェスタは、それはすごいと笑った。
ラズレックが言う。
「あちらから大きな旅団がやってくるぞ。」
アヤは即座に応じた。
「警戒して。でも、まっとうな旅団なら一緒に行けないか話をしたい。少しでも情報がほしいからね。」
ジェスタが口を挟む。
「もし相手がまっとうな旅団だったら、私たちをどう自己紹介するの? こんな物騒な三人組、向こうが嫌がるわよ。」
アヤは少し考えた。
「ラズレックは巨岩族。私はそれに興味を持った探索者。ジェスタは、珍しい歌の題材として巨岩族についてきている吟遊詩人。あながち嘘でもないでしょ? 魔法以外の歌も歌えるんでしょう?」
「馬鹿にしないで、と言いたいところだけど、閉じ込められていた期間が長くて世に疎いのよ。最近の歌は無理。でも昔の歌ならいくらでも歌ってあげるわ。」
旅団は快く三人を受け入れてくれた。ノーディア帝国へ向かう旅団らしい。
最初は小さな集まりだったが、進むにつれて人が増えてきているという。
「巨岩族ですか。初めて見ましたよ。」
ラズレックも自然に受け入れられ、商団の時と同じように周囲とよく話している。
やはり、ラズレックは人も旅も好きなのだろうとアヤは思った。
ただ一つ、変化があった。
今までと違い、ラズレックはアヤやジェスタの側をあまり離れない。
(ミューレンの件で、自分以外が狙われることを思い知ったのかもな。死なれては困る大切な仲間だと思ってくれたのかもしれない。)
ジェスタがリクエストに応えて歌っている。
《大地の声を聞く者》という歌だそうだ。
彼女は、自分が見たラズレックを、そのまま歌にしていた。
その歌声は魅力的で、「吟遊詩人」を疑う者などいなかった。




